私たちの取り組む課題
主宰者のビデオジャーナリスト遠藤大輔は、90年代から「新宿路上TV」(野宿者向けのコミュニティテレビ/東京ビデオフェスティバル・ビデオ活動賞受賞)を初めとする、ユニークな活動をしてきました。それらの活動の中で遠藤は、「企画から発信まで一人で行う方法論」を確立。その後のテレビ報道の仕事の中でも、その体制によってビビットな内容を発信、現場の生の声を伝えることで、高評価を得てきました。民放局が一斉に下請けプロダクションを切った2009年以降は、市民団体のビデオを企画制作したり、YouTubeからの貧困問題発信(DROPOUT TV ONLINE)などの活動を行い、その集大成として2012年に劇場映画「渋谷ブランニューデイズ」を公開。各界から大きな評価を得ました(貧困ジャーナリズム2012特別賞受賞)。2013年には、自身の方法論と教育内容を兼ねた「ドキュメンタリーの語り方ーボトムアップの映像論ー」(勁草書房)を出版しています。
2019年には、YouTubeチャンネルを刷新し、「ボトムアップチャンネル(β)」を展開。環境、原発、貧困、反戦、医療、労働等、広い分野でニュースを発信してきました。その多くは、テレビと同等のクオリティで、取材日当日もしくは翌日にはアップロードするという、他では見られない形式をとっています。これにも独自のワークフローがあります。また、福島原発被害東京訴訟の「終の住処を奪われて」、東海第二再稼動問題にフォーカスした「恐怖のカウントダウン」、ぜんそく患者の闘いを描いた「青い空を未来へ」、医療問題の本質に迫る「公的医療はどこへ行く」など、学習会用短編ドキュメンタリーを多く制作、いずれも市民のご協力で、全国で上映会が開かれてきました。
これらの成果をもとに、後発育成の場を兼ねた持続的なプラットフォームを作りたいというのが現在の課題です。
なぜこの課題に取り組むか
2011年3月11日、当時の民主党政権は福島原発事故のイメージ操作を、2日後の13日に電通に依頼したとの情報があります。「ただちに人体に影響はない」というコメンテーターの台詞は、皆さんの記憶にも強い印象として残っていると思います。また、安倍政権下では菅官房長官によるテレビ局人事への介入もありました。現在、官邸には2人の電通社員がいると言われています。広告は報道と違い、本質とはかけ離れた表現を可能にする、今や政権の大きな武器です。例えば、原発からの「汚染水」を「処理水」と表現する、「医師不足」の代わりに「医師の偏在」と言い換える。枚挙に暇がありませんが、大手テレビ報道が体制翼賛的になっていることは確かです。
幸い、インターネットやSNSの普及によって、テレビ報道は昭和の頃よりは盲信されなくなっていますが、カウンターカルチャーとしての映像の利用は、いまひとつ本格的ではありません。社会問題あるいはアクションの記録は、撮影素材をただ並べたものだったり、取材による企画制作よりも座談会形式の発信が多い印象です。おそらく多くの人々は、遠藤大輔が研究・実践してきた映像の言語的構造や作り方のノウハウを知らないからだと思います。ボトムアップチャンネルの参入はタイミングが遅かったこともあり、さほど有名ではありませんが、すべてオリジナルの取材による企画制作で、テレビと同じクオリティで制作しています。
しかし、ボトムアップチャンネルの活動を継続するためには、やはり資金が必要です。今までは合同会社メディア活動支援機構の非営利部門として行ってきましたが、ニュースを増やすためにはより多くの人材と経費が必要です。報道活動は平日昼間にも行いますから、アルバイトなどとの相性が悪い現場です。何より専門職ですから、片手間にできる活動ではないのです。この課題を突破できなければ、これまでの実績を公的に共有・展開することは相成りません。そんなときSyncableの社員さんと出会い、活動全体を完全非営利の体制に組み替え、賛同金を集めることで、経済的基盤を改めようと決意しました。
寄付金の使い道
・交通宿泊費、イベント参加費などの経費
・スタッフ人件費
・撮影機材等ファシリティの経費