ストーリー
【10/1 0:30更新】
本ページ上では約86万円と表示されていますが、当団体への直接寄付など、Syncable外での寄付も合わせ、9月12日に目標を大幅に上回る形で達成いたしました!!
100名以上の方々からご支援をいただきましたことを厚く御礼申し上げます。
なお、本プロジェクトへのご支援は当団体の寄付受付ページhttps://ftcj.org/donateで引き続き承っております。引き続き宜しくお願いいたします。
ページをご覧いただきありがとうございます。
認定NPO法人フリー・ザ・チルドレン・ジャパン(以下、FTCJ)
https://ftcj.org/freethechildrenprogram/area/philippines/spd
フィリピン障害者支援事業チームメンバーの石田由香理です。
私は1歳3か月の時から全盲で、高校まで盲学校に通いました。盲学校で点字の読み書きを含む教育を受け、自立のための生活スキルを学んだ結果、海外の大学院を卒業。今は一人暮らしをしながら働いています。
【コロナ禍で仕事・収入を失ったフィリピンの視覚障害者】
新型コロナウイルスは、フィリピンでも大流行し、感染拡大が続いています。そこで、フィリピンではソーシャル・ディスタンスを保つことが政策として発表されています。その結果、患者さんに触れながら行うマッサージ産業は、廃業に追い込まれました。
それでなくても障害者が仕事に就くことが困難な国において、マッサージ産業は視覚障害者が唯一収入を得られる方法でした。それが不可能となった今、6000人以上が職を失い、家賃が払えないので治療院も手放し、物乞いをしながら飢えと闘っているマッサージ師の視覚障害者が多くいることがわかりました。ロックダウンが開始されて半年、彼らの貯金は底をついています。
【なぜ全盲の私が途上国支援を始めたのか】
大学1年生の終わりに、現在私が所属しているFTCJが実施する、フィリピンのスタディーツアーに参加しました。
https://ftcj.org/we-movement/changemaker/studytour
そこで出会ったのは、路上で暮らす子どもたちや、貧困を理由とする性産業・虐待から救出された子どもたちでした。
ツアー中、最も印象的だった言葉があります。
「君は目が見えないのに、英語もしゃべることができるし、こうしてフィリピンに来ることができる。フィリピンではまだまだ障害者は何もできない存在だと思われている。フィリピンで教育に関わる仕事をしている者として、僕は君のバックグラウンドにものすごく興味がある。」
この時から私自身もフィリピンの障害者事情に関心を持つようになり、この国ならば、私だからこそできることがあるのではないかと思いました。
【フィリピンの視覚障害者事情】
フィリピンには、確認されているだけでも135万人の視覚障害者がいます(2015年発表)。出生届が出されていない人や、確認が取れない紛争地に暮らす人を含めると、その人数は200万人近いと言われており、それは同国のストリートチルドレン数の8倍に当たります。
その中で、就職できているのはわずか7000人ほど、その90%以上がマッサージセラピストとして働いていました。
【フィリピン政府の厳格なロックダウン】
新型コロナウイルス感染拡大を受けて、フィリピンでは3月12日よりロックダウンが始まり、現在でも地域を跨いでの移動には許可が必要です。また、ソーシャル・ディスタンスを保つことが政策として提示され、一人で出歩くことができない障害者や高齢者は外出しないようにとも言われています。
このような状況により、マッサージセラピストは働きに出ることができなくなり、半年たった今では貯金も底をつき、周囲からお金を借りたり、物乞いをしたりしてなんとか日々の生活を繋いでいます。
【仲間達からの切実なヘルプ】
フィリピンに2年暮らしていた私のところには、最近毎日のように「来月からの電気代が払えない、どうか援助してもらえないか」、「もう今月で貯金がなくなってしまう、5万円でいいから送ってくれないか」などと、視覚障害仲間からメッセージが来ます。
その中には、大学院まで卒業していてフィリピン盲人連合の元会長だった人、マッサージ治療院の開業に成功して20人以上のセラピストを雇っていた人などもいます。
立場あり、尊敬する先輩方が、娘ほど年の離れた私に資金援助のお願いをしなければならない…。彼らにだってプライドがあるでしょうし、心情を察すると胸が痛みます。
私自身、できる限りそんな仲間の力になろうと、ノートパソコン購入の費用を送るなどもしました。しかし、収束時期が見えないこの状況下で、単に資金援助を続けていても、それじゃ何も変わらない、もっと根本的に、彼らがマッサージ以外の新たな職に就いて生活を立て直せるような活動をしないと、本当の意味で仲間を助けていることにはならないと感じました。
【パートナー団体(1):フィリピン盲人連合】
