Issues we are working on
平成23年3月1日、障がいのある子どものデイサービス「フレンドリー」を松山市で開所した。初めて来てくれたのは3歳の女の子。嬉しくて今でも覚えています。ピンポーンと呼び鈴が鳴り、玄関先に立つ両親に駆け寄りふっと目を落とすと、母親の腕の中に抱かれた黒目がちの瞳は宙をぼんやりと見つめていた。ローラー滑り台の公園までよちよち歩き、ぎこちなく鉛筆を握ってひらがなを書き、ビート版をぎゅっと胸に抱えてキャッキャッと泳ぎ、そして一人で帰ると言ってバスの練習を頑張った。一人一人と大切に関わり、今は高校二年生。様々な子どもたちと出会い大切に関わってきた。この経験が、現在の活動の大切な糧となっている。
Friendlyという言葉が好きで、「フレンドリー」という事業所名をつけた。Friendlyには友好的という意味の他に、「やさしい」という意味も含まれる。User-friendly computer (ユーザーにやさしい:使いやすいコンピューター)、Environment-friendly Society(環境にやさしい社会)など。しかし裏返すとそれだけ生きづらい社会にもなているのかとも感じる。今、私たちは地域にやさしい、Community-FriendlyなNPOを目指している。現在の地域社会には多様な人たちが暮らし、さらに個別化が進んでいる。一人でも生きていける環境・制度が整う一方、孤独・さみしさなどの精神的な不自由さが募る社会にもなっている気がする。地域が急速に多様化していくにもかかわらず、社会構造や慣習はなかなか変わらず、本流から外れてしまう人たちもまた多様化し、地域に点在して暮らしている。私たちがこのような多様な人たちへの支えであるためには、多様なニーズに立ち向かい、幅広い経験や知識を併せ持ちながら成長していく必要がある。そしてSDGsのLeave no one behind「誰一人取り残さない」、その一人に必要な団体でありたいと思う。
Why we are tackling this issue
以下の活動を行っている。
【国内活動】
①障がいのある子どものためのデイサービス「フレンドリー」の運営
②外国人のためのソーシャルワークサービス/外国ルーツの子どもの学習サポートの実施
③子ども食堂「みんなでCooking」の開催
④生きづらい若者が学び直しできる「夜間教室」の運営
⑤国際理解教育:学校訪問や国際交流イベント
一つの領域に特化していくのではななく、多領域に関わっていくことで対人支援全般を担い、地域の問題解決を目指している。例えば、増加する外国人の家族に障がいのある子どもがいる、デイサービスで得た知見を家庭支援に生かす、不登校等を経験した夜間教室の生徒から今の子ども達の支援を考えていく、フィリピンの活動を学校の授業に生かしていくなど、複合的な課題感をもって地域活動を実践している。
【海外活動】
⑥フィリピンに子ども食堂を広げようプロジェクトの実施
現在フィリピン共和国モンタルバン市において、障がい児の親の会「サマバカモ」と一緒に給食提供の活動を土曜日に実施しています。障がいのある子どもだけでなく、コロナ禍による失業とインフレ下での物価高で食料を思うように購入できない地域の家族と子どもたちがたくさんおり、予想以上に栄養不足の子どもたちは多く、土曜日を楽しみにしてくれています。サマバカモのメンバーや障がいのある子ども・青年、そしてボランティアさんの協力も得ながら楽しく明るく食事の準備をしてくれています。障がいがあるため外出できない子どもにはお弁当を配達する活動もしています。おおよそ1年間継続し、今年度は今井記念海外協力基金様の助成を受けて、”フィリピンに「子ども食堂」を広げようプロジェクト”として再出発しました。日本の子ども食堂のように広がって行けばいいなと思います。食事だけでなく、学校にも通うことが難しい子どもには学習活動も行いながら、子どもたちの育ちを支えています
How donations are used
NPO法人Community Lifeの活動に使用させていただきます。資金的に特に不足している活動は、フィリピンの活動です。できるだけ多くの子どもたちへの食事提供ができればと思っています。
【子どもたちに温かい食事と学ぶ機会を】
ある土曜日の朝早く、まだ食事の準備も取り掛かっていない時間に小さな男の子が来た。どうもお腹が空いているらしい。昨晩からあまり食べておらず、たまたま早めに来ていたボランティア(障がいのあるお兄さん)が近くのショップでパンを買ってあげたようだ。これは例外でない。この地域は貧しい家庭が多い。ある家庭では両親と4人の子どもが暮らし、父親は日雇いの大工で仕事は不定期、1日働いて1000円にも満たない。学校に行くためにはバイクタクシー代、学用品代などお金がかかる。それほど大きな額ではないが、彼らにとっては大きな額なのである。その為学校には行けない状態が続き、知らず知らず日々過ごしているうちに教育格差が生まれてきている。食事の前に学習活動も始めた。字を知らない、数が分からない。それでも成長していく、大人になる。学ぶことはこれから未来に進んでいくために必要なものであり、そして「決して盗まれることのない無形の財産である。」これは私たちの給食プログラムに参加している女の子の家を訪問した際におじいさんが言った言葉である。彼女に両親はおらず、おじいさんが育てている。家の外観だけで彼女の境遇が分かる。しかし暗さは感じない、笑顔がかわいい。おじいさんの収入は不定期だが学校には頑張って通わせている。その他幼い弟妹もいる。私たちの給食プログラムに本当に助けられているとも言ってくれた。
これまで約2年間給食プログラムを実施してきた。子ども一人一人に違うバックグラウンドがある。それは当たり前であるが何故か見過ごされ、無意識に一括りにしている。「栄養不足の子ども」一人一人には愛情深い家族がいて、やってみたいこと、憧れる職業、楽しい思い出、つらい経験がある。どんな日常を送っているのか、そしてどんな未来が待っているのか。一人一人に思いを馳せ、楽しみにしている子どもが今の原動力となっている。子ども支援に関する国際協力の活動は多岐に渡る。家族や地域の自助努力を促していくものや、私たちのような子どもに直接支援していくものなどがある。家族が子どもを適切に育てられるようにサポートしていくには地道な支援と一定の期間は必要で、2-3年はかかってしまう場合もあり、そしてどうしても不確実性が付きまとう。大人にとってはたった2-3年に、子どもは1年生から3年生になる。子どもの成長スピードは早く、大人の時間はあっという間に過ぎる。一食一食ではあるが、子ども達の育ちに確実に役立ち、それを直接子どもたちに提供できる給食プログラムは最良の子ども支援だと感じている。