
事業の目的
本プロジェクトは、障がいのある方が「働くこと」を安心して一歩ずつ体験できる場を提供し、将来の就労への不安を和らげ、自信や希望を育てることを目的としています。
多くの障がい当事者が、「就職」というゴールに向かう過程で、いきなり"働き続けること"を求められる現実に直面しています。
しかし、実際には…
・「何が自分にできるかわからない」
・「一度働いて失敗したことがトラウマになっている」
・「働きたい気持ちはあるが、体調や人間関係に不安がある」
といった不安や葛藤を抱えており、「働くこと」に踏み出せないまま時間だけが経過してしまうケースが多くあります。
このプロジェクトでは、そうした課題に対し、"体験を通じて自分のペースで進める"ことができる仕組みを構築しています。
■ 目的の詳細
1. "働く"に対する不安を小さくし、自分の得意や好きに気づく
実際の企業や地域の協力を得て、職場見学や短時間の作業を体験する中で、「これならできそう」「これは苦手だった」と、自分の感覚で向き合える機会を提供します。体験の前後には振り返りも設け、経験を"学び"に変えていきます。
2. 「働く=誰かと関わること」の感覚を育む
他者と一緒に働くことの中で生まれる、ちょっとした声かけ、ありがとう、助け合いといった体験を通じて、「一人じゃない」「働くって思ったより温かい」という感覚を醸成します。
3. 支援者や家族、事業所など周囲との"協働"による支援モデルをつくる
本人が体験するだけでなく、事前見学やフィードバックを通じて、支援者や家族、協力事業所が「本人をどう支えるか」「どうすれば定着に繋がるか」を学び合える構造とし、地域全体での就労支援力の向上をめざします。
4. 就労をゴールとせず、"働く意味"を共に問い直す機会に
このプロジェクトでは、就職そのものだけでなく、「どんな働き方が自分に合うか」「仕事の中で何を大切にしたいか」を体験を通して内省できるように設計しています。本人が主体的に選び、納得して一歩を踏み出せる就労支援を目指しています。
5. 福祉×企業×地域の協働で、"インクルーシブな働く社会"のモデルづくり
福祉側の就労支援スキル、企業側の受け入れ環境づくり、地域との関係性など、異なる立場が共に学びながら進めることで、「共に働き、共に育つ」文化を根付かせていくことを目指します。
このように、就労体験プロジェクトは「ただの体験会」にとどまらず、「本人の挑戦」「支援の質の向上」「地域と企業の理解促進」を一体的に進めていく取り組みです。
その目的は、「誰もが自分らしく働ける社会を体験から育てること」にあります。
これまでの活動

● 2024年11月:第1回 プレ開催(パイロット版)
会場:アビスパ福岡 ホームゲーム/ベスト電器スタジアム
・概要
障がいのある若者や就労経験の浅い方を対象にした、初の就労体験プロジェクトを実施。
参加者は10名、受付補助・備品整理・来場者案内などの簡易業務を担当。
・成果の兆し
「働くことに少し自信が持てた」「次も参加したい」という声が多数。
数名はその後、一般企業への就職へと前進。
● 2025年3月:第2回 プレ開催
会場:同上(ベスト電器スタジアム)
・概要
来年度の本格実施に向けた再プレ開催として、より実務的な業務にもチャレンジ。
受付誘導などのタスクも経験。
・参加者の声
「前より緊張しなかった」「人と話すのが楽しかった」「働くイメージが持てた」など、継続的な変化が見られた。
● 事前連携・支援体制構築
・支援者向け見学会(2024年10月・2025年2月実施)
就労支援事業所のスタッフを対象とした現地見学会を実施。体験内容や安全配慮のポイントを理解し、利用者への働きかけを後押しできる体制を構築。
・企業との調整と協力関係
受け入れ先との継続的な対話を通じて、業務内容の明確化と支援配慮事項をマニュアル化。今後もアビスパ福岡以外の企業開拓も継続中。
● 今後の展望
・2025年度:本実施開始(年5回)
参加者の継続・拡大、支援者との協働、企業との信頼関係を深めながら、地域に根ざした「はたらく体験の場」として成長を目指す。
これまでの事業成果