職を失った視覚障害者たちへの就労支援プロジェクト、これを実現するためにパートナーを組んだのが「フィリピン盲人連合」です。(リンク先英語)
https://www.facebook.com/philippineblindunion/
視覚障害者の権利を守るため、1997年に設立された連合で、現在72の視覚障害者団体が加盟しています。会長はブッチ・ロブレドさん、現在のロブレド副大統領の義理のお兄さんに当たる全盲男性です。
(2020年9月3日12:29追記)
会長のブッチさんからのメッセージを活動報告に投稿致しました。
https://syncable.biz/campaign/1218/reports/1621
(2020年9月7日13:00追記)
理事長のチンさんからのメッセージを活動報告に投稿致しました。
https://syncable.biz/campaign/1218/reports/1639
フィリピン盲人連合の理事たちと相談し、元マッサージ・セラピストたちが、物を販売したりインターネットを利用してオンライン英語講師や文字起こしの仕事に就いたりするために、パソコンと経営スキルの研修を実施しようということになりました。
【パートナー団体(2):視覚障害者ITセンター】
そこで、第2のパートナーとして協力してもらうことになったのが、視覚障害者ITセンター(ATRIEV)です。(リンク先英語)
https://atriev.org/
コンピュータ等テクノロジー技術指導を通した視覚障害者の就労、社会参加を支援している団体で、これまでにシステムエンジニアとして就職するための研修や、視覚障害教員向けのパソコン講習等を行っていました。
2020年6月以降は、コロナ禍で職を失った、35歳未満のマッサージ・セラピストへの起業に必要なパソコンスキル研修を実施しています。
ただし、ATRIEVの既存の助成団体は35歳未満のみを対象としているため、子育て世代の就労支援まで受講者を拡大できずにいました。
【パートナー団体とFTCJとの協働】
そこで私たちフリー・ザ・チルドレン・ジャパン(FTCJ)、フィリピン盲人連合、ATRIEVとの共同プロジェクトでは、これまで就労支援の対象とならなかった、35歳以上の視覚障害者向けに、パソコンと経営スキルの研修を行い、さらに就労者が起業したり就職するまでのサポートを行います。
受講者100人の選考はフィリピン盲人連合に委託し、研修講師はATRIEVの既存講師にお願いしています。
【誰でも希望を持って生きることができ、「共に生きる社会」を目指したい】
私は1歳3カ月で失明してから、高校卒業まで盲学校に通いました。点字の教科書に沿って毎日授業があるのはあたりまえで、時には全国模試などを通して学習の到達度を知ることもできました。
そのような状況下でさえ、高校3年の夏休み、母親は私に向かってこう言いました。
「あんたは目が見えんのやから、どうせろくな就職先無いんやから、高い金使っていい大学行っていったい何になる。会社は一流大学を出た全盲より、名も無い大学出でいいから弱視のほうを採用するんや。お前が思ってる以上に障害者って邪魔なんや」
それまで18年近く私を育ててきた親が、私の可能性を信じてはいなかったこと、私の未来を、そして存在を否定された経験は、13年たった今でも忘れることはできません。
幸い、私自身は周囲の助けのおかげで大学院までを終え、無事就職しています。コロナ禍でも、安定した収入を得られています。でも何かが違えば、失職し飢えに苦しむのは自分だったかもしれない、そう感じます。
人は生まれる国や家を選ぶことはできません。それなのに、同じ視覚障害者なのに、生まれた国によって得られるチャンスに差がある現状を、他人事だからと見過ごすことができるでしょうか。
日本にいる私たちの今の生活も、障害者の権利を主張し、行動範囲を広げようとした多くの先輩方の苦労の上に成り立っています。先輩方が作り上げてきた居心地のいい環境に甘えるだけでなく、今の時代を生きる私たちは、その歩みを周辺国へ伝えていくべきだと思うのです。
私たちは、フィリピン盲人連合やATRIEVの講師たちと一緒に、視覚障害者の就職先を広げ、社会参加の機会を拡大していきたいと考えています。
マッサージだけじゃない、視覚障害者が力を発揮できる仕事は他にもある、先が見えない状況下で、家族を支える存在にだってなりうる。共生社会は支えあう社会、私たち障害者だって、いつもいつも助けられてばかりが、居心地がいいわけではないのです。
社会の役に立ちたい、大切な人を守りたい、自分がここに生きてていいんだと思いたい。そのためには、知識の習得が、技術を身に着けることが必要です。
どうか私たちの挑戦に、ご支援をいただけないでしょうか?
ご協力をどうぞよろしくお願いいたします。
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