シリーズ「公害PFOA」の取材着手から、2025年5月で丸4年を迎えました。
報じてきたのは、企業が引き起こすPFOA汚染です。
大阪では、世界8大PFOAメーカーの一つである「ダイキン工業」が、日本一の高濃度地下水汚染を引き起こしました。PFOA工場を中心に、地下水、河川、土壌、大気にPFOAを漏出していました。地域住民が育てる農作物も汚染され、住民の高濃度曝露も判明しています。2025年4月には、ダイキンでPFOA製造に従事していた作業員の健康被害が報告されました。
岡山県吉備中央町では2023年10月、町民が利用する水道水から、国の指針値28倍ものPFOAが検出されました。地元企業「満栄工業」が、PFOAを含んだ廃棄物を町内の資材置き場に放置していたのが原因です。漏出したPFOAが取水源に流れ込んだのです。地域住民の高濃度PFOA曝露が判明しており、中には幼い子どもたちも含まれます。
しかし、これらの企業は一向に責任を取りません。それを許しているのが行政です。地方自治体も政府も、互いに対策を押し付け合っています。法整備も進みません。
大手メディアも、企業・行政への追及に及び腰です。企業名を伏せたり、行政の言い分をそのまま報じたり。市民側に立った報道がなされていません。
だったらTansaがやるしかない。その思いで取材を続けてきました。原因企業の内部文書を入手したり、トップらを直撃取材したり、地道な取材を積み重ねました。Tansaの追及に、ダイキンは「自社が汚染源の一つであることは間違いない」と初めて認めました。地元議会や国会はTansaの記事をもとに、PFOA汚染への対応について審議してきました。
2025年、被害を受けた住民たちが、立ち上がりつつあります。被害を可視化するデータを自前で作り、原因企業への提訴の準備を進めています。
Tansaが本シリーズを続ける理由は、PFOA公害を食い止め、現在の被害者を救うことです。そして、将来の被害も防がねばなりません。昭和に起きた凄惨な公害の歴史をなぞるように起きる「令和の公害」を、見逃すことはできません。
今後も続く長期にわたる取材のためのサポートを、どうかお願いいたします。
Story
【Tansaについて】
◉探査報道に特化した、非営利・独立メディアです
Tansaは「風穴をあけるニュース」を届ける報道機関です。日の当たりにくい問題に目を向け、手間ひまをかけた「探査報道」で真実を明らかにします。
当局発表を右から左に流す「記者クラブ報道」とは違い、暴露しなければ永遠に伏せられる事実を、独自取材で丁寧に掘り起こします。
問題の構造に切り込み、犠牲者や被害者の置かれている状況を変え、将来の被害を防ぐのが探査報道の目的だからです。
◉Tansaは、国際ニューズルームです
ジャーナリズムのグローバルスタンダードである、世界規模での連携を重視します。探査報道が挑む国家権力や企業は、すでに国境を越えて広く活動しているからです。
Tansaは2017年、探査ジャーナリズム組織でつくる国際的アソシエーション「探査ジャーナリズム世界ネットワーク(GIJN)」(2025年5月現在、95カ国251組織が加盟)に国内で初めて加盟しました。現在も、国内唯一の報道機関です。
2024年5月には、同月発足したアジアの探査報道ネットワーク「Asian Dispatch」に初期メンバーとして加盟しました。日本から唯一の参加です。
【シリーズ「公害PFOA」について】
◉報道の成果
本連載は2021年11月にスタートし、これまでに75本の記事を出してきました(2025年5月現在)。ダイキンの内部文書を手に入れ、大量のPFOA敷地外排出の実態を暴いたり、市民ではなくダイキンに寄り添う行政を追及したりしています。また、米国のPFOA汚染を明らかにしたロバート・ビロット弁護士とも協力し、取材を進めてきました。
Tansaの記事が基となり、国会や地方議会でPFOA汚染に関する審議がなされたり、住民がTansaの記事を引用して署名キャンペーンを立ち上げたりしています。少しずつではありますが、50年以上伏せられてきた事実が明らかになり、事態が動きつつあります。
◉報道への評価
- 2022年 一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ「PEPジャーナリズム大賞&課題発見部門賞」
- 2023年 メディア・アンビシャス「2022年メディア・アンビシャス大賞【活字部門】優秀賞」
- 2025年 『終わらないPFOA汚染』 隆祥館書店「2024年下半期ノンフィクション本大賞」入賞
◉記事を読む
- Tansaサイト https://tansajp.org/investigativejournal_category/pfoa/
- 雑誌『週刊金曜日』で連載中
【必要な資金について】
◉なぜ資金が必要なのか
Tansaでは、あらゆる権力から独立した立場を守るために、企業からの広告料を受け付けていません。また、経済状況に関わらず誰でも探査報道にアクセスできる社会をめざし、読者から購読料もとっていません。Tansaの主な収入源は、個人からの寄付と財団などからの助成金です。しかし、それぞれまだ脆弱です。
Tansaは、徹底した取材による事実の発掘が評価され、これまでに「報道の自由推進省賞(日本外国特派員協会)」や「貧困ジャーナリズム大賞(反貧困ネットワーク)」、「ジャーナリズムXアワード大賞(ジャーナリズム支援市民基金)」などを受賞しています。
一方で、Tansaは小さな報道機関です。今回のテーマである、PFOAを製造・使用していた企業や政府・行政が巨象だとすれば、Tansaは小さな蟻です。もし訴訟が起きてTansaが負けてしまうと、賠償金は払えないでしょう。
アリンコがゾウに立ち向かうには、緻密な取材が必要です。何が起きても負けないよう、手間ひまを惜しまず、費用を削らず、決定的な証拠を掴まねばなりません。そのための資金を皆さまにサポートいただきたいです。
◉予算の内訳
本シリーズの取材を進めるにあたり、日々の取材と並行して助成金探しを行ってきました。ところが、テーマに深く関係している経産省や環境省とかかわりのある助成元が多く、さらに大企業を相手にしたプロジェクトのため、申請すらできない助成金ばかりでした。
本問題に関心をもち、取材を応援してくださる市民の皆さまからのサポートを募ります。当面の目標金額は150万円です。(内訳は2024年5月現在)
一人一人の寄付が、事態を動かす報道の力になります。
寄付は1000円から可能です。ご協力をよろしくお願いいたします。