私たちの取り組む課題
「ずっと日本で暮らしたい。でも、なんだか学校に行きにくいよ」
今、日本で急増する “外国につながる子どもたち”。
日本では、少子高齢化が進む一方、海外から移り住み子育てをする家族が急速に増えています。実際に、東京都公立小学校の外国人児童数は、この 10 年間で 2.8 倍となっています(2024年2月、東京都教育委員会)。
しかし、日本の社会制度はこれまで、外国から多くの人々が移り住むことを想定してきませんでした。 “外国につながる子どもたち”の受け入れ体制の立ち遅れが、大きな社会問題となっています。
メディアでは次のように報じられています。
小中学校に通う年齢の外国籍の子どものうち、昨年5月時点で8183人が学校に通っていない可能性があることが、文部科学省の調査でわかった。昨年の調査から約1800人減った。2019年に初めて調査した時の約2万人からは大幅に減ってきているものの、外国籍の子どもが教育を受けられる体制は、まだ不十分な状況にある(『8千人が学校に通っていない可能性 外国籍の子ども、文科省が調査』2023年4月22日、朝日新聞デジタル)。
この「不就学」の問題は各所で報道され、注目を浴びました。しかし、外国につながる子どもたちの前に立ち塞がっているのは、この問題だけではありません。心の育ち、思考力、行動力、社会性…子どもが健やかに育っていくために、大切な課題はたくさんあります。
外国につながる子どもは、生活の中で、日本の学校になじみにくかったり、家庭環境に困難さを抱えていたりすることも少なくありません。そして、そういった多様なニーズは、日本で生まれ育った子どもにも同様に存在します。
だからこそ、私たちHATI JAPANは、臨床心理士や言語聴覚士、教諭などの多様なニーズを持つ子どもたちをよく理解し支援できる専門家とともに、子どもたち一人ひとりの発達や生活環境などを包括的・多角的に理解し、プランを立てて、適切に支援を行います。
「子どもに友だちができない。家に帰っても独りで過ごしてる」
あるお母さんは、我が子が周囲の子どもたちに比べてことばが遅く、友達と仲良く遊べないことに悩んでいました。保護者である大人もまた、悩み、心配しています。
近年重要視されているのが、外国につながる子どもの発達障害の問題です。
外国につながる子どもは、それぞれ多様な背景のもとで育っています。心理士、医師といった専門家でさえ、一人ひとりの子どもの発達を理解することは容易ではなく、“ことば”も”発達”も含む包括的・多角的な見方から子どもを理解し、支援を考える必要があります。まして、ひとりの保護者が、この複雑な課題に立ち向かっていくことは、極めて困難です。
さらに、外国につながる保護者は、たとえ同じ出身国のコミュニティに属していても、精神的に孤立している場合もあります。身近な誰かに悩みを聞いてもらうことができず、SOSを出せずひっそりと暮らしている保護者も、地域には存在します。
だからこそ、私たちHATI JAPAN は、これまで中野区や東京都、その外郭団体、地域の支援団体らと連携関係を構築してきました。今後もネットワークを広げながら、インクルーシブな地域づくりを進めます。
インクルーシブな地域を作ることは、私たち全ての課題
私たちの活動する中野区鷺宮地域のとある大規模団地では、外国人世帯が3割を超え、そのほとんどが子育て世代ということです(*)。その一方で、鷺宮地域は区役所など主要な行政機関・施設のある中心部から離れており、支援を利用しにくい地域であると言われてきました。その状況は今も変わりません。(*鷺宮西住宅自治会調べ)
東京都には、2024年10月時点で約71万人(総人口の5.0%)の外国人が住んでおり、 2070 年には 20%を超えると推計されています。特に、中野区に隣接し現在 12%が外国人住民となっている新宿区では、50%を超える見通しもあります(2024年1月、東京都生活文化スポーツ局)。
年齢や経済状況、人生観によるライフスタイルの違いや、多様な文化・言語を背景とする価値観・生活習慣の違いを超えて、人々が地域で共に暮らしていくことは、容易ではありません。
だからこそ、多様な人々が安心して居心地良く暮らし、共に育っていけるインクルーシブな地域を作ることは、これからの時代に向けての、私たち全ての課題であると考えています。
なぜこの課題に取り組むか
「本当に救われる思いでした」
HATI JAPANは中野区鷺宮地域で「居場所」活動を続けています。利用者のSさんMさんご夫婦は、このように話して下さいました。
