事業の目的
おそらく日本で一番”不親切な”こどもむけアートプログラム、春休みに7日間だけ現れる、大人が入れないこどもだけのまちづくり[Let's make PLAY-WORK TOWN! こどものまちをつくろう]
新型コロナの流行で失われた体験を取り戻すために、7年目となる2023年はアートやモノづくりを通して「こどもが自由に遊ぶ権利」の大切さを多くの人に届けます。
私たちは2015年から年に1回、豊島区南長崎ターナーギャラリーにて「おとな立入禁止!こどものまちをつくろう」を開催しています。
新型コロナの流行により3年のブランクがありますが、今年で7回目の開催となります。
初回の2015年はのべ100人(7日間)の参加者だったが、2019年は924人(10日間)、2022年は745人(7日間)と地域に根付き参加者も増えています。
「こどもの成長は待ってくれない。今この瞬間を大事にしてあげたい。」
そんな思いで3年ぶりに開催した2022年の事業で、コロナになんかメゲずへっちゃらで、相変わらず無謀で元気で、泣いてたと思ったらいつの間にか楽しそうに遊ぶこどもたちの姿を見ることができました。
ここには目まぐるしいスピードで変化する未来をたくましく生きていくために大事な体験がいっぱい詰まっています。
この事業の魅力はズバリ大人社会の縮図をサバイブできること。
働いて給料をもらうだけではなく、失業もするし、まちが経済的に困窮することもあるし、喧嘩や犯罪もありますので、楽しいことばかりではありません。
しかも大人は助けてくれません。そんなこどものまちでは実に面白いドラマが起こります。
1.それでいいのか大工さん?
こどものまちは、ハローワークで仕事を探したり、起業して自分で仕事をつくりお金を稼いで遊ぶ、といった仕組みがあります。
ハローワークの中で一番人気なのが「大工さん」。少ない大工の枠をゲットしようと早くきて開場を待つ子もいるほど。
さて念願の大工さんになった男の子は、「僕は誰のいうことも聞かない。自分のやりたいようにやるんだ」と宣言して椅子を作り始めました。
材料は厚み5.5ミリのベニヤ、そこにビスを打って止めるという荒技にでた結果...
当然座ったら壊れます(笑)
でもここでは彼は自由に作る権利と失敗する権利があるのでこれでOK。でもこれが違う場所だったら「そんな薄いベニヤで作れないよ」と言われたり、正しい作り方を調べようってなって、体で覚えるチャンスを失っちゃいます。それはもったいない!
2.へっぽこ議会
大工さんと逆に、一番人気がないのが「議会」の仕事。大人のまちと違ってハローワークで議員を募集してるくらいなので、議会なんて言葉を聞いたこともなければ何をしていいかわからない子が来ます。
ほとんど機能していないへっぽこ議会では「最終日のイベント企画」「議会ニュース」「税金の使い道を考える」「まちの困りごとを解決」します。
例えば「税金が20%なんて高い!」と声を上げるとルールが変えられるかもしれない。いつか議員になりたい子がきて、ルールを変えてくれるかもしれない。
そんな体験をしてほしくて、役に立たないけど存在しています。
3.利益ってなに?
利益を理解している小学生がどれくらいいるでしょうか。
こどものまちでは工房で作ったものを仕入て利益を乗せデパートで売るはずが、多くのこどもたちが利益をとる理由を理解できなかったので、話を聞いてみたときに返ってきたセリフが
「えっ!儲けるって人のお金をとることだから、悪いことじゃないですか!」
なかなかの衝撃発言ですが、こう思っている子が多いんです。利益の代わりに寄付を募るツワモノも。
4.警察廃止、そして復活?
