私たちの取り組む課題
分断された社会
社会をよくしていくためには、「公助、自助、共助」という3つのアプローチがあります。公助は生活保護や社会保障など公的な機関が行うものであり、自助は個々人が努力し、貯蓄などを行い対応していくというものです。この2つの考えと共に世界各地で伝統的に行われてきたのが「助け合い」であり、共助と呼びます。
しかしながら、高度経済成長期における急激な都市化やそれに伴う多様な世代やグループの人々との対話機会の創出、身の上話を行える場所の減少などにより、「助け合い」が行える環境やそれを支える「共感する場」が減少し、社会の問題を「自己責任」として見てしまう環境ができ、また、共に助けることに対してのハードルが高まってしまいました。
社会を変えるパワーを認識できない
社会問題に関するイベントで、「あなたは社会を変えられるか?」と聞いたとき、アメリカでは多くの人々がすぐに「変えられる」と答えた。日本では、そのように回答できる人は多くはありません。
社会的な問題が「自己責任」と考えられることに加えて、社会的課題を人々が変えてきたという成功体験が世代を超えて共有されていないことも大きな問題です。戦後の消費者運動や教科書無償運動など、日本国内においても人々が行動し、社会のシステムを変えてきた事例はあります。しかし、それが世代を超えた共通する体験となることはなく、また、高度経済成長期前からの集団就職、終身雇用、年功序列、国民皆保険などの制度や歴史的蓄積によって、「安定」を根ざし、その「安定」した生活をするために、若者は教育を受け、教育を修了した後は、労働によって「社会」にでるとう分断が発生しました。
その結果、「社会人」という概念が日本では広がり、社会に対して何か行動を起こす際には、経済的自立をもって考える傾向が高まってしまいました。
成功体験を認識することが難しく、そのお手本となる存在も身近にないため、多くの人々が自分自身が社会を変えられるパワーをあると認識できなくなっています。
社会的不条理が自己責任だと片付けられてしまう
上記に挙げられた「安定」を目指す社会の潮流は、日本社会の経済的・制度的豊かさをかつては表すものでした。ただ、その一方で、社会のスタンダードから外れたり、怪我や病気、経済的問題で「社会一般」からずれてしまった際に、そのような状況が自己責任で語られる傾向が生まれてしまいました。
例えば、諸外国では野外生活者(ホームレス)の方々が物乞いをすることは多くありますが、日本では物乞いをするホームレスの方は少数派です。また、社会的な課題で窮地に立ったときに、「自殺」という対応策をとってしまう人々が日本に多いのも、社会的不条理を自己責任だと思っていることが原因の一つではないかと私たちは考えています。
人は生まれる場所を選べません。生まれや人生の中で起こるトラブルに対して、それを自己責任ではなく、社会的な課題として取り組むことが必要であり、諸外国では社会的な不条理に対する行動を「Social Justice(社会正義)」と呼んでいます。
社会を良くしていくために
社会は人々の集合体であり、社会を変えるために必要なことは、そこに生きる人々の認識、価値観、行動を変えていくことです。私たちは、日本社会にあるよい点を尊重し、その上で、現代の社会的環境にあったより人々が生きやすい社会へと変わっていくために、一人ひとりが認識、価値観、行動を変えていくことが重要だと考えています。
なぜこの課題に取り組むか
様々な団体が社会問題に取り組んでいますが、多くの団体にとって社会問題を解決することが第一目標であり、その担い手育成を中心に据えて活動が行えていない現状があります。
日本社会において、社会問題に取り組む担い手育成に携わる団体は非常に限られており、また社会問題の解決を目指している団体との連携も限られています。
Wake Up Japanでは、社会問題に取り組む国内外の団体と連携し、社会を変えたいと願う人々に対して、そのためのリーダーシップ開発トレーニングを実施し、そのうえで、社会問題に取り組む活動を紹介することで、日本における市民社会を強化することに寄与したいと考えています。
寄付金の使い道
「社会を変える」ためには、国内外の実践的事例に触れ、それらを日本社会の文脈に落とし込むための方法を研究する必要があります。
そのため、Wake Up Japanでは、年に数回フィールドワークや各種研修やセミナーに参加し、そこでの知見を教材作成やトレーニングなどで社会に還元しています。
現状では、メンバーが自己負担で活動をしていますが、寄付金が集まった場合はこうした活動のための重要な資金源となります。
また、Wake Up Japanでは、社会を変えたいと願う人々が社会問題に取り組むうえで経済的な背景がその一歩の障害になることは望ましい状況とは考えていません。
そのため、多くのイベントでは、参加費を無料とし、経済的に余裕がある方に任意の寄付をいただく制度を導入しています。
ただし、こうした制度は必ずしも毎回経費を回収できるわけではありません。
状況によっては、運営メンバーが負担をしている場合もあります。
寄付金が集まった場合は、こうした運営のための資金に充て、参加のための経済的な障壁を減少するために使用されます。