
事業の目的

東京を拠点とするクラブシーン関係者のためのStrike Fund運営
人権侵害や環境破壊を推進する企業を親会社に持つイベントやプラットフォームからの出演オファーを、経済的理由で断れないアーティスト/DJをなくしたい ー 東京を拠点とするパーティコレクティブWAIFUとProtest Raveが共同で、周縁化された人々のコミュニティであるクラブカルチャーを文化の投資商品化から守るためのStrike Fundを設立。
資本や国家権力からの解放の場である自治的なコミュニティの場としてクラブカルチャー
クラブは、その黎明期から社会の周縁に押しやられた人々にとっての避難所であり続けてきました。USではNYのディスコやシカゴ・ハウス、デトロイト・テクノが、そしてUKではレゲエやダブから、ジャングルやドラムンベースを経て続くハードコア連続体が、クィア、黒人、ラテン系、移民コミュニティ、労働者階級といった社会的・権力的マイノリティが昼間の社会で横行する差別や暴力から逃れ、夜の中で新しい共同体を築き、オルタナティブな社会のあり方を創造するための空間でした。その精神は、現在もサウンドシステムカルチャーやレイヴ、アンダーグラウンドなパーティのネットワークに受け継がれています。クラブは単なる娯楽産業ではなく、抑圧的な社会構造に対する抵抗の象徴であり、周縁化された人々が生を取り戻すための重要な避難場所/コミュニティの場であり続けて来ました。
人気フェスやプラットフォームが人権侵害・環境破壊事業に多額を投資する投資会社の傘下に
2024年6月に、世界中の80以上もの音楽フェス/プラットフォームを所有する英イベント運営会社Superstructが、米投資会社KKRに買収されました。同社は、軍需産業やイスラエルの違法入植/アパルトヘイト政策を支える企業群、「カナダ」の先住民族Wet’suwet’enの領土を不同意で暴力的に占拠し環境を深刻に破壊するガスパイプライン建設事業などへ投資していることで知られています。そして2025年1月には、これまでアンダーグラウンドなクラブカルチャーをフィーチャーし人気を得ていた配信プラットフォーム/イベントのBoiler RoomがSuperstructに買収され、このKKRの傘下となりました。これらの事実はクラブカルチャーの根本的価値観の存続を脅かしています。
有害な事業へ多額を投資する企業のネガティブなイメージを洗い流す「アートウォッシング」への懸念
こういった資本構造のもとでKKRからSuperstruct傘下の音楽フェスやプラットフォームへ投資がされることは、環境破壊や人権侵害を引き起こす事業を行う企業などが、アートへの投資・資金提供・寄付などを通じてネガティブなイメージを洗い流し、クリーンで先鋭的であるというパブリックイメージを形成する「アートウォッシング」に該当するのではないかという懸念も高まっています。
KKRは2020年に、「カナダ」先住民族のWet'suwet'enの土地を不同意にもかかわらず暴力的に占拠し強制退去を迫ったとして、事業が国連やアムネスティから勧告を受ける中、2021年にKKR創業者のパートナーがNYの美術館MoMaの理事長に就任しました。理事長として多額の資金を集め、MoMaの展示室にも夫妻の名前が記されるなどしていたことからアートウォッシュであるとして、環境運動団体やWet'suwet'enの土地擁護者達により、理事長解任を求める抗議を受け続けています。
また、ダンスミュージックというジャンルも、過去にThe Blockというテルアビブのクラブを通じて、イスラエルの入植者植民地主義に基づく違法占領・民族浄化を覆い隠すプロパガンダ発信において重要な文化的役割を担っていたとイスラエル外務省も認めているという歴史もあります。
世界中で巻き起こるボイコット運動 / コミュニティの基盤を強めるケアと相互扶助の動き
こういった懸念から、いま世界中のクラバー達がこのクラブカルチャーの買収に抗い、Boiler RoomをはじめとするKKR/Superstruct傘下のイベントやフェスをボイコットしています。トルコのイスタンブール、ブラジルのサンパウロ、プエルトリコのサンファン、アメリカのサンフランシスコ、インドネシアのバリでは、Boiler Roomがボイコットにより開催中止になり、オーストラリアでは800人以上のDJが出演を拒否するオープンレターに署名しました。ボイコットにより開催中止にはならなかった都市でも、オファーを断ったことによって困窮してしまう/経済的理由によりオファーを断る余裕がないというDJを減らすために、出演を取りやめたDJやアーティストに対して、代替イベントの開催やStrike Fundを立ち上げることで資金を募るという、コミュニティ内でのケアと相互扶助の動きが広まっています。
東京のローカルシーンでも多くのDJが出演を辞退 ー 今後に備えてケアと相互扶助の基盤づくりを
10月11日・12日にBoiler Room Tokyoの開催がアナウンスされたことにより、私たちWAIFUはProtest Raveと共同で、まずは東京拠点のクラブ関係者を対象とした署名を立ち上げました。10月末現在、280人以上のDJやパフォーマー、VJやパーティコレクティブなどが、Boiler Roomをはじめとする本来のクラブカルチャーの価値観にそぐわない資本構造の下にあるイベントやプラットフォームへの参加よりも、自分達のローカルなシーンで活動を続け、盛り上げていくことを選ぶ署名にサインしています。
また、Boiler Room Tokyoと同日に代替的カウンターイベント「E is 4 EMPATHY」を企画し、入場無料で完全ドネーション制ながら、多くの人が来場し寄付いただいたことで、出演者への出演料や経費を除いた収益をStrike Fundのための資金へと積み立てることができました。
今回の10月のBoiler Room Tokyoへは、出演が発表される前に多くのDJがオファーを断わりましたが、スケジュール都合などで代替イベントへは出演できず、Fundの受け取りも辞退となりました。その一方で、ドルトムントやトロントのように、一度Boiler Roomへの出演が発表されたDJ/アーティストが後に出演を取りやめるというケースは、今回のBoiler Room Tokyoでは起こりませんでした。出演に際してinstagramのストーリーでステイトメントを掲載したあるDJは、引き受けた理由の一つに自身が経済的に困窮していることなども書いており、今回はそのまま出演することを選んだようですが、批判や議論が深まる中、経済的理由で引き受けざるを得ない人を減らす仕組み・基盤づくりは今後も必要性が見込まれます。
これまでの活動



