研究紹介:ネズミイルカの亜種
2023/3/15 12:47
今回はSNHの活動によって得られた標本を用いた,ネズミイルカ(学名はPhocoena phocoenaです)の「亜種」についての研究を紹介します。
「種」ほどの違いはありませんが,形態や遺伝系統が地域間などで異なる―――そんな「亜種」がネズミイルカにも認められています。
・大西洋沿岸域に生息するP. p. phocoena
・黒海やアゾフ海の沿岸域に生息するP. p. relicta
・太平洋沿岸域に生息するP. p. vomeria
の3亜種です。
北海道周辺の沿岸域に生息するネズミイルカは現在のところ,P. p. vomeriaとされています。しかし以前より多分野においてP. p. vomeriaとの差異が研究されており,北海道周辺の沿岸域に生息するネズミイルカはP. p. vomeriaと様々な点において異なる集団であることが明らかにされてきました。
一方で,北海道周辺の沿岸域に生息するネズミイルカがP. p. vomeriaとどの程度異なる集団なのかを体系的に示した論文は無いため,集団を分けるための基礎情報が不足し,他亜種と比較してまだまだ研究すべきことが多く残されています。
現在,SNHの活動により得られた標本を活用し,北海道周辺海域のネズミイルカとP. p. vomeriaの違いを体系的に示し,今後の研究や将来の保全へ基礎情報を提供しようとする研究が進められています。
しかし先日の活動報告でもお伝えしたように,北海道中に打ちあがるネズミイルカの標本を多くの数集めることは,調査員の負担が大きい現状の体制では困難を極めます。
https://syncable.biz/campaign/4261/report/7009
調査効率が向上し,十分な標本・データがそろった暁には,「新亜種」が発表されるかも…?
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