海外の味の箱船の食材の紹介③ 南アフリカのレインボーとうもろこし
2023/7/25 14:36
記事を読んでいただき、ありがとうございます!
今日も、日本以外の国々から味の箱船食材を紹介します。
今回は、アフリカ最南端の国、南アフリカ共和国の「レインボーとうもろこし」です。
アフリカのトウモロコシ大国
トウモロコシ大国と言うと、中南米を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、アフリカでも多くの国でトウモロコシが主食となっています。特に南アフリカは、トウモロコシの生産量がアフリカ大陸内で第一位の国。多民族国家の南アフリカですが、人口の約80%を占める黒人系が主に主食とするのが”パップ”というもの。白いトウモロコシを粉にした「ミリミル」を水と炊いたもので、おかずと一緒に食べられます。
しかし、南アフリカで生産されているトウモロコシのうち約80%は遺伝子組み換え品種になっていて、国をあげて遺伝子組み換え作物を積極的に導入して以降、トウモロコシの多様性は劇的に失われていきました。南アフリカのスーパーで並んでいるとうもろこし粉はほとんど遺伝子組み換えのものです。
↑南アフリカの主食 パップ
16世紀から根付く在来品種
レインボーとうもろこしは、文字通り一粒一粒が種々様々な色をしたとうもろこしです。薄い青色や深い赤、クリーム色や紫色、ピンク、黄色などの美しい粒が並びます。形も大きさも色も画一的なものが収穫できる遺伝子組み換えのトウモロコシと違い、一つとして全く同じ見た目のレインボーとうもろこしはとれません。
レインボーとうもろこしに関する文献はほとんど存在していませんが、16世紀にポルトガルより持ち込まれたと言われています。黒人系のズールー族が多く暮らす東南部のクワズール・ナタール州の肥沃な土壌で栽培が盛んになり、主食として定着しました。各家庭で自家消費のために育てられ、乾燥して粉にして食べられており、商業的な栽培はされていませんでした。そもそも当時は、基本的に自給自足で人々の生活が成り立っていたので、当たり前といえば当たり前です。
アパルトヘイトで畑から引き離された黒人層
「アパルトヘイト」という言葉を歴史で学んだ方も多いと思います。
南アフリカで1940年代から1990年代まで約50年にわたっておこなわれた、白人政権による黒人層への不当な差別的な政策です。さまざまな法律によって、黒人が土地の所有を禁じられたり、故郷を離れて鉱山での危険で過酷な労働に強制的に駆り出されたりし、自給自足をすることは困難になりました。そのような流れで当然、家庭で栽培されるレインボーとうもろこしも減少の一途をたどります。
そして、追い討ちをかけるように90年代後半から遺伝子組み換えトウモロコシが導入され、急速に拡大していったのです。
復活プロジェクトが発足!
2015年、南アフリカ最大の都市、ヨハネスブルグのスローフードのメンバーが、クワズール・ナタール州で細々と栽培を続けている人を見つけ、そこから少しずつ種を増やす活動が続けられています。レインボーとうもろこしのシードバンクを作り、栽培を希望する人に種を配布しています。中には、「祖父母が栽培していたレインボーとうもろこしを小さい頃に食べていたけれど、親の世代が鉱山労働に駆り出され、栽培ができなくなった。故郷の味をまた取り戻すことができた」という人たちも現れていて、「食はアイデンティティである」ということが表れているケースですね。
プロジェクトのコーディネーターをしているメリッサによると、現在はより多くの希望者に種を渡せるように栽培を続け、少しずつシードバンクを拡大しているそうです。商業ベースに乗せることより、文化として取り戻すことに重きを置いていて、むしろ、むやみに商売に繋げることは危険だと感じている、と話してくれました。今回紹介してきたジョージアアインやバルナッツが商業的にも成功しているのとは対照的ですが、文化の保護には色々なアプローチがあって、ただ一つの正解があるわけではない事を実感しますね。
↑メリッサ(真ん中)が昨年のテッラマードレで、ケニアの仲間とトウモロコシの種の交換しているところ
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さて、今日まで海外から3つの味の箱船を紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。
現在、味の箱船には世界中から6000以上の食材が味の箱船に登録されています。
今回はそのうち3つしか紹介できていませんが、食材の一つ一つに濃密なストーリーが詰まっています。
私は、食を通してその土地の歴史や文化、風土を知ることが大好きです。味の箱船のカタログを眺めていると、そうしたストーリーが浮かび上がってきて、とてもワクワクします。テッラマードレに参加すると、実際に作り手に会うことができて、その食材の背景にある色々な物語が「自分事」になります。そうした相互理解の連続が鎖のように繋がることで、きっと世界は良い場所になるんじゃないかと感じています。
だから、日本でも味の箱船の活動を強化したい。テッラマードレジャパンの場づくりをしたい。
その思いで今回のキャンペーンに挑戦しています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
残りのキャンペーン期間も、引き続き頑張っていきます!
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