鯨類紹介:イシイルカ
2023/3/23 12:19
「シャチの子どもが打ち上がっています」
という連絡が入ると,まず我々は,イシイルカだろうなぁと思うことが多いです。
シャチみたいな白黒の模様だけど,体長は大人で2m程度,あまりよくは知られていないイルカですが,北海道ではネズミイルカについでよく打ち合がる種類であり,我々にとってはお馴染みのイルカです。
はっきりとした白黒の体色と,ずんぐりとした体つきが特徴のイシイルカは,ネズミイルカ科に属するハクジラ(口の中に歯がある鯨類)です。
日本周辺海域に生息するネズミイルカ科は3種類で,ネズミイルカやスナメリは沿岸性が強く,どちらというとかわいらしい(書き手の独断)印象のあるイルカです。しかしイシイルカは,ネズミイルカ科の中で珍しく沖合性であり,全体的にガチっとした(書き手の独断その2)イルカです。このガチっとした体は,高速で泳ぐこと,深い場所に潜水して摂餌することを可能にしています。洋上でも高速遊泳の際に立つ波しぶき(ルースターテイル)をきっかけに発見することが多いです。大きな群で見ることが多いので,イシイルカを発見した後は,目をつぶっても瞼の裏にイシイルカの立てる水しぶきが見えるくらいです。
イシイルカたちは,あまりに高速に泳ぐことができるため,飼育が難しく,世界的にも水族館での飼育例が極めて少ないイルカです。
日本では小型捕鯨の捕獲対象種であるため,昔から多くのデータが積み上げられてきました。集団遺伝であったり,食性であったり,繁殖期であったり,イシイルカの知見は多岐に渡ります。
ストランディング個体から研究することはないのでは?と思われるかもしれませんが,そんなことはありません。
・捕獲個体の研究結果とストランディング個体の研究結果は異なるのか?
・死因は何だったのか?
・捕獲しない時期,捕獲できない海域ではどのような暮らしはしているのか?
など,イシイルカのストランディング個体から分かることはたくさんあります。
北海道では,数年に一度,イシイルカの漂着例がぐっと増える年があります。この事象の原因は今のところ我々が抱えている大きな謎の一つです。
今後調査を積み重ねることで,何か分かるといいなと,イシイルカ好きの書き手(松田)は思っています。
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