私たちの取り組む課題
いま、子ども支援の領域では、「子どもの貧困」とそこから生まれた「子ども食堂」が全国的に大流行しています。「子ども食堂」という看板だけで「よい活動」「大切な活動」と捉える風潮が全国的にあり、向日市も同様です。
私はこのような風潮を危惧しています。なぜならば、誰のための活動かが不明確なまま、活動を始めている団体が多いからです。ニーズの有無とは無関係に「いま流行っているから」という理由で、活動を行っても、「支援をしたい当事者」に支援が届かなければ活動の意味がありません。
当団体は「全国で流行っている活動」を向日市に持ち込むのではなく、このまちの課題から、ニーズに即した活動を作り出す必要があると考えています。
いま、当団体が行っている活動は、中高生を対象とした「無料で自由に過ごせる場」づくりです。
向日市では、乳幼児を育てる保護者向けの福祉施策や、資源は比較的充実しています。しかし、子どもの年齢が上がるごとに、福祉施策は減っていき、小学校高学年になると、福祉制度の外になります。
子を育てる保護者への支援はありますが、当の子ども自身を対象とした福祉施策・制度・施設は皆無です。
保護者が働く家庭の子どもなら学童保育があります。しかしこれは保護者のためのものであり、利用に当たっては子どもに選択権はほぼありません。
そして、学童も4年生までしか利用できません。ちなみに国の基準では6年生まで受け入れる必要があるのですが、キャパシティの問題から対応できない状況です。
では、制度から外れた子どもたちはどこで過ごすのかというと、お友だちの家や、公園くらいしかありません。
ただ、仕事で疲れた保護者からすると、休日に大勢のお友だちが一人の家に集まり、遊ばれると気が休まりません。また、保護者が留守の時に、多くのお友だちを家に入れることを嫌われることもあります。
そうなると、外で遊ぶことになりますが、向日市の公園のほとんどは「ボール遊び禁止」であり、大きな声で遊ぶと「声が煩い!」というクレームにつながり、過ごし方に制限がかかります。
それでも小学生の間はお小遣いも少なく、行動範囲も校区内としていることから、いろいろな制約の中で過ごします。
しかし、中学生になると、行動範囲の制限がなくなり、飛躍的に広がります。お小遣いの額も上がり、休日に公共交通機関で遠方に遊びに出かける子どもも増えます。向日市は阪急とJRの駅があり、京都市内、大阪市内へのアクセスが良く、お金さえあれば繁華街へ繰り出せます。
ここで問題が出てきます。「家庭の経済力」です。
経済的に裕福な家庭の子どもは、遊園地に行くときなど、お小遣いとは別枠で、お小遣いをもらうことができます。けれど、経済に厳しい家庭の子どもは別枠のお小遣いなんてもらえません。
そうなると別枠でお小遣いをもらえる家庭とそうではない家庭の子どもとでは、休日の過ごし方が変わります。
裕福な家庭とそうでない家庭の子どもとが一緒に遊ぼうと思っても、無料で遊べる場所がない向日市ではなかなか休日を一緒には過ごせません。
別枠のお小遣いをもらえる子は休日になれば、街へ繰り出します。当然一緒に繰り出すのはそのお金を保護者からもらえる子どもです。
別枠のお小遣いをもらえない子は一緒に過ごしたいと思っても、一緒に過ごせません。
子どもの属する家庭の経済力で、交友範囲が決まり、子どものうちにする経験にも差がでます。
私はここに疑問を感じています。子どもは「経済的に自立していない存在」であるにもかかわらず、属する家庭で経験に差が生じます。
しばしば「子どもの貧困」を論じる中で問題とされる、「経験格差」です。
向日市は京都と大阪の中心部へのアクセスの良さから、転入者が多い地域です。つまり地価が高く、富裕層が多く暮らす地域です。一方、そうではない層ももちろん暮らしています。
そもそも、向日市内に子どもたちが無料で過ごせる公共施設があればよいのですが、残念ながら、そのような施設はありません。
例えば、休日の国道沿いのファーストフード店は勉強をする学生であふれています。
ショッピングモールのフードコートも同様です。さらに、モールの通路部分に設置されている椅子に座り、スマホを触っている中高生の姿は休日によくある光景です。
自宅には勉強をする環境がない家庭の子がいたとしたら、向日市では、お金を支払わないと「その場」を確保できません(この点についてはR5年12月にようやく図書館に自習スペースが設けられました。とはいえ10席ほどです)。
私は「経済的に自立していない」子どもたちが休日を過ごすにも、家庭の経済力の制約を受けることを疑問に感じます。
家庭の経済差が子どもの過ごしに影響を与えるのならば、地域の大人が補えばよいだけです。
そう考え、立ち上げた場が「フリースペース」です。毎週土曜日12時~18時の6時間開設しています。
令和4年7月に開始し、令和6年9月21日現在で、116回開設し、延べ1,211人の利用がありました。
年度ごとの、一回当たりの利用者数は以下の通りです。
令和4年 5.49人 / 令和5年 10.37人 / 令和6年 17.92人
令和6年で三年目に入りましたが、中学生の間にフリースペースの認知が広がり、飛躍的に利用者が増えています。
なぜこの課題に取り組むか
青年期にある子どもたちは自我の発達が著しい成長時期にあるが多様な価値観にふれあい、高める経験を積む場が向日市にはないため。
寄付金の使い道
居場所の運営に必要な備品の購入
■具体的には
カードゲーム・ボードゲーム
テレビ・プレーヤー
学習参考書
テーブル
フリーWi-Fi機器
雑誌・コミックス
ホットプレートなどの調理器具
簡単な食材費
色鉛筆・クレヨン・折り紙・画用紙などの表現素材
消毒液などの備消耗品
など