事業の目的
自然の中で仲間と「暮らす」体験は必然を生み、その必然は主体性と協働を学ぶ
こどもが主役のフリープログラムキャンプ
山賊キャンプにはプログラムがありません。こどもたちが集まったら「何がしたい?」とスケジュールを考えることからスタートします。キャンプの定番である「きもだめし」や「キャンプファイヤー」などの内容や進行もこどもたち自身で行います。また食事づくりも、メニューを決めることも火おこしも全てこどもたちが考え、行います。ですからひと夏で28コース行われるキャンプですが、参加するこどもたちによってキャンプは全く違う姿になります。
時計がない!=チャレンジと失敗ができる環境設定
山賊キャンプには時計がありません。日の出とともに起き、太陽が沈んだら寝る。自然のリズムに合わせる暮らしをする。もうひとつはチャレンジすること、失敗することのハードルを下げるからです。
例えばご飯づくりも、ごはんができたら「いただきます」、片付け終わったら「遊びの時間」となります。時計があると「早く作らないといけない」と、できる子や年長者の出番ばかりになってしまいます。しかし時計がないだけで、様々な行動の制限が取り払われるのです。
そして失敗をしたら、「どうしたらいいんだろう?」と考え始めます。試行錯誤の時間はこどもだけの時間。その時間がこどもが自分自身を発見しできる喜びを学ぶ場になるのです。
異年齢のグループ構成=はじめて会う人と仲間になる
参加したこどもたちは異年齢のグループで食事作りをしたり、基本の暮らしをするグループに分かれます。はじめはお互い名前も知らないこども同士ですが、特に最も大変な食事作りを一緒に行うことで、互いを知り、仲間がいることの心強さ、大切さを教えられずとも学んでいくのです。昨今、異年齢で遊ぶような「こども社会」が失われる中で、年長者が年少者を守ったり、助ける姿が減ってきています。キャンプでの数日の暮らしだけでも、年長者は年少者への思いやり、年少者は年長者への憧れを感じ、互いに成長とつながります。
なぜこのような形式をとるのでしょうか?
それはこどもたちが主体者となることで、自分で考え、行動し始めます。そして仲間と知恵を出し合い協力することの大切さを自ら学んでいくのです。
これまでの事業成果
キャンプの野菜の9割(重さ)は地元泰阜村の農家さんへ委託
高齢となり、農家を辞めようと考える方も増えてきている中で、キャンプに参加したこどもたちから「おじいちゃんの野菜はおいしい!」「嫌いだった野菜も食べられた」という声を聞き、無農薬や低農薬の野菜作りにチャレンジするといった農家のプライドの再点火も。
こどもの声が聞こえるが地域の元気、活力へ
毎夏大型バスが連なってやってくる様子は、もはや村の風物詩になりつつあります。キャンプを実施している地域はこどもが少ない集落。毎日こどもの大きな歌声や川遊びの歓声を聞いて、「元気が出てくる。夏だけでなく毎日やってほしい」という話しをしてくださる地域の方もたくさんいます。小さな地域にとって、こどもは未来です。こどもの声はすなわち未来を感じさせ、元気を与えてくれるものになっています。
若者たちが育つボランティア
山賊キャンプには300名の青年ボランティアが参加します。こどもの安全を守り、安心してチャレンジする場を作る役割ですが、青年たちにとっても成長の場になっています。例えばこどもたちの姿を見て「大人の役割」を知ったり、触発されたり、自然の暮らしから自分たちの暮らしを振り返るきっかけになったり。
中にはキャンプに参加していたこどもたちがボランティアとして帰ってくるといった循環も生まれています。
またボランティアを縁につながった大学が、やすおか村をフィールドワークとして活用するなど別の動きも出ています。
卒業生たちの声
山賊キャンプの参加者で後にボランティアとなった方は、「人生で大事なことは泰阜村で学んだ」と話してくれ、グリーンウッドが大切にしている「自分で決める」ことや「協働(チームワーク)」を現在の仕事でも重視していると話されていました。
「たかがキャンプ。されどキャンプ」暮らしから学ぶ山賊キャンプは、自分の生き方を教えてくれる場にもなっています。