私たちの取り組む課題
はじめに。世の中には自己責任という言葉があります。「自分で決めたことに対しては自分が責任を負うべき。」社会では当たり前とされる考え方です。実は私たちの取り組む「不登校・高校中退」という課題の解決は、この当たり前すぎて気付かない「自己責任論」というメガネを外すことから始まります。
我が事において後悔せず。とは言いますが、そもそも人生経験がまだ少ない若者たちがそこまで物事を達観できるでしょうか。不登校や高校中退も、思春期のしがらみのなかで戸惑い、迷い、苦しんだうえで、正解がわからないままにそうなった場合がほとんどなのです。
学校に通う若者たちは世界の広さを知ることなく、閉鎖的環境のなか長い時間を過ごします。彼らにとって家と学校は世界の全てであり、周りから見れば「些細なトラブルにすぎない」にすぎないことに対しても、真剣に傷つき、悩みます。そうして実際に学校へ行けなくなる人もいれば、誰にも相談できず生きるか死ぬかのストレスを抱え通学し続ける人もいます。
また不登校・高校中退は「学校へ行きたくない・行きたいけど行けない・学校が好きでも嫌いでもない」といった通学意欲の個人差や「家庭・経済・健康・学力・交友」といった状況の個人差が複雑に組み合わさって起こります。「自己責任論」を反省しないかぎり、不登校・高校中退の裏側にある「本人と環境との相互作用」は見えてこないのです。
当事者自身が「自分と環境との相互作用」を意識できるよう働きかけること。その人にとって生きやすい環境を一緒に探すこと。そんな環境を社会のなかに作り上げていくこと。これらが不登校・高校中退という課題を解決するために必要な取り組みなのです。
なぜこの課題に取り組むか
目標や意味を見出せずに学校から孤立した人に向かい「適応できないのが悪い」「学校辞めてどうするの」「じゃあ働けよ」と言い続けても、現状は一切好転しません。今日も一人、またひとりと寄る辺ない若者たちが教室から消え、これからの人生や社会に対する期待を失いかけています。
社会は「学校へ行かないなら自立しろ」という無言の圧力をかける一方で、不登校・高校中退といった経歴は厳しく評価します。彼らは自信を奪われ、不安をあおられ、その視野はどんどんと狭まっていきます。そして次第に、助けの手を差し伸べる人や、理解ある人にさえ、心をひらく余裕や、応える気力を失っていきます。
自己責任論では何も解決しない状況に立たされた彼らも、大人になれば文字通り自己責任のもとに生きていくしかありません。そんな彼らを責めることなく「人との出会い」「自信を養う時間」「社会との接点」といった再起のきっかけをつくり、社会とともに彼らを応援できれば、この世界はよりよく変わっていくはずだと私たちは考えています。
また不登校や高校中退の「原因の追及・予防」にコストを費やしても、いまを生きる当事者たちの状況は改善しません。予防措置も画一的に行ってしまえば「学校の外に出ていれば救われた人」をそこへ縛り続ける原因にもなります。生き方の多様性が急速に広がりつつあるこの時代、なんでもかんでも予防すればよいというものでもありません。
不登校・高校中退に関わる若者たちが、自分らしい生き方を見つけるためのきっかけを作り、応援する。
私たちが掲げるこの理念には「過去に囚われず、今をよりよく」「外へ飛び出し、自分の可能性と出会える世界を」という思いが込められています。この思いを形にするためには、社会の、そそしてその一員である皆さんの理解と応援が必要です。たった一度の不登校・高校中退のために、前途ある若者が希望を失わないために。どうかご支援をよろしくお願いいたします。
寄付金の使い道
いただいた寄付金は以下の目的で使用させていただきます。
① 不登校生・高校中退者向けの個別学習塾「TOB塾」の運営
② 不登校・高校中退で悩みを抱える保護者・当事者のための相談窓口の運営
③ 高校を卒業せず、ひとり親になった人の無料キャリア支援「PACサポート」の運営
④ 不登校や高校中退などを経験した人の就職サポート「TOBIT」の運営
⑤ その他、団体の理念に基づき行われる活動全般