私たちの取り組む課題
1.学校に行けない子どもたちに質の高い教育を提供。
・元教師達で組んだカリキュラムによる、演劇教育、ボードゲーム教育、自然体験、遅れを取り戻していくための学び直しサポートなど。
2.発達障害など、集団になじめない子どもたちのコミュニケーションの場を提供。
・トイロでの過ごし方は子どもたちの話し合いで決定。
・総合学習では、話し合い、発表などの対話を重視。
・ボードゲーム教育で、対話やアンガーマネジメントを実施。
3.多様な体験活動を提供。
・農業体験、宿泊自然体験、職場体験など、地域の協力で、学校に行かなくても体験活動を実施。
4.保護者の子どもへの不安を解消。
・教育相談、親の会、家庭での具体的対応策の提示、保護者向け講演会、保護者のサークル活動支援、地域へのつなぎなど。
なぜこの課題に取り組むか
「学校だけでは不登校生徒は対応できない。」
12年間中学校教師をしていた谷川が教育現場で突きつけられた現実です。
コロナの休校明けに、在籍していた中学校で不登校の生徒が一気に増えました。多い学年では3クラス規模で20名近くの生徒が学校に来れなくなりました。
教育現場で、実際に見てきた対応は、何日かに1回の家庭訪問や電話連絡をして、登校を促す。行事などの節目で参加を促すなどです。
それだけで、子どもたちが登校するようになるという事はまれです。
しかし、いち教師としてできることはそれが精いっぱいなのが事実です。
事務作業や部活指導に追われる時間の無さ、クラスや授業クラスの子どもたちの教育、不登校以外でも課題を抱える生徒の多さなど、物理的に学校に行けない子ども達に付きっ切りで伴走することができない現実があったからです。
子ども相談センターなどの外部機関と連携をしても、対応は同じで、何か良い変化が起こったこともほとんどありませんでした。
外部機関もまた、多様に課題を抱える子どもたちに関わっているので、人員不足など、物理的問題が内在していました。
結果的に、学校や外部機関が対応しきれない子どもたちは、どこにも関わることがなく、家に居るだけの生活になり、教育の機会が失われていきました。
不登校生徒を100人近く見てきた中で、復学して卒業を迎えた生徒は、私が知る中では3人だけです。
「不登校は甘え」
私が在籍していた中学校の教師で、学校にいけなくなった子どもたちに対して多かった反応です。
体感的に半分近くだと思います。
未だに「甘え、さぼり」ということだけで解決しようとする教師は居ます。
当然そうなると、不登校の生徒の対応は後回しになります。
結果、「誰もが過ごしやすい学校づくり」の中に、不登校の生徒への配慮は省かれることが多かったです。
これでは、不登校の子どもたちは学校に来ることはないだろうし、この先にも同じことが繰り返されていくと思いました。
「事態は想像以上」
2020年、日本の不登校の小中学生は18 万人以上いることが発表されました。
それに対して全国の行政が設置している適応教室の数は1500 にも満たない数になっています。
だから、民間のフリースクールで学校に行けていない子どもたちの教育を、学校以外でも確保していく必要があります。
しかし、フリースクールなども470 程度しかないと言われています。
今の日本で学校に行きづらくなったら、子どもたちは教育を受けることができなくなる可能性が高い。学校が全てという感覚に陥るのも納得します。
それは自分が住む地域でもそうでした。なんとかしなければいけないと強く思いました。
学校になじめない子どもたちにはなんの罪もありません。
その子たちの教育の機会が確保されていないことが、現状としては大きな課題です。
学校以外の教育の選択肢がない事が、学校に行けないことへの不安にもなっています。
教育を受けられない理由はさらに根深い
体調や精神面で学校に行けないことが表面化していますが、教育現場にいて、最も深刻だと思ったのがそれ以外の子どもたちです。
それは、「経済的理由」や「家事手伝い」で教育や体験を受けることをあきらめる子どもたちです。
「今日の晩御飯も食べられるかわからない」「親が働ける状態じゃない」などの経済的な理由。
「下の子どもたちの世話をしないといけない」「朝は祖父母の介護をいないといけない」などの家庭状況による理由。
これらにより、学校や塾などの習い事に行きたくても行けない生徒がいました。
忘れもしないことがあります。
生活が困窮していて、兄弟姉妹も多く、長男だった生徒を担任していました。
下の子の保育所に迎えにいける所、アルバイトが可能、定期代がかからないなど、進路の選択肢は大幅に狭められていました。
そして、進路を決定する懇談に保護者は来ず、その時彼はぽつりとこう言いました。
「どうせ希望する学校にはいけない。この環境から抜け出すこともできない。人生をあきらめた方が楽。」
この状況を目の前にして、1人の大人としてみなさんなら何と言ってあげますか?何をしてあげますか?
私は、何も言えず、何もできませんでした。
この経験が、トイロを立ち上げる根っこの1つ、「すべての子どもたちに学校に変わる教育や体験を届ける」になりました。
必要なのは地域の子ども達が堂々と通える、開かれた民間スクール
スクールと名付けている所は、居場所提供だけではなく、教科の学習も、生きていくために必要な力も、学校並みに教育できる民間スクールであるべきだと教師時代に強く思いました。
学校に行けない子どもたちが、人目をはばからず、この場所でしっかりと学んでいるんだと胸を張れる民間スクールが各地域に必要。
地域の子どもたちは地域で見ていくことが大事だと、トイロでは思っています。
それこそが真の学校の選択肢であり、学校に行けない子どもたちに本当の意味で安心を与えられるのだと思います。
「不登校という言葉を無くす」のではなく、「学校以外にも公教育並みの教育が受けられる場所を作る」ことが本質です。
それを実現するために、同じ危機感を教育現場で感じた元教師や現役教師達が集まりました。
そして、大阪の吹田に「トイロ」が誕生しました。
「学校以外で教育を受けられる選択肢を増やす。」
これが、教育現場で、現実を見てきて、トイロに集った教師たちの思いです。
寄付金の使い道
教育や体験を受けたくても受けられない子どもたちへの奨学金制度。です。
トイロは2021 年6 月からスタートしたフリースクールになります。
たった1カ月で42件の教育相談と、12人の子ども達がトイロに学びに来ました。
それだけ教育の機会を求めている子どもたちはいます。
しかし、相談に来た8割以上は、経済的に通うことができないと肩を落として帰りました。
保護者の中には、行政が補助金を出してくれるものだと思っていた方もいて、期待が一気に打ち崩されていました。
補助金があれば通えるのに。やっと、通えそうな所が見つかったのに。
こんな声がありました。
経済的な理由や、家庭の事情で、教育や体験を子どもたちにあきらめさせていいのか。
「人生はもうあきらめた。」と言わせていいのか。
1人でも多くの子どもに、生きる希望を持ってもらいたい。
それを複数の大人達でサポートして、生きる希望を届けたい。
それがこの寄付金の使い道です。
8人の方から1000円のご寄付をいただけることで、1人の子どもが週に1度教育を受けられます。
子どもたちに「人生をあきらめた方が楽。」と言わせるのではなく、「支えてくれたみなさんのおかげで人生あきらめずに済みました。」と言ってもらえるように、どうか、温かいサポートをよろしくお願いいたします。