私たちの取り組む課題
誰もが本に触れられる場所として公共図書館・学校図書館・書店の切り口から読書環境を考えると、北海道の読書環境は全国ワーストレベルです。北海道では、本を読みたいと思っても、気軽に手に取れない状況が続いています。
一方で、小中学生の「読書意欲」は全国平均あるいは平均以上です。子どもたちのために改善していく必要があるのですが、「読みたいのに読めない」という状況は、長年つづいています。
この原因のひとつは、北海道の自治体の面積に関係しています。北海道の町村の平均面積は全国1位で全国平均の2.5倍にもおよぶため、気軽に出かけすぐに本に触れられる環境ではありません。また冬期間は交通が不便なことから、都市部の書店や公共図書館へのアクセスが難しい環境です。
さらに、北海道は文科省の新刊購入の指針に対して「半分以下の予算措置」を30年以上続けています。改善傾向はなく、さらなる悪化を辿るものと見られています。書店も減少傾向にあり、大手書店はある程度の人口規模の都市にしか出店しませんので、地域格差は広がる一方です。
なぜこの課題に取り組むか
「読むこと学ぶことで北海道は変わる。より良い読書環境を、学びの場をオール北海道でつくっていこう」
これがわたしたちの合言葉です。
本会が10年にわたって活動を続けてこれたのは、そして規模が大きくなって取り組む内容が増えてきたのは、関わるひとたちがみな本の力を信じているからです。
読書環境とは単に物語が読める場所でなく、人生のさまざまな場面で必要となる知識や情報を提供する知的基盤でもあり、現代社会を生きていくために必要な世界観や人生観の養成を支える場でもあります。
格差のない読書環境とは
人々がより良く生きていくためには、まちに図書と読書環境が整備されていることが不可欠です。各自治体においては人口規模や財政状況などに左右されず、各個人においては居住地や収入、家庭状況などに左右されず、どのまちに住むどの個人であっても「読みたいときに読める読書環境」が適切に整っている北海道を目指しています。
学びや語らいを支える読書環境とは
本があるだけでなく、生涯学習の時代に応じた「自主的な学び」を支える設備や、コミュニティや自治体の課題あるいは未来を語ることができる場を持つ「多機能型の図書施設」が注目されています。そこから新たな発見や価値観、機運が生まれることもしばしばです。わたしたちは北海道における「学びや語らいを支える読書環境」の整備を目指しています。
だれもが安心して過ごせる読書環境とは
わたしたちの暮らしにおいて、災害や治安問題にとどまらず、偏見や差別、憎悪などによって、不安や不快、窮屈さを感じる場面が少なくありません。わたしたちは「本がある場所」は、どこよりも安全で自由で公正であり、だれであろうと分け隔てなく心穏やかに配慮と敬意のもとで過ごせる空間であるべきと考え、だれもが安心して過ごせる読書環境づくりを進めていきます。
本が豊かにある。読みたい本に手が届く。
学びも語らいもあり、安心安全でどこよりもくつろいで過ごすことができる。
それが「読書環境」のあるべき姿だとわたしたちは考えています。
寄付金の使い道
ーミッションー
格差のない読書環境整備を目指して以下のミッションを設定しています。
【1.調査・取材・広報】
読書環境に関する状況や数値について、細やかな調査・取材を実施し、課題を明確にするとともに、計画・実践の最適化につなげていきます。そしてそれらを「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでゆかいに」(井上ひさしの言葉)、伝えることをモットーに、さまざまな媒体や場面で広く提示していきます。
【2.支援・アドバイス】
上記の調査・取材で明確にした課題に基づき、地域に赴いての活動を策定・実践します。「図書不足に悩む施設への再活用図書の提供」「図書施設の診断・アドバイス」「図書まつりなどのイベントの支援」などを実施していきます。
【3.つなぐ・つながる】
上記のミッションを進めるために、「つなぐ・つながる活動」を重視します。そもそも共感力やマンパワーの助力なしに、本会の掲げるビジョンを実現することは不可能です。北海道のさまざまな個人・団体・行政・企業・学術方面とつながり、ビジョンを共有しながら地域との連携や協働を進め、そのまちに必要な「読書環境の整備」や「読書活動のお手伝い」を実践していきます。
―事業展開―
上記ミッションを果たすために、わたしたちは3つの事業を設定しています。
【ぶっくらぼ事業】
上記ミッションの1、3にあたる活動です。「取材・調査」に基づいた「情報の提供および共有」を進め、「連携・協働」を促進する活動です
・情報誌「ぶっくらぼ」
本と読書に関する北海道のさまざまな課題や話題を取り上げる情報誌「ぶっくらぼ」(季刊)を発行し、会員および道内すべての自治体の図書施設に無償で郵送。また個的施設やイベントで無償配布しています。(2017年度開始)
・チカホぶっくらぼステーション
札幌駅前通地下歩行空間に会場を設け①北海道の読書に関する話題や情報をパネルで紹介するほか、本や読書に関するイベントや取り組み、当会の活動などに関するパンフレットやチラシを配布します。また、読み終えた本の一部を販売し、活動の財源に充てています。(2017年度開始)
・ゆるレファ!
講師やパネラーが「参考図書」のような存在となり、そこからテーマに関心を持つ参加者が互いに意見を交わしながら深堀りしていく新しい形の勉強会です。3カ月に1度の割合で開催しています。(2018年度開始)
・企業連携
本会の活動に共感していただいている企業との連携を進めています。プロ野球球団やJ1チームがホームゲームの際に、来場者から「読み終えた本」を集め、当会にご寄贈いただいています。また、航空会社が機内に残された本を一定期間保管した後、まとめて当会にお送りいただいています。(2013年度開始)
【ブックシェアリング事業】
上記ミッションの2および3にあたる活動です。図書を必要とする団体・施設への読み終えた本の無償提供を軸に、さまざまな施設や機関と連携を進めていきます。
・札幌市図書再活用ネットワークセンター
札幌市との協働運営による「札幌市図書再活用ネットワークセンター」を拠点に、読み終えた本を広く収集し、良書を保管。それらを、図書の不足や老朽化に悩む幼児保育施設、学校、福祉などの団体・施設に無償で提供する活動です。(2007年度開始)
・大麻銀座ブックストリート
江別市大麻銀座商店街振興組合との連携事業です。「本」をテーマに商店街のにぎわいづくりや「顔の見える地域交流」を創出するイベントで、毎月最終土曜に100円古書市を軸に、ビブリオバトルや読み聞かせなどの読書イベントを実施しています。(2015年度開始)
【北海道ぶっくぱーとなー事業】
上記ミッションの2にあたる活動です。実際に地域を訪れての「読書環境の整備」「読書活動のお手伝い」を実施しています。
・診断・アドバイス
学校図書館や公民館図書室、私設図書館などを訪問し、施設や蔵書の診断・アドバイスを実施。またリニューアルに関する提案やデモンストレーションなどを行っています。(2017年度開始)
・図書イベントのお手伝い・運営公共図書館や民間施設の図書イベントで「読み聞かせ」や「絵本プレゼント」「本に関する手づくり工作」の運営やお手伝いをするほか、地域に赴いて「移動書店」「移動図書館」「ワークショップ」「講演会」などを実施しています(2015年度開始)