私たちの取り組む課題
支援の中で出会ったAさんは、住まいをなくし、ホームレス状態でした。
それは、一緒に暮らしていた同性のパートナーから受けたDV(家庭内暴力)が原因でした。DVの相談対応については一昔前より相談先や使える施策も増えていますが、同性のカップル間での問題は、異性間カップルのそれとは違い、まだまだ不十分なのが現状です。Aさんも、受け入れるシェルターや使える施策につながることが出来ていませんでした。
また、同じように路上で出会ったBさんは、所持金が乏しく不安を抱えていました。
就職をきっかけに上京したBさんは、その職場で「BさんがLGBTである」という噂が広まったそうです。
もちろんBさんは不当であることを訴えたのですが、改善されず、結局退職。このことでメンタルも崩されたそうです。
このAさんやBさんのケースのような「家族やパートナーからの暴力」あるいは「セクシュアリティに由来するメンタル不安」などから陥った貧困による「家がなくなった」経験があるというゲイ・バイセクシャル男性の方は、5.2パーセントにものぼります。レズビアン・トランスジェンターでも同じことが起きていると想像されます。
また、社会の中で弱い立場に追いやられやすく、オープンに相談できる社会資源も少ない状況もあり、LGBTであることも含めて悩んでいる方も多いのです。
「仕事につく時に差別されるのでは」という恐れもあり、さまざまなことが重なってしまった結果、不安定な仕事につくこともあります。
主にゲイ・バイセクシャル男性の56.1パーセントが、収入や家計、借金といった「お金」にまつわる悩みやストレスを感じています。
加えて、家族にもなかなか悩みを打ち明けることができない人もいます。
私たちのような相談支援団体につながった時、初めて「悩みを聞いてもらうことができた」とおっしゃる方も少なくありません。
身体やこころのご病気を抱えている方も多く、一方でLGBTであることを前提にアクセスしやすい医療機関も限られています。
精神的な健康を害してしまった場合、セクシュアリティも含めて診察を受けられる場所は重要です。HIVも含む性感染症になった経験をもつ人も多くいます。
路上での現金収入を得る手段として、個別にセックスワークをすることで、病気や暴力の被害に遭うこともあります。
主にゲイ・バイセクシャル男性の22.7パーセントが、今すぐお金が欲しいと思った時の選択肢としてセックスワークをした経験を持っています。
なぜこの課題に取り組むか
さらに、日本で「ホームレス状態」になった場合、行政がつないだ仮の住まい(更生施設や無料低額宿泊所など)に入り、まずはそこで支援を受けることが慣例となっています。
しかし、多くの場合、それらの施設は「個室」ではありません。また、個室であっても、そもそもの住環境が社会復帰のためには適さない施設が多いのが現状です。
どうして「個室」での支援が重要なのでしょうか?
それはゲイ・バイセクシュアル男性やトランスジェンダーの場合、同性から性暴力の被害を受けた人が、さらに同じ性別の人と相部屋になったり、ご本人が望むのとは異なる性別での施設入所を余儀なくされることがままあるからです。
当然ですがこのような状況は、本人の自立に向けての動きに、大きな支障となる場合があります。
お金がないから仕事を選べず、健康を崩しやすい。そのような病気になりやすい状況下では、メンタル面での不安を抱えやすく、適切な相談機関などへ自らつながるアクションを起こしづらい。相談できないからこそ、よい仕事を探すことや社会制度の利用をはじめることができず、お金がない。
「お金がない」・「病気になりやすい」・「相談できない」。
この「負のスパイラル」を断ち切り、安心できる「個室」と「経験のある支援体制」が、ホームレス状態になったLGBT当事者にも必要なのです。
寄付金の使い道
そこで本プロジェクトでは、ホームレス状態になったLGBT当事者が利用できる支援ハウス(個室シェルター)を開設し、複数の団体・個人が協働して支援にあたることで、この問題の解決を目指します。
現在、中野区内に個室一室を借り、そこを「LGBT支援ハウス」として運用。多数の相談支援団体と連携して、支援を必要としている人につながり、ハウスを利用しながらニーズに合った支援を続けています。
LGBTハウスの利用は原則として期間限定とし、私たちの会が掲げる「ハウジングファースト」の理念に基づき、できるだけ早い段階で安定した住まい(通常の賃貸アパート)へ移行をサポート。
それぞれの新たな生活を応援していきます。
いただいたご寄附は、その運営費用に使わせていただきます。