私たちの取り組む課題
不登校の当事者と家族が直面する課題は、さまざまなものがありますが、代表的なものとしては以下のようなものが挙げられます。
不登校の子どもの心身の健康:不登校になると、頭痛や腹痛、吐き気、めまいなどの身体症状や、うつや不安などの精神的な苦しみを抱えることが多くあります。また、不登校になると自分を責めたり、自信を失ったり、孤立したりすることもあります。精神的な苦しみが長期間にわたり重なり続けると、教室恐怖や対人恐怖、外出恐怖や母子分離不安、緘黙(人前で話せないこと)、吃音、家庭内暴力、リストカット、抜毛、自殺念慮、過食・拒食、醜形恐怖症、身だしなみを整えられない、など様々な症状も現れるようになっていきます。
保護者の心身の健康:保護者は、子どもが突然学校にいけなくなったことで、混乱して悲観したり、原因探しや犯人探しをして学校と不信・不仲になりやすい傾向にあります。また事柄の性質上、他者に話しにくいため、誰にも話せず先の見通しも持てずに悲観的になり一人で苦しみを抱え続ける人も多くいます。
学校への復帰や進路選択:不登校になると、学校への復帰や進路選択について悩むことがあります。学校へ行けるようになるかどうか、行けるとしてもどうやって行くか、行きたい学校や進路があるかどうか、周囲からの理解や支援が得られるかどうかなど、さまざまな不安や問題が生じる可能性があります。
家庭内のコミュニケーションや関係性:不登校になると、親子間や兄弟間でのコミュニケーションや関係性にも影響が出ることがあります。親は子どもに対して過干渉になったり、無関心になったり、責めたり、甘やかしたりすることがあるかもしれません。また、兄弟は不登校の子どもに対して嫉妬や劣等感を抱いたり、反発したりすることがあるかもしれません。祖父母がいれば、祖父母が親や不登校本人に対して毎日叱責するケースもあります。
これらに対して、私たちは下記の事業を行っています。
①居場所事業(毎週月・木 午後 )
不登校本人も保護者も悩みを抱えたまま誰にも理解されずに孤立し苦しみ続けています。そうした当事者と家族が、安心して好きなことができ素顔の自分で交流できる居場所(サードプレイス)が「ちくご地域ユースサポート不登校支援部会」です。 居場所で過ごすことで、本人と家族がリラックスして楽しみ、エネルギーを蓄え、新しい気付きや発見をして変化していくことを目的としています。
②体験事業 (職業体験・ボランティア活動・学習支援) 毎週火・土・他随時
希望する方がいれば、協力農家さん等での職業体験や保護猫・ゴミ拾い・フードパントリー等のボランティア、ほっと館やめでの学習の支援等を行います。
③学び事業 (学習会・交流会・映画上映会・他) 年6回程度
保護者向けの不登校や発達障害関連の学習会、保護者と支援者の交流会、地域社会むけの意識啓発事業として映画上映会、等を行っています。2023年5月7日に起立性調節障害当事者の女子高校生が制作した映画『今日も明日も負け犬。』の映画上映会を行います。今後はポッドキャスト(音声配信)を利用して広く発信していくことも予定しています。
④進路相談事業 (通信制高校等説明会・見学会)説明会は年1~2回、見学会は年5回程度
不登校当事者の多くの進路となる通信制高校等の説明会を行っています。付随して見学会も行っています。
なぜこの課題に取り組むか
「今までありがとう。私がいなくなっても元気でいてね。」
我が家の長女は素直で朗らかで真面目な愛されキャラ、傍目からはそう見えたし、将来に何の不安もないと思っていました。しかし小学校四年生の春休み、長女は目に見えて元気がありませんでした。食欲もなく口数も少なく、気づくと布団や部屋の隅でうずくまっています。大好きだったアイススケートに連れて行っても、ほとんど滑らずにやめていました。「何かがおかしい。」そう感じながらも、何がおかしいのか分からず春休みは過ぎ去り、5年生になりました。新学期、長女は体調不良が続き、発熱や腹痛で続けて学校を休むようになりました。長女は何も喋らず、毎日家で横になっていました。
「今までありがとう。私がいなくなっても元気でいてね。」
ゴールデンウイークがあけてから長女は、突然、家族ひとりひとりに宛てて手紙を書きました。最後はどれも、この言葉で締めくくられていました。私はこれを読んで、遺書だ、と直感的に思いました。心の中で緊急警報が鳴り響きました。ほどなくして、長女は一言「学校に行きたくない」といいました。命を取るのか学校を取るのかの選択に、私は迷いませんでした。そうして我が家の不登校生活は始まりました。
長女は不登校になり、とりあえず命の危険は去りました。しかし彼女は多くを語りません。不登校の理由は謎のままです。何がそんなに苦しかったのか。私は毎日考え続けました。でも考えても考えてもわかりませんでした。所詮他人の気持ちはわかりません。でも自分の気持ちならわかる。そこで自分について考えてみて、思いました。
「そういえば私も、小さいころから生きててずっとしんどかった。」そうして生きづらさについて考えるようになりました。
私たちのビジョンは『生きづらさを抱えた人もそうでない人も等しく幸福になれる社会』です。生きづらさを抱えていても、環境を適切に整えれば、辛さを感じずにのびのびと過ごすことができます。不登校の子どもたちは、不適合体験を通じて生きる意欲やエネルギーを奪われ、可能性や自信を奪われてきました。失敗を咎められ、好きなことを咎められ、挑戦や成長の機会を奪われてきました。私たちの居場所では、安心安全に過ごせることを大前提に運営しています。子どもたちを脅かす存在は中に入れません。そうした居場所で、のびのびと、好きなことに思いっきり取り組んでこそ、子どもたちは最高に成長するのだと信じています。
ちくご地域ユースサポート不登校支援部会 部会長 水田康弘
寄付金の使い道
・ちくご地域ユースサポート不登校支援部会の運営・活動に係る諸経費(交通費、会場費、通信費、印刷郵送費、広報費、書籍代、打ち合わせ費、業務委託費、雑費、講演やワークショップづくりの資料作成費、付箋やペンなどの消耗品代等)
・持続的な活動のための、不登校親の会や各種研修会、学校現場等への当団体スタッフ派遣費用の補填
・居場所事業や学習支援・講演会等での講師謝礼、ゲスト・スタッフ等への謝金
余剰金が出た場合は、
・困難な状況にいる子どもの権利を守るための研修等に当団体スタッフが参加した際のスコラーシップ
・ビジョンやミッションの実現のためのアクションに係る活動の活動資金等、全て大切に使わせていただきます。