私たちの取り組む課題
原子力災害から10年以上が経ちました。原子力災害による未曽有の被害は、社会の根底的な価値観さえ揺るがすものでした。
先祖代々守り続けてきた大地。
どこにも負けないくらい豊かな海。
暮らしに根付いた文化。日々の暮らし。
そうしたものへの、ささやかな信頼と誇り。
様々な、形あるもの、ないものが壊され、失われました。
何が被害を深刻化させたのか。
私たちは何を失い、何に気づき、何を取り戻さねばならないのか。
命の営みにとって本当に大切なものは何か。
それを二度と失わないようにするために、どのような社会にしていけばよいのか。
そうした一つひとつの問いに、向き合える場所をつくりたい――
そのような思いから、いわき湯本の旅館『古滝屋』の9階の一室に、
「原子力災害」を「考証」する展示ルームを設けることにいたしました。
furusatoでは、災害の被害・原因・解決のための取組を体系的に整理しながら、
草の根の人びとが取り組んできた軌跡を幅広く扱います。
草の根の取組の中には、活動内容が冊子や書籍でまとめられていないことも多いため、
①国や県の図書館やアーカイブ施設ではカバーしきれない資料をアーカイブし、
②ボトムアップ型の企画運営により、より少数で多様な立場の活動をカバーしていきます。
<「考証」についての基本的考え方>
答え・主張を展示するのではなく、問い・想いを展示することで、来館者一人ひとりが当事者として「問い」を生み出せるような空間にします。実際に現場を訪ねてみたり関心ある分野を深堀できるよう、スタディツアーや草の根市民マップ(資料や書籍の目録)を充実させる予定です。また意見交換会を開催し、当事者同士で対話する機会も設けます。
なぜこの課題に取り組むか
原子力災害から12年が経ち、「原発事故被害」が可視化されづらくなってきています。
報道数の減少に加え、様々な「記憶」が継承されないまま「復興」が被災地を上書きしているような状況もあるように思えます。
例えば、当時政策を進めてきた担当者も配属部署が変わっていたり、デジタルアーカイブを担うウェブサイトやプロジェクトが閉鎖したり。
他方、避難12市町村への移住・定住促進の補助制度が大々的に告知されたり、特定復興再生拠点を中心に被災後の建物(文化財)が解体され、新たなまちづくりが進められています。
その様な中、未だ国の責任が認められないまま沢山の被害者が法的に救済されないまま、現状に至っています。
当事者が、今なおどのような被害と立ち向かっているのか、
ふるさとを守り続けるために、どのような草の根の活動があるのかを可視化し伝えていく取組は、ますます重要になると考えています。
寄付金の使い道
展示に必要な備品、資料の購入に使わせていただきます。