私たちの取り組む課題
コンゴ民主共和国(DRC)国内最大の避難民キャンプが存在する、ここ北キヴ州。当団体、MABADILIKOは2024年4月より、ゴマ市内およびキャンプで生活する妊婦・5歳以下の子供をターゲットとして、治療を提供する活動を行っています。
DRC東部では過去20年、繰り返される内紛により、国内避難民IDP(Internal displaced people)の数は増え続けています。 2023年10月に発表された国際移住機関(IOM)によると、国内避難民の数は690万人と前例のない数字が報告されました。彼らは住みなれた土地・家、生活の糧を失い、キャンプで避難生活を送っています。食料・安全な水・衛生環境が確保できない誰にも過酷な環境の中でも、特に妊婦・子供は脆弱な立場に置かれていることは想像に難くありません。彼らは下痢・栄養失調・マラリアなど、予防可能な疾患により、生命の危機にさらされています。治療可能および予防可能な疾患に対して、早期に介入・治療することで妊婦と5歳未満の子供の死亡率を減らすことができます。
以下に示された、DRCと日本との死亡率の比較統計データは一般的なものですが、この数字がIDPキャンプの中でいかに跳ね上がるか、彼らのその日を生きる苦闘は計り知れません。
- 5歳以下の子供の死亡率(1000人当たり)
DRC:79(7.9%) 日本:2.3(0.023%)
- 新生児死亡率 (1000人当たり)
DRC:66(6.6%) 日本:2(0.02%)
- 妊産婦死亡率(10万件当たり)
DRC:473(0.5%) 日本 2.8(0.003%)
出典:https://data.unicef.org/country/cod/
現在、MABADILIKOは2つのプロジェクトを運営しています。
一つ目は妊婦さんを対象とした、無償エコー健診事業。もう一つはキャンプで生活する慢性疾患(鎌状赤血球症)に罹患した子どもの治療・フォロー事業です。
なぜこの課題に取り組むか
今日、「貧困」の定義は$2.15/日以下で生活する人とされています。コンゴ民主共和国(DRC)国内において、およそ62%(6000万人)もの人々がこの「貧困」の生活水準に置かれています。
長引く内戦による影響は治安の悪化に留まりません。これまで農業・畜産に携わってきた人々は土地・仕事を追われてしまいました。(大部分の戦闘は市内ではなく、郊外や村落部で起こっています。)内紛により、DRCの農業・畜産が一体どれ程の打撃を受けたのか、影響は計り知れません。高騰の一途をたどる食べ物の価格が、更に人々の生活を厳しいものにしています。そして、医療・教育・国家システムの機能不全が人々の生活の安定や経済的自立の妨げとなり、貧困・不平等の更なる悪循環を生み出しています。
毎日何千人もの人々が命を落としていますが、それでもこの災害を克服する可能性はあると確信しています。
自国の問題の解決・変革はその国の国民による自主的な行動と自助努力なしには達成し得ません。しかし一方で、コンゴ民主共和国(DRC)国内で起こっている問題はDRCだけのもので、遠く離れた諸外国には無関係のものなのでしょうか。先進国の関心は十分に向けられて来たでしょうか。
遠く離れた日本においても、DRCで起こっている内紛に起因する様々な問題は対岸の火事であり、どうすることもできない課題なのでしょうか。私たちの毎日の生活に欠かせないスマートフォン・パソコンに使われているレアメタルの産出はDRCが大きなシェアを占めています。近年、各国の企業は不当労働や人権を無視するような経営・反社会勢力には加担せず、フェアトレードのルールを遵守することが企業責任であると自覚しています。にもかかわらず、なぜ今日になってもDRCから輸出(密輸)されるレアメタルの採掘が児童労働の温床になっていたり、武装勢力の資金源であったりという状況が変わることなく続いているのでしょうか。なぜ、全世界のスマホユーザーはその事実から目を背け続けているのでしょうか。2018年、ノーベル平和賞を受賞したムクウェゲ医師が、そのスピーチによって「誰もがDRC国内の紛争と無関係ではいられない」ということを広く周知したことは記憶に新しい出来事です。
現地からの生の情報の発信・現状を広く知らしめる活動も、MABADILIKOの重要な役割の一つだと考えています。しかし、周知することだけが私たちの目標ではありません。解決の方法を皆で探り、皆で行動を起こし、実際に社会にインパクトを与えたい。MABADILIKOの掲げるビジョンは目に見える「change」であり、社会の変革です。
寄付金の使い道
MABADILIKOはメンバーで資金を出し合い、病院の開業・プロジェクトの始動に向けて全力を尽くしました。そして、2024年4月22日に病院をスタートさせることが出来ました。病院の建物の改修工事だけではなく、ベッドやリネン、院内で使用する様々な物品・医療機器・臨床検査用品や薬剤を揃えるのには多額の費用が掛かりました。
2024年、2月にはクラウドファンディングにも挑戦し、たくさんの方々から共感をいただき、お陰様で460万円余りの支援を賜りました。そして、モバイルクリニック実施のための、ランドクルーザーを購入することが出来ました。
現在、MABADILIKOは妊婦さんを対象とした無償エコー健診と、IDP(国内避難民)キャンプで生活する、鎌状赤血球症に罹患する子どもの治療・フォローを行う活動を行っています。
お寄せいただきました寄付金は、それらのプロジェクトに関わる経費に充てさせていただきます。
具体的にな項目は以下の通りです。
・エコー健診時に使用する検査ジェル
・頻発する停電時に、発電機を使用するための燃料
・鎌状赤血球症の治療・フォローのための薬代や検査費用
・国内避難民キャンプ往復のための燃料費
・プロジェクトに携わるスタッフの人件費
プロジェクトを長期的に続けていくためには、皆さまからの継続的な支援が大きな支えとなります。どうぞよろしくお願いいたします。