2025年3月
イスラエルアパルトヘイトウィーク期間中に、KKRの投資先や傘下にSuperstruct/Boiler Roomがあることを知らせるインフォグラフィックを翻訳・掲載
https://www.instagram.com/p/DHnh56hzOmC/
2025年4月
東京藝術大学上野キャンパスで行われたイベント「アート/クィア/ファラスティーン」にて登壇。アートやカルチャー分野で起こっているパレスチナ連帯運動 / カルチュラルワーカーができることについて話す中で、KKR/Superstruct問題についても周知を行う
https://ga.geidai.ac.jp/2025/03/29/art-queer-palestine/
2025年8月
Boiler Room Tokyoの開催告知を受けて、東京を拠点としたクラブ関係者を対象に署名/ステイトメント「UNDERGROUND RAVERS OF THE WORLD, UNITE!」を掲載・開始
https://www.instagram.com/p/DOAwy0-kyoq/
2025年9月
Boiler Roomの日本での開催に際して協業しているCanteenに対し、東京拠点のパーティコレクティブ4団体(WAIFU、Protest Rave、CLUB SKIN、Queert0pia)からオープンレターを提出
https://www.instagram.com/p/DO5r1aoEx1_/
アーティストコムアイと村田みのりによるPodcast「ぺらぺ〜らの泉」にゲスト出演し、今なぜBoiler Roomが問題なのかということを2回に渡りトーク
2022年までの8年間Boiler Room Japanとして協業してきた配信番組SUPER DOMMUNEに出演。「UNDERGROUND RAVERS OF THE WORLD, UNITE!! PROTEST RAVE x WAIFU x DOMMUNE Presents 「BOILER ROOMと文化の投資商品化、そしてアートウォッシングの真実」第22章|売り渡すな!」と題して、ボイコットの背景や文化の投資商品化、アートウォッシングの罠についてなど、クラブカルチャーの歴史100年の中に位置づけるかたちで、オーナーの宇川直宏氏と共に5時間にわたる議論を交わした。
2025年10月
Boiler Room Tokyoに対する代替的カウンターイベントとして、Boiler Room Tokyo初日と同日の10月11日に渋谷R Loungeにて「E is 4 EMPATHY」を開催。開催1週間前の告知・入場無料の完全ドネーション制にもかかわらず、500人近くの来場者があり、寄付や一部ドリンク収益のバックなど合計で357,153円の収入あり。出演者への出演料や経費など22万円を差し引き、137,153円をStrike Fundへの資金として積み立て。
https://www.instagram.com/p/DPaZDCDEykD/
Boiler Room Tokyoメイン公演である10月12日に会場前にて、入場者への情報周知と、日本での協業会社であるCanteenへ提出したオープンレターへの返事を求める抗議活動を行った
これまでの事業成果



・クラブ関係者・クラバーへの情報周知・議論喚起
・代替パーティ開催によるStrike Fund積立資金作り
事業の必要経費
急な開催にも備えられるように継続的な積立を
今後、東京で開催されるKKR/Superstruct傘下のイベント/プラットフォームをはじめとする、人権侵害や環境破壊を推進する企業を親会社に持つイベントやプラットフォームからの出演オファーを断ったDJやアーティストに対して、Strike Fundの資金を元手に代替パーティを開催しそこへ出演いただくことで、断ったオファーと可能な限り同額相当の出演料を収益とFundの積立資金から継続的に補填できる仕組み作りをしたいと考えております。
代替対象になるイベントの一度の公演数や出演者数、年間での開催数と照らし合わせ、当面の代替イベント開催に関する必要経費として、会場費、出演料、オペレーション費用など含めた代替イベント制作費として、常に50万円〜100万円が積み立てられている状態を目指します。
もしFundの運用中に買収が解消されるなど、人権侵害や環境破壊を推進する企業を親会社に持つイベントやプラットフォームがなくなり、Fundが必要なくなった場合は、状況を見て他に適切な使用方法がなければ下記に寄付いたします。
The Sameer Project
Boiler Roomからの寄付を断った、パレスチナ人主導のガザでの人道支援団体
Wet’suwet’en GIDIMT’EN CHECK POINT
80年代からKKRの投資する沿岸ガスリンクパイプライン事業により領土を脅かされている「カナダ」先住民族Wet’suwet’enの領土を巡る法廷闘争などへの資金