犯罪が起きない平和なこどものまちでは警察の子は退屈です。
あまりにヒマすぎてつい走っていない子を「走った!」と過剰に取り締まり始めたことに市民が怒った結果、2019年にはとうとう警察がなくなってしまいました。
「考えなく権力を持つと人は暴走する」というところまで社会の縮図。まちの平和を守るはずの警察が一番の問題児になったわけです。
2023年は「武器屋」という仕事ができるので、久しぶりに平和を求めて警察が復活するかもしれません。
5.こどもたちの自由すぎる仕事ぶり
焼きそばを食べながらテキトーな接客をする「焼きそば店長」、ゲーム用の車が動くのか確認しようとしただけなのに、楽しくなってしまった「ゲーム屋」、「雇ってあげるよ」とどんどん人を雇ったあげく、給料を払わずにいなくなる「起業家」など、おとなの目からみるとびっくりするようなことがいっぱい。
そのため周りの子はすごく怒っていたり、給料がもらえず役所に相談して代わりに支給してもらったり、ハチャメチャすぎていろんなドラマが生まれるのです。
でもよく考えて見てみると、実は大人の世界でもこんなことありますよね。
6.お金がお金をうむことに気づいてしまった小学生と、賭け事ではもうからないことを知った小学生。
お仕事体験となると、地道に稼いでお金を貯めることに情熱を燃やす子もいれば、一攫千金を狙う子もいます。
ものを作って売る仕事の場合、1時間働いて10diy(diyは通貨単位)のお給料、税金をひかれると手元に8diyしか残りません。
もっと稼ぎたい!と「起業」する子もいます。
中でも「たからくじ」はこども相手に楽に儲かるため、お金を稼ぎたい子は宝くじ屋で起業します。
一方お客さんはというと、賭け事に慣れていないので「次こそは・・・!」と宝くじを買って、一文無しになる子も。
これもあくまで「遊び」。大人になって失敗するよりもちょっと失敗して「しまった・・・」と後ろめたい気持ちになる失敗の数々は、こどもたちの心にきちんと刻み込まれるでしょう。
こんなはちゃめちゃな遊びと社会課題がどう結びつくのでしょうか。
私たちがこの事業をやる理由は4点あります。
1.「子どもの権利」を守る=「こどもの意見を尊重する」
私たちがこの事業を始めたきっかけは、周囲の大人からの「うるさい」というクレームに対し「大人のいない遊び場が欲しい」という子どもの声を実現させること。つまり「自由に遊ぶ権利」を守ります。
大人立入禁止にした背景にはこんな遊びでさえ「職業選択の自由」をこどもから奪う保護者の存在から自由になるためです。
お茶も飲まずお弁当も食べずに夢中で働く我が子が心配で、なんとかお茶を飲ませようと会場に足を運ぶ保護者の存在から自由になるためです。
失敗をさせまいと先回りしたり自分の知識をひけらかしたりして、失敗する権利を奪う大人たちから自由になるためです。
私たちは大人に強制されず子どもが自分で選ぶことを大切にします。それがたとえこどものまちで「働かない」という選択であってもです。
その結果どうなったのかを振り返って親は子どもを励まし「じゃあ明日は働いてみよう」「やってみたい仕事がないから起業してみよう」とこども自身が思えるようになることが大事だと考えます。
2.学校ではできない体験を
こどものまちにいると銀行でお金を数えるだけの仕事もすごく大事で、誰にでも役割があり生きる権利があることがわかります。学校や塾など既存のコミュニティに入れない子も受け入れる場所になっています。
我が子はコミュニケーションに難があり、周りの子からはウザい存在で学校でいじめられて不登校になったりした時期がありました。その時いじめの良し悪しよりも「小学生のコミュニティの狭さ」に疑問を感じました。たった40人のコミュニティで否定されただけで人生ってダメになるのか?どうしてそんなに絶望するのか?社会に出ればそんなことはないのに、なぜこどもの世界は狭いのか。
でもこどもにとってはそのコミュニティが全てなのです。そこで嫌われたら絶望しかありません。
それって悲しすぎやしませんか?
だから学校以外のできるだけ大きなコミュニティで、利害関係がなく、その子をそのまま受け入れられる場を作りたい。
勉強ができるとかスポーツができるとか以外の良さを、その子の成長に責任のない周りの人が褒めたり、才能を発見して伝えたりしたいと考えています。
3.教育・体験格差の解消
新型コロナウィルスの影響で貧困の格差が進んだと言われています。2022年NPO法人キッズドアの調査によれば、元々困窮状態にある家庭がコロナ禍でさらに収入が減り現在でも収入が減ったままの状態である世帯が50%あるそうです。物価高の影響もあり生活費のやりくりで精一杯でしょう。https://toyokeizai.net/articles/-/613129
せっかくの宿題のない春休みに遊びに行けない子でも参加できるように低価格で開催したいと1日1000円でやってきましたが、それすら払えない家庭もあります。
でもそんな家庭の子にこそ参加してほしいのです。
もしかしたらこどものまちで大金持ちになれるかもしれません。仕事や社会を体験して自分の将来を考えるきっかけになるかもしれません。
4.地域コミュニティの復興
「親はなくても子は育つ」と言われたのも昔のこと。現代は地域社会の崩壊により「学校」「家庭」に居場所がなくなると八方塞がりです。
それは回り回って子育て家庭を苦しめる結果になっています。子育てを親だけが負うのは重すぎます。
私たちが地域の一員として子どもたちに提供できることは何か。
自由であることは軋轢や葛藤を生みますが、それで良いのだということを伝えていきます。
「人に迷惑をかけてはいけない」と教えるのではなく「迷惑をかけていい。僕たちが支えるよ。」と感じてもらうことがとっても大切だと考えています。
事業の必要経費
人件費