
事業の目的
本事業の目的は、社会とのつながりを絶たれがちな引きこもり状態にある本人とそのご家族に対して、安心・信頼に基づいた対話と関係づくりを軸とした訪問支援を行うことです。
ただ"支援を届ける"にとどまらず、その人らしい生き方や社会参加への可能性を共に模索しながら、「伴走する支援」を目指します。
引きこもり状態にある方の多くは、長年の孤立、不安、失敗体験、支援への不信感など、さまざまな背景を抱えています。
また、支援者がアクセスできない「家庭という場」に閉じこもることによって、地域や制度から見えにくく、"存在していない人"として扱われてしまう現実があります。
本プロジェクトでは、こうした「見えにくい困りごと」に光を当てるため、訪問という最もプライベートな場での支援を起点に、その人の"これから"を丁寧に紡いでいきます。
支援の内容は多岐にわたり、
・本人の不安や困りごとを聴くカウンセリング的な関わり
・家族の葛藤や支え方に対する助言
・地域資源との橋渡し(制度利用・居場所・就労支援)
・医療や福祉サービスとの連携コーディネート
など、一人ひとりの状況に合わせたオーダーメイドの支援を展開します。
また、訪問を通じて社会とのつながりを回復した方が、今度は「支える側」として何かしらの活動に参加できる循環も目指しています。
たとえば、体験談の共有、居場所づくりのサポート、ピア支援的な関わりなど、当事者性を活かした関わりを重視します。
このプロジェクトは単に「引きこもり状態を改善すること」が目的ではなく、その人の人生の"再出発"を地域全体で支えるための、最初の一歩としての関わりです。
そして、本人や家族だけでなく、関わる支援者や地域全体が「共に学び、共に成長する」実践の場となることを目指します。
これまでの活動

本プロジェクトでは、"支援者が訪問支援を行う"という柔軟かつ機動的なスタイルを活かしながら、継続的な関わりを行ってきました。
主に以下のような実績があります
1. 家庭訪問による個別支援(本人・家族双方への対応)
・引きこもり状態が長期化している本人に対し、焦らず丁寧な関わりを重ねながら対話を開始
・家族(主に親御さん)への傾聴と助言、感情の整理のサポート
・必要に応じて外出支援(面談同行・病院受診・ハローワーク訪問等)を実施
・1回きりで終わらない関係づくりを重視し、6ヶ月以上継続的な訪問関係を構築した事例も複数あり
2. ご家族向けの勉強会・相談会の開催
・「支援の第一歩は、家族の理解から」と位置づけ、保護者やご家族を対象にした小規模な勉強会を開催
・内容例:引きこもり状態の背景理解、コミュニケーションの工夫、本人との距離の取り方 など
・参加者同士の不安や思いを分かち合うことで、「自分だけじゃない」と感じられる場を提供
・勉強会後には個別相談にも応じ、家族関係の回復や家族自身の生き方の見直しにもつながるケースあり
3. 支援ネットワークとの連携構築
・福祉事務所・教育機関・相談支援専門員などと連携しながら、個別のケースごとに適切な支援につなぐ
・単独支援者として動きながらも、地域の関係機関との連携窓口としての機能を担い、「つなぎ役」「橋渡し役」としての立場を確立
4. 支援後のステップアップ支援
・就労準備支援として、地域の居場所やB型事業所見学に同行
・定着支援として、就職後の本人への相談支援や、企業側への調整サポートも実施
・本人・家族・職場の三者をつなぎながら、孤立しない働き方の支援に注力
このように、「訪問支援」という形を通じて、支援が届いてこなかった"制度の狭間"にいる家庭や本人に直接アプローチしてきました。
小規模ながらも、深い信頼関係の構築と次の一歩の支援につなげてきた実績があります。
今後も、寄付や応援を力に、この実践を地域に広げていきたいと考えています。
これまでの事業成果
本プロジェクトでは、「誰にも頼れない」「どこにも相談できない」と感じていた家庭に対し、"最初の支援の入り口"を提供することに成功してきました。
