出会い…
2021/2/22 11:07
2016年の11月28日
センターの職員さんや業者さんを咬んでしまったことで、殺処分が決まっていた「トキ」の引き出し交渉で降り立った岡山空港。
NPO法人しあわせの種たちの濱田さんが車で迎えにきてくれていた。
数日前に、檻越しに牙を剥いて唸るシバイヌの動画が送られてきて、
「この子どう思いますか?」と聞かれていた。
「怖いんですよ、人や手が」
その行動が“怖いよ、それ以上近寄らないで“という犬に生まれつき備わっている非音声言語(カーミングシングナル)であることは容易にわかった。
「どうにかなるかなぁ」
「安全だとわかれば」
そんなやりとりをしていたので、車にのるやいなや、
「あの子どうなりましたか?」と尋ねた。
「あの子なぁ、もう、おらんと思う。なんともしてやれんやったわ。一生後悔背負って、もう2度とどんな子もこんな目に合わない世の中にせんと、、」
絶望の淵に立たされそんな決意を語りながら、岡山県愛護センターを目指していた。
センターの犬舎に入って1番に目に飛び込んできたのは、まだ若そうなあの動画のシバイヌだった。
「濱田さん、この子いるよ」
「ほんまや、よかったぁー、おったんか」
絶望が希望に変わった瞬間だった。
私はその日、その子が収容されている冷たい檻の前で、ただ、ただ、なんてことのない時間を過ごしていた。
牙を剥いて、唸っていたその子は、そのうち私の前で伏せをし、グルーミングし始め、まだ緊張はあるものの、どうやら危険人物認定は解除されたようだった。
「人が近づいても、そんな顔せず、尻尾振ってかわいいお顔をしてね。そしたら広ーい野原を思いっきり走れるからね」
そんな言葉をかけ、この子がたくさんの人に愛されるように、愛ちゃんと名付けた。
「濱田さん、この子大丈夫ですよ、愛ちゃんて名前にしました」
その日からその子を生かすために、みんなが動きだした。
そして、それから半月も立たず愛ちゃんは「シャバの空気」を堪能することになった。
私は愛ちゃんの犬生に関わっていきたいと思い、この子に人と暮らすための教育を提供するためスポンサーとなった。
そして、それから半年後、、、
訓練競技会デビューした愛ちゃんは、競技中にスルッと網をくぐり脱走。
競技会会場の広ーい野原を思いっきり走って、他の競技会場に乱入したり、、それはもう、みんな冷や汗が…
誰が呼んでも、逃げ回って、自由を思いっきり楽しんでいた愛ちゃん。
私は手に持っていたビデオカメラやバッグを投げ捨て
「あいちゃーーーん!」と叫んだ。
その時、愛ちゃんは私をめがけて一直線にむかってきた。
そして、満面の笑みで私の胸に飛び込んできた愛ちゃんをしっかり受け止めた。
そんな愛ちゃんが泣けてくるほど、可愛らしくて 可愛らしくて
この子の一生をずっと守っていこうと 強く 強く 思ったのでした。
警察犬審査会のための訓練を受け、そして今、愛ちゃんは新天地で探偵犬になるべく勉強中。
愛ちゃんに出会うきっかけとなった殺処分寸前だったトキは3年のトレーニングを終え、今、安住の地を得ました。
私はこの4年で5頭のスポンサーとなり、この子たちが人と幸せに暮らすためのお手伝いをしてきました。
送り出すときは、ちょっぴり寂しさはありますが、里親さんの元で幸せいっぱいの顔をみると、何にも代え難い、とびっきりの喜びを感じます。
皆さまにもぜひ、この喜びを感じてほしいと心から願います。
愛ちゃんスポンサー:株式会社ギフトタンク今里ぢん
https://gift-tank.com/btapp/support/
☆☆☆
2016年11月、一匹の柴犬が岡山県の動物愛護センターに収容されました。
人に怯え、歯をむき出しに威嚇し、噛み付くため、譲渡ができないと判断され殺処分が決定されてしまいました。
「この犬はダメだよ。処分になると思うよ。」職員さんの言葉に私は息をのみました。柴犬って、こんな子普通にいるよね?そう思いながらも手を伸ばすと噛みつかんばかりに威嚇してきました。でも、何度か通う内、その柴犬のなんとも不安そうな悲しそうな表情を見ました。決して狂暴なんかじゃない!そう確信しました。