「中東の紛争で日本移住をした際に、最初に子どもと我々を温かく受け入れていただきました。日本語での生活に不安な子どもたちを、ボランティアの皆さんがとにかく優しく笑顔で受け入れて、毎回遊んでくださいました。代表の東谷さんには、転学時の就学相談や励ましをいただき、本当に救われる思いでした。」
保護者自身が安心して過ごし、落ち着いて子どもに関わっていける。そのような環境があって初めて、子どもは、伸び伸びと生活することが可能になります。外国につながる子どもや、家庭環境、発達特性、学校へのなじみにくさなどのニーズを抱えた子どもたちが、自分らしく成長していくことができます。
2022年から地道に続けてきたHATI JAPANの「居場所」活動については、「鷺宮グローバルネットワーク1周年記念イベント」でも報告し、地域の校長先生から、「このような場所があってよかった」と言っていただくことができました。
「実は時々子どもに手をあげてしまうんです・・・」
母子で「居場所」に参加のAくんは、落ち着きづらく集団参加が難しいため、発達障害が懸念されていました。日本語の会話もまだ少なく、お母さまはAくんを他児と比べてあせっている様子でした。
ある日の「居場所」活動中、ひとりで黙って遊んでいるAくんを、お母さんは強く叱ってしまいました。スタッフが別室でお母さまの話を聴いたところ、「息子が日本の小学校でやっていけるか心配」「家でも叩くのをやめられない」と打ち明けてくれました。スタッフは、お母さまの不安を受けとめ、「日本には、お母さんの気持ちをよく聞いて、一緒に考えていく仕組みがありますよ」とお伝えしました。
その1週間後、お母さまが当NPOの「個別の発達相談」へ来室し、さらに丁寧に話をうかがいました。そして、本人のご希望で、居住地の公的支援機関へとつながることに。地域で連携して、Aくんとお母さんを見守り支えていくことになりました。
たとえ地域で孤立しがちな外国につながる保護者であっても、子どもと一緒に「居場所」に参加することで、保護者同士仲良くなったり、情報交換したりすることができます。また、私たちHATI JAPANのスタッフが、SOSを出しにくい保護者のニーズに気づき、支援につないでいくこともできます。
子どもはもちろんのこと、保護者にも、安心して、日本で子育てしてほしい。
そう願って、私たちHATI JAPANは「居場所」活動を進めています。
寄付金の使い道
子どもと保護者の「居場所」をつくる活動を続けるために、あなたのご支援が必要です
現在の日本において、“外国につながる人々”を支える制度は、決して十分ではありません。
社会制度の整備が立ち遅れる中、「制度の狭間」で生まれてくる問題に、私たちは取り組んでいます。
外国につながる世帯に困窮した家庭は多く、その一方で支援する私たちの財政的基盤もまた脆弱です。
だからこそ私たちは現在、利用者のご家族からは参加費を受け取らず(※)、民間の助成金を頼りに活動しています。
ですが助成金を受けるには毎年審査が必要になり、必ず受け取れるとは限りません。この活動を続けるためには、一日も早く、財政的な「自立」を目指さなければなりません。
この活動を続けるために最低限欠かせないのは、子どもたちや保護者の方々と真剣に向き合うことのできる専門性を持った人材の確保です。
子どもや保護者の「居場所」を絶やさないためには、最低でも、個人や企業の皆様からの年間150万円のご支援が必要です。
あなたのご支援があれば、例えばこんな事が実現できます。
◉ 月々10,000円 / 年間または単発120,000円のご支援で・・・
HATI JAPANの「居場所」活動を1ヶ月間継続することができます(現在は月に3〜4回のみ。団地の集会所や区民センターを借りています)
◉ 月々5,000円 / 年間または単発60,000円のご支援で・・・
子どもや保護者と寄り添う「居場所」活動専任スタッフを1ヶ月分確保することができます
◉ 月々3,000円 / 年間または単発36,000円のご支援で・・・
年間でのべ8名の子ども・保護者に「居場所」を提供することができます
◉ 月々1,500円 / 年間または単発18,000円のご支援で・・・
専門家による保護者への丁寧な子育て相談を1回分提供することができます
お預かりしたご寄付は、HATI JAPANの発達支援や居場所作り、インクルーシブな地域作りの取り組みのために大切に使わせていただきます。
皆様からの温かいご支援のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。
特定非営利活動法人
HATI JAPAN 多文化多言語の子ども発達支援
代表理事 東谷知佐子
※個別相談では、経済的余裕のある保護者から相談料を受け取ることもあります。
※HATI JAPANへのご寄付は寄付控除の対象ではありません。あらかじめご了承ください。