① 参加者の「働くこと」への意欲と自信の向上
・参加前は「不安」「自分にできることがあるのか」という声が多く聞かれたが、参加後は「またやってみたい」「次はもっとできそう」といった前向きな感想が多数。
・実際に人と接したり、責任ある役割を担うことで、自身の「できる」体験を積むことができ、「働く」ことを具体的にイメージし、就労準備の一歩を踏み出せた参加者が多い。
② 参加者の行動変容と進路の前進
・一部の参加者は、この体験を機に一般企業への就職へ。
・継続参加によって、「体験の中で得た達成感や振り返り」を次の就労活動に活かすケースが見られ、支援の接点としての大きな役割を果たしている。
③ 企業・地域との新しい協働の形を創出
・スポーツイベントという場を通じ、企業・NPO・支援者・本人が協働するモデルケースが実現。
・業務提供元(アビスパ福岡など)からも、「参加者が想像以上に活躍してくれた」「企業として社会貢献の実感が強まった」との声。
④ 支援者の支援スキル向上とネットワークの強化
・同行支援者にとっても、「現場での支援経験を共有できる」「他の支援者と連携する場になっている」など、支援力向上とネットワーク形成の場にもなっている。
・実際の業務を通じて、「何をサポートすべきか」「どう伝えると伝わるか」といった実践知が共有され、日々の支援にも好影響を与えている。
⑤ 地域住民の障がい理解促進・共生意識の醸成
・一般来場者との接点(受付・案内など)を通じて、地域社会の中で「共に働く」「共に場をつくる」経験を生み出すことができた。
・今後はイベント会場だけでなく、地域企業・商業施設など他分野への展開も見据えた基盤ができつつある。
事業の必要経費

本プロジェクトでは、「参加者が安心して挑戦できる体験の場づくり」と、「地域・企業・支援者が共に関わる協働の仕組みづくり」を両立させるため、以下のような費用が必要となります。
1. 参加者に関わる経費
・工賃(謝礼)
「働く」体験を単なるボランティアで終わらせず、実際の"仕事"として捉え、1回あたり2,000円程度の工賃(参加謝礼)を支給します。報酬が発生することで、仕事の手応えや責任感を感じられ、自己肯定感の向上にもつながります。
・保険加入費
作業中のケガや移動時の事故に備えた傷害保険料。本人も支援者も安心して参加できる体制づくりに欠かせません。
2. 実施時の備品・安全対策費
・ビブス・キャップ(団体名入り)
現場での識別や安全確保のため、団体名やプロジェクトロゴ入りのビブスや帽子を用意。見学者や他者からも一目でわかり、企業側の安心にもつながります。
・暑さ・寒さ対策グッズ
屋外作業時の安全性を高めるため、夏季は冷却タオル・冷感スプレー・飲料補助、冬季はカイロ・防寒グッズ等を提供。体調管理を支える予防的支出です。
・衛生用品(マスク・手指消毒・ウェットティッシュなど)
基本的な感染症対策として、衛生用品の配布・設置も行います。
3. コーディネート・運営人件費
・運営スタッフ・コーディネーターの人件費
事前調整(企業との交渉・準備)、当日立ち会い、振り返り支援までを担うスタッフの人件費。専門性と細やかさが求められる重要な支出です。
・見学会・事前説明会の実施経費
安心して参加してもらうために、事前に実施する体験先の見学会や参加前オリエンテーションの会場費・資料費・交通費など。
4. 運営・学びの場の構築費
・振り返り・学びのワークシート作成・印刷費
体験の質を高めるため、終了後には振り返りを行い、「できたこと」「難しかったこと」「次に挑戦したいこと」などを整理する時間を設けます。自分の経験を言語化し、成長につなげる仕組みの構築に必要な教材費や印刷費です。
・オンライン報告会や交流会の運営費
参加者、支援者、協力事業所が一堂に会し、体験を振り返る「報告会」や、次の挑戦につながる「交流会」の開催にも費用がかかります。(会場費、配信機材費、軽食代など)
5. 情報発信・継続的運営のための経費
・広報物・チラシ・ポスター制作費
地域の事業所や参加希望者に向けた告知のためのデザイン制作・印刷費。視覚的にわかりやすく魅力を伝える工夫が必要です。
・団体運営費(共通経費)
本プロジェクトの背景には、団体全体の運営(連絡調整、会計処理、IT導入、法人管理業務など)があります。全体予算の一部を団体基盤の整備に充てることで、事業の持続性と透明性を確保します。
このように、就労体験プロジェクトの実施には、参加者の"安心"と"気づき"、支援者・地域との"協働"、そして"継続性"を支えるさまざまな経費が必要です。
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