しかし、その頃はNPOを立ち上げたばかりで預かりボランティアも少なく、預かり枠も足らない。また、資金力も全くなく、私にはその柴犬を引出し保護することが出来かねていました。
暫くして、当会の里親様でもあり咬み犬の訓練費のサポートをして下さっている東京の今里さんが岡山に他の咬み犬の引出しに同行するために来て下さいました。今里さんは犬舎の前に座り込みずっと愛ちゃんとお話をしていました。
「濱田さん、この子は大丈夫よ!愛ちゃんって名前にしました!私がスポンサーになって愛ちゃんにかかる費用はみてあげる!訓練をさせてやってほしい。愛ちゃんのように誤解されたまま殺されている子が全国に沢山いる。その子たちの灯となって未来への道しるべになってほしい!私は現場で活動してくれている濱田さんたちのようにはできないけど、少しでも支援することで助けることができるなら訓練費の支援をするから!」そう仰って下さいました。
今里さんとの出会いはブラッキーという犬を譲渡したことでした。ブラッキーは違う方へ一旦は譲渡されたのですが、あちらの事情により返されてしまった過去を持つ子です。今から思えば、まるで今里さんという家族をブラッキーの方が選んでいたんだと思うように自然に今里さんの家族となり幸せに暮らしています。
今里さんとの出会いは私たちにとっても咬み犬にとっても大きなものでした。もしかしたら、私たちだけでは助けることができなかったかもしれない咬み犬たちを助けていけたのは、今里さんのような犬たちのスポンサーとなって下さる方がいたからなんです。今里さんには本当に感謝しています。
さて、愛ちゃんですが…一旦、殺処分決定となってしまったら引き出すことさえ難しい。
「この子が本当に狂暴なのかどうか確かめさせてほしい!もう少しだけ時間を下さい!」私はその当時のセンター所長に何度も頭を下げて頼みました。「毎日、ちょっとの時間でも毎日通わせて下さい。それでもどうにもならなければ諦めますから。」と。
次の金曜日が処分予定だと言いながらも…所長は「分かった!1週間だけな。その時に判断しよう。」と許可を出して下さいました。
1週間…一体、何ができるだろう…そう思いながらも毎日通って犬舎の中に入りました。所長は「濱田さんが危険な目にあったらいけないから僕も付き合うわ(笑)」そう言って、毎日犬舎の傍にいてくれました。
きっと、所長も本当は助けたかったんですよね!私は凄く嬉しかったです。
さて、犬舎に入って最初は傍で座っているだけ、掌にオヤツを置いてみる。私の匂いを嗅ぎながら回っては少しづつ掌のオヤツを警戒しながら食べにくる。次の日、オヤツを手に握って出してみる。鼻で掌を開けと突いてくる。少し開いて、その瞬間鼻を撫でる。何度か警戒して威嚇するものの掌からオヤツを食べてくれるようになりました。3日め、私が行ったら喜んでくれるようになりました。で、リードを付けてみるとまたガルガル…でも、5日目にはリードを付けてお散歩に行くことができました。その間、一度だけ手に噛みついてきましたが、本気咬みではなかった。
私を試している…そんなふうに思いました。それからは歯をむき出そうが怖くはなくなり、愛ちゃんと向き合うことができたと思います。
それから何頭も何頭も咬み犬といわれる殺処分決定の犬たちをレスキューしてきましたが、どの子も殺されて仕方ない理由なんてありませんでした。
訓練の必要性はもちろんですが、結局は愛されることで犬たちは変わってきます。どの子もみんな、愛されたいのです。
生きて、笑って、幸せを感じたい命たち。それはどの子も変わりないんだと思います。
どの命も一つしかない尊い命…これからも笑顔の花を咲かせられるように頑張ってまいります。
もし、私たちの活動にご賛同いただけるなら是非、「種っこ応援団」として殺処分対象となっていた犬たちの未来への道をつくっていくためにサポートして下されば本当に嬉しいです。
理事長 濱田一江
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