私たちの取り組む課題
1.医療支援事業
遺棄化学兵器被害者は、被害を受けて長期間たっても、皮膚のびらんをはじめ、呼吸器・内臓・神経など全身の様々な疾患に苦しんでいます。
現在は、疾患に対しては対症療法をするしかありません。
そこで、少しでも症状を和らげるために、治療方針を決めたり、経過観察をしたりする検診活動を行っています。
検診活動の結果重篤な疾患が疑われる方については、精密検査や、治療費の支援も行っています。
また、中国被害者の中には、症状を少しでも和らげるために薬を使おうとしても、お金がなくて薬が入手できない人がいます。
そこで、薬代援助金として、年間1,000元を、中国の被害者にお渡ししています。
日本の遺棄化学兵器被害者に対しても、長距離の通院にかかる交通費などを支援しています。
2.交流事業(日中双方の市民による遺棄化学兵器被害者への精神的な支援)
社会的に孤立した被害者たちに、日中双方の市民との交流の場を作り、「私は一人じゃない」という思いを持ってもらえるよう、精神的な支援を行います。
そして、中国の遺棄化学兵器被害者の話を日本の市民が直接聞き、心からの交流をはかることによって、お互いがお互いを理解しあい、意識と行動が変わり、日本と中国が今よりもっと友好的な関係を築けることを目指します。
3.広報事業
旧日本軍がかつての戦争で遺棄した化学兵器で、戦後何十年もたった今多くの人が傷ついていることは、まだあまり知られていません。
遺棄化学兵器の問題について少しでも多くの人に知ってもらい、考えてもらうための活動を行います。
4.調査研究事業(遺棄毒ガス兵器被害者の研究支援及び被害者支援のための政策提言)
いまだ全体像が把握されていない化学兵器による身体的被害の全体像を解明するための医学研究を支援していきます。また、事業を通じて、遺棄化学兵器被害者に対してどのような支援が必要かを見いだし、遺棄化学兵器被害者支援のための政策を提案していきます。
なぜこの課題に取り組むか
中国の大地には、いまなお、旧日本軍が遺棄した数多くの化学兵器がねむっています。
先の大戦において、旧日本軍は、国際法上その使用が禁止されていた化学兵器を中国に大量に持ち込んだ上、戦場に配備し、使用しました。
それら大量の化学兵器は、日本敗戦前後の時期に、地面に埋められたり河川に投棄されるなどして、組織的に遺棄されました。これが、中国国内に、大量の遺棄化学兵器が存在することとなった所以です。遺棄された大量の化学兵器は、戦後、化学兵器であることを知らずに触れるなどした数多くの中国の人々に、計り知れない被害を与えてきました。
化学兵器に触れた直後は、触れたところが腫れて大きな水疱ができて破れ、体液が流れ出し、激しい痛みに襲われます。皮膚が真っ黒に変色したり、目が桃のように腫れたり、咳が止まらなくなったりと、様々な症状が出ます。皮膚の水疱が収まっても、免疫力が低下し、化学兵器を吸い込んだ呼吸器に異常がでるので風邪を引きやすくなります。事故から長期間が経っても、呼吸器の異常は治りません。化学兵器は発がん物質なので、がんのリスクが高まります。さらには、神経や脳に被害が及び、記憶力、認知能力などが低下する人や、自律神経失調になる人も大勢います。
このように、たとえ一命を取り留めても、時を経て疾患の進行や遅発性の症状が現れ、その結果、被害者たちは、健康被害のみならず、働けずに困窮生活に苦しみ、あるいは就学できずに将来の夢を失うといった、全人生にわたる被害を受けています。
私たちは今まで、日中両国の医師らの協力による合同検診を複数回にわたって実施してきましたが、被害者たちの健康状態や生活実態が、時を重ねるに従って悪化している現実を目の当たりにしてきました。
被害者たちは、生活苦のため適切な治療を受けることができません。がんなどの病気を発病しながら十分な治療を受けられずに命を落とす被害者たちは後を絶ちません。
そのような被害者たちに、検診や検診結果に基づく治療を支援し、被害者が少しでも普通の生活をとりもどすために、私たちは活動しています。
寄付金の使い道
いただいたご寄付は、医療支援事業、交流事業、広報事業、調査研究事業など活動全体に利用いたします。
その中でも主に医療支援事業の検診活動に利用いたします。検診を実施する中国の病院に支払う検診手数料や、翻訳・通訳費用などに利用いたします。
また、中国の遺棄化学兵器被害者に一人あたり年間1,000元の薬代援助金を交付していますので、薬代援助金にも利用いたします。
被害者に重篤な疾患が見つかった場合は治療費にも利用いたします。
交流事業では、主に中国から遺棄化学兵器被害者を招待する旅費に利用いたします。