私たちの取り組む課題
現在、日本国内では核家族化の進行や地域コミュニティの希薄化、経済格差の拡大により、子どもや若者を取り巻く環境は複雑に変化しています。不登校、発達上の特性や障害、貧困、孤立といった課題はそれぞれ単独ではなく複雑に絡み合い、様々な問題が生じています。
急増する「不登校」と安全なサードプレイスの不足
文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、全国の小・中学校における不登校児童生徒数は35万3,000人以上となり、10年以上連続で増加・過去最多を更新しました。特に、中学生では約15人に1人が不登校状態にあります。 さらに、一度不登校になると翌年度も継続する割合(不登校継続率)は小・中学生ともに7割以上に上り、長期化・固定化の傾向が顕著です。
学校という日中の主たる生活基盤になじめなかった際、地域の中に代わりとなる受け皿(サードプレイス)がないため、多くの子どもたちが「学び」や「多様な人との交流機会」を中断せざるを得ません。学校以外の選択肢や社会との接点が乏しいことが、不登校の長期化や自己否定感を深める大きな要因となっています。
「多様な発達」に対するサポート体制の不足
文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査(令和4年)」によると、学習面や行動面で著しい困難を示す児童生徒の割合は、小中学校の通常学級で8.8%(約11人に1人)に上ります。 しかし同調査では、特別な支援が必要な状況でありながら、校内委員会等で適切な支援対象として把握されていない児童生徒が約70.6%に達していることが示されています。
一斉指導を中心とする既存の学校環境の中では、個々の特性やグラデーションに応じたきめ細かな対応が難しく、周囲の理解不足や過度な集団適応のプレッシャーから二次障害(自己肯定感の低下や不登校)へ追い込まれるケースも一定程度あります。多様な特性を持つ子どもたちが、自分のペースで安心して過ごせる個別のサポート体制や柔軟な受け皿が圧倒的に不足しています。
子ども・若者の「深刻な孤独・孤立」
こども家庭庁「こども・若者総合調査」等の孤独・孤立対策に関する実態調査によると、日常の中で不安や悩みを抱えた際に「頼れる大人がいない」「どこにも相談できない」と感じている子ども・若者は約1割に上ります。 さらに、児童生徒の自殺者数は年間400名以上(令和6年度:413人)という傾向が続いており、子ども期・若者期の孤立は、不登校にとどまらず、将来的な社会的ひきこもりや精神的不調につながるリスクが高いため、早期のゆるやかな繋がりや「SOSを発信できる関係性」の構築が不可欠です。
見えにくい「子どもの貧困」と「体験の格差」
日本では「貧困」というと発展途上国を想像してしまうこともありますが、厚生労働省「令和4年 国民生活基礎調査」によると、日本の子どもの貧困率は11.5%(約9人に1人)、ひとり親世帯では44.5%(およそ2世帯に1世帯)が経済的困窮状態にあります。 貧困は単なる経済面にとどまらず、学習機会の制限、食育・栄養の偏り、課外活動や体験機会の不足(体験の貧困)を生み出しています。民間調査(公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン「子どもの体験格差実態調査」)では、世帯年収300万円未満の家庭の小学生は24.8%)が年間を通じてスポーツや旅行、地域行事などの体験活動に1度も参加できておらず、年収600万円以上の世帯の2.8倍の格差が開いている実態が明らかになっています。
なぜこの課題に取り組むか
私たちが子ども・若者を取り巻く社会課題に正面から挑み、地域全体で支え合う「多層的かつ包摂的なコミュニティ」を構築する背景には、主に以下の4つの強い思いとアプローチがあります。
問題が深刻化する「手前」でも手を差し伸べるために
子どもたちが完全に孤立してしまう前段階の「小さな生きづらさ」や「孤立の予兆」を見逃さず、日常の中でケアすることが何よりも重要です。私たちは、子どもたちがいつでも気軽に立ち寄れる「サードプレイス(第3の居場所)」を地域の中に創り出し、日常の何気ない会話や温かい食事のひとときを通じて、早い段階から緩やかに繋がれるセーフティネットを形にしたいと考えています。
「斜めの関係」と多様な大人との出会いによる自己肯定感の向上
家庭や学校という「縦の関係」の中で息苦しさやプレッシャーを感じている子どもたちにとって、利害関係のない地域の人々やボランティア、多様な大人たちとの「斜めの関係」は大きな救いとなります。地域のつながり希薄化によって失われてしまったこの「斜めの関係」を取り戻し、家族や教師でもない、地域のフラットな大人たちが「ありのままのあなたでいいんだよ」と丸ごと受け入れてくれる経験を通じて、子どもたちの失われかけた自己肯定感を育み、失敗を恐れずに自らの意志で未来への一歩を踏み出すための確かな原動力を生み出す後押しをします。
レッテルを貼らない「すべての人」を対象としたインクルーシブな場
支援を必要とする特定の子どもや世帯だけを切り出して支援することは、時に「特別扱い」というスティグマ(レッテル貼り)を生み、かえって当事者が利用しづらい心理的障壁を作ってしまいます。だからこそ私たちの活動は、困窮世帯や特定のお子さんだけに限定せず、「地域で暮らすすべての子ども・若者とその家族、そして地域住民」を対象としています。誰もがウェルカムなオープンな空間とすることで、偏見のない真の包摂(インクルーシブ)を実現します。
子どもの健やかな育ちが、地域全体の活力を生み出す
子どもや若者を育てることは、未来への投資であると同時に、現在の地域社会を元気づける強力なエンジンです。居場所づくりや多世代間交流を通じて、子ども、若者、子育て世代、高齢者、企業や地域住民が混ざり合い、支え合う関係性が生まれます。これにより、地域全体のつながりが強まり、誰もが孤立しない温かい地域社会(コミュニティのレジリエンス)が形作られます。私たちは、子どもの健全育成と地域の活性化は表裏一体であり、どちらも同時に実現できると確信してこの活動に取り組んでいます。
支援金の使い道
今後、子ども支援にまつわる多様な事業を安定的・継続的に運営するための事業費、より多くの子ども達を後押しするための組織の基盤維持費、そして、将来的に開設を目指す常設の居場所拠点の開設準備費に充てさせていただきます。

