私たちの取り組む課題

北東アフリカに位置するスーダンでは、日本の約5倍の面積に、約4,000万人の人口が点在しています。国土の大半は北のサハラ砂漠から続く砂漠地域で、夏場は温度が50度を超すような厳しい気候です。そんな中を、人々は主にラクダやロバを移動手段として生活しています。
広い砂漠に村が点在するスーダンでは、医療を受けることが困難な「無医村」が数多く存在します。東京都と同じ面積の地域にひとつも医療施設がない場合もあり、人々は病気になっても適切な診療を受けることができません。そのため、下痢や肺炎、マラリアなど、適切な処置があれば問題ないはずの病気で命を落とす人も多いのです。
こうした状況を改善するために、ロシナンテスはスタッフが機材とともに車に乗り込んで村々を訪ねる巡回診療を充実させるための事業を実施。診療に必要な車の確保からスタッフへの技術指導まで、ソフト面・ハード面において様々な支援を行い、主に妊産婦や子供たちのケアに力を入れてきました。また巡回診療だけでは限界があるため、広大な無医村地域に診療所を建てることで、必要な時に診療が受けられる体制も整えているところです。
2019年には、ザンビアでの活動も開始。より多くの人々が健やかに過ごすことのできる環境を整えるために活動しています。
写真:内藤順司
なぜこの課題に取り組むか

創設者の川原は、外務省の医務官としてアフリカ・スーダンに赴任した際に、政治事情により医療の届かない住民たちに出会います。多くの子どもがマラリアやコレラで亡くなるのを目の当たりにしながらスーダンの人々を診察することが許されないもどかしさに、官僚としての限界を痛感。一人の医者として何ができるか考えるようになります。
「大切なことは何か?やらなければならないことは何か?金があって始まることではないだろう。」
家族のこと、資金のこと。悩む川原にかけられたそんな言葉に背中を押され、 2005年に外務省を辞職。マラリアやコレラなどの発生も多い無医村で医療活動を開始しました。初めは資金不足で看護師などを十分に雇うことができなかったため、何役もこなしながら、来る日も来る日も患者を診ました。
こうした姿勢が認められたのか、「あやしい外国人」でしかなかったひとりの日本人は、次第に村人から医師として、そして人間として認められるようになりました。日本やスーダンの医療従事者が現地での活動を手伝ってくれるようにもなりました。また日本では、現地で活動を始めた川原を応援するためにNPO法人ロシナンテスが立ち上がり、現在の活動の基盤となる体制ができあがりました。
その後、今のままでは自分がいなくなった後、スーダンには何も残らない、と考えた川原は、ロシナンテスの活動を、スーダンの人々が自分たちで医療を継続できる仕組みを作り、現地に受け渡す形に変えていきました。
写真:内藤順司
寄付金の使い道

ロシナンテスが実施するスーダン及びザンビアにおける支援活動に活用いたします。
医療施設のない村々を回って医療を提供したり、国や地域と協力しながら診療所をつくるだけでなく、給水所の整備や学校建設、栄養改善など、包括的な保健事業を整備することで、現地の人たちだけで医療を継続できる仕組みづくりをしています。
またロシナンテスは、「医療」を少し広い意味でとらえています。
たとえば、泥水が原因で蔓延する病があるのなら、井戸を掘ることも医療のひとつ。
未来の医療者を育てるために、学校をつくることもまた医療のひとつ。
つまり「医療」というのは、社会の仕組みそのものです。
支援した地域の人たちが、「医療」を自分たちのものとし、地域の人たちだけで医療を継続できる仕組みが根付いている世界こそが、ロシナンテスの目標です。
写真:内藤順司