私たちの取り組む課題



育児放棄や虐待を受け、疎外されている子どもたちを、施設の収容という手段ではなく、なるべく地域の中でケニア人自身が守り育てていくこと、そして一人でも多くのケニアの子どもたちが 、自分が大切にされている存在だと自覚しながら自尊感情をもって生きていく大人になる地域社会づくりを目指しています。
社会的に困難な状況に置かれている子どもの中には、加害者として、忌み嫌われている非行少年も含みます。
ケニアの未来では、外国からの支援のみに頼り、すでに路頭に迷った子どもへの衣食住の支援という応急処置をするのではなく、ケニア人自身により、子どもたちの育成が図られるべきと考えています。よって、ケニア人の住民だけでなく、ケニアの行政機関に対しても、人材育成のプロジェクトを多く行ってきました。ケニアの未来を担う子どもたちのための長期的な活動に取り組む担い手の主役はケニア人とケニア社会だと考えています。
設立当初の2015年から、それまでなかった「保護司」の制度をケニアのマチャコス地方に導入し、ケニア人保護司の見守りや働きかけを通じて、ケニアの非行少年が社会の中で更生する礎づくりをしました。その後、ケニアの保護観察局に対して、2020年まで継続的に保護司制度作りの支援を行ってきました。
また、保護観察局だけでなく、特に脆弱な子どもたちに対して福祉的なサポートをするケニア児童局やケニアの地域社会のかなめとなっている行政官事務所(チーフ、アシスタントチーフ)とも協力しています。
そして、子どもの虐待の負の影響やその子どもの将来だけでなく社会全体に及ぼす脅威が広く伝わるよう、ケニアの一般地域住民を対象としたミーティングやトレーニングも実施しています。住民の参加と意思決定を重視し、保護司の選出も住民集会を通じて行っています。
なぜこの課題に取り組むか



ケニアでは近年インフラの整備や活発な民間投資が進む中、その一方で開発の波にのることができない貧困層は多く、特に若年者の失業率は深刻です。根深い貧困問題がある中で、特に人生に目的が持てない子どもや青年が、様々な反社会的活動を行い、それが地域、ひいては国全体の不安定な治安、例えば若者によるテロの実行、学生の過激化などにつながる状況も生まれています。
・孤児・シングルマザーの子どもたち
多くのアフリカの国々と同様、望まない妊娠による多くのシングルマザーがケニアにはいます。早期の性交渉が現実的に起こっていて、10 代での出産も少なくありません。これは、子どもの養育ができない母親が多いことを意味し、育児放棄につながります。
また、貧困というストレスの中、アルコールや麻薬に走る親も多く、子どもを育てるという機能が働かないDysfunctional parentingの家庭が多く見られます。ケニアで支援を必要としている非行性のある子どもたちの多くは、このような家庭環境から出てきています。
・支援の網からこぼれ落ちる非行・虞犯(犯罪を犯すおそれのあること)少年
ケニアでは、国際協力団体などによる多くの民間の施設があり、孤児や、親がなんらかの理由で育てることができなかった子どもを収容しています。比較的低年齢の保護が必要な子どもへの支援は多く見られます。
しかし、非行少年に対する支援は希少です。支援どころか、彼らに与えられるのは、社会からの偏見や差別。ますます大人や社会に対する不信感を強めます。
誰も彼らの将来を気にせず、排除しようとするため、とにかく施設へ送りたいという姿勢がコミュニティの人々にも見られます。
しかし、加害者となった少年のバックグラウンドをよく見ると、彼らは被虐待児であることが多く、子どもとして守られることが全くない状況で、物理的、精神的に苦しんだうえで、児童労働に従事している中での犯罪や雇用主とのトラブルで、非行・触法少年となることが多いのです。
・非行後の立ち直りへの支援の必要性
非行を犯し、更生が望まれる子どもは過ちを指摘してくれる大人との関わりを本当は必要としています。
大きくなっても、反抗期を迎えても、ケニアの成人である18歳までは子どもは子ども。彼らに関心を持ち、気にかけてくれる周囲の地域住民の姿勢や適切な生活指導が不可欠だと考えます。
日本でも近頃、育児放棄(ニグレクト)など児童虐待の問題がよくニュースになっていますが、大人社会のゆがみ、ストレスを一番受けてしまうのは、子どもです。
ケニアも日本も、子どもが社会的に弱い立場に置かれやすいという点では同じです。
ケニアでは、社会的弱者であるがゆえに、過ちを犯してしまった子どもたちを見守り、育て、セカンドチャンスを作る地域社会を作りたい。また、そのような子どもがなるべく出てこないように、ケニアで深刻化している早期妊娠の予防や育児支援の取り組みも目指しています。
寄付金の使い道


皆さまからのご寄付は、地域社会の中での子どもの保護、青少年の非行からの更生と社会復帰の促進、子どもの虐待防止に係る活動に使わせていただきます。
地域の中へ出向くアウト・リーチの活動のための移動や通信、研修の資料を作成する経費等、そして日本の事務局の経費に使わせていただきます。
また、ケニアの児童官事務所や保護観察所が対応している社会的に最も困難な立場にある子どもたちに奨学金や職業訓練支援も行っていますので、そちらにも使わせていただきます。