活動の中で得られた成果は以下のように多岐にわたります。
1. 支援が届かなかった家庭との初期接点の創出
・既存制度では「対象外」だった方や、制度を信頼できず支援を拒んでいたご家庭からの初めての相談や受け入れを実現
・公的機関に相談する前段階として、心理的安全性の高い支援の入り口として機能
・訪問初期の段階では、玄関越しやインターホン越しのやりとりから始まり、数ヶ月かけて対話が成立するケースも
2. 家族との信頼関係の構築と変化の促進
・継続的な家庭訪問を通じて、親御さんの不安・罪悪感・疲弊感の軽減を支援
・家族自身が「相談してよかった」「もっと早く知っていたら…」と語る場面もあり、支援に対する信頼が生まれた
・家族関係における見直し(依存・過干渉・距離の取り方など)により、家庭内の雰囲気が改善される事例が複数
3. 本人の変化と社会との接点の回復
・訪問支援により、本人が初めて自宅の外に出るきっかけをつくることに成功(散歩、面談、公共機関の同行など)
・本人の希望や強みを尊重しながら、無理のないペースで「次のステップ」へと進めた
・結果として、居場所利用・B型事業所利用・アルバイト開始・就労移行支援への相談開始など、社会との再接続を果たした例も
4. 地域支援機関との連携モデルの実現
・福祉事務所・相談支援事業所・教育関係者・医療関係者などと必要に応じて連携し、"個人支援 × 地域資源"の架け橋を担った
・支援情報が届いていなかった家庭にとって、実行可能な選択肢や支援先が増える効果を生んだ
・ケースによっては、訪問支援が「福祉制度への理解と接続」の導線となり、生活保護・障害福祉サービス等への申請につながった
5. 支援のモデル化と再現性の確保に向けた一歩
・単独活動であっても継続的に訪問が可能である支援スキームが有効であることを実証
・本人・家族・地域の間に立ち、「ゆっくり・しっかり・丁寧に寄り添う支援」の重要性と効果を具体的に示すことができた
・こうした個別実践の積み重ねをベースに、今後「訪問支援の手法」や「支援開始のあり方」に関する研修やガイドブック化の可能性も生まれてきている
このように、支援の届きにくい現場で、確かな小さな変化を積み重ねることができたことが、最も大きな成果です。
そしてそれは、ご本人だけでなく、家族や地域全体にとっても、「誰かとつながる安心」や「支援は信頼できるものだ」という実感につながっています。
今後もこの実績を礎に、活動を広げていきたいと考えています。
事業の必要経費

本プロジェクトは、支援者が家庭を訪問し、本人・家族と向き合いながら、長期的に信頼関係を築いていく活動です。
個別性が高く、丁寧な関わりが求められるため、活動の持続と安心・安全な実施を支える経費が必要となります。
1. 支援者の人件費
・家庭訪問・相談・同行支援・記録作成など、1人で全工程を担う労力を保障
・面談調整・個別支援計画の作成・情報整理など、支援の裏側にかかる時間を含む
孤立した家庭に継続的に関わるために、安定的な活動保障が不可欠です。
2. 交通費・訪問に伴う移動経費
・公共交通や自家用車での移動にかかる交通費
・自宅から複数地域への訪問にも対応できる柔軟な移動体制の確保
家庭の場所や本人の状況に応じた柔軟な訪問を支えるコストです。
3. 訪問時の備品・安全対策
・名札、記録バインダー、資料ファイルなどの訪問基本ツール
・感染症予防(マスク・アルコール)、暑さ寒さ対策グッズ(冷却グッズ、飲料など)
・記録管理用のタブレットやクラウドストレージの利用料(必要に応じて)
一人での訪問でも安心・安全・丁寧な対応ができるよう整備します。
4. 情報提供・啓発資料の作成
・引きこもり本人や家族に向けた、状況理解や対話のきっかけとなる資料作成
・支援の流れや心構えを伝えるパンフレット・案内資料の印刷費
初回訪問時から信頼関係を築くための「伝わるツール」が必要です。
5. 外部連携・研修のための最低限の運営費
・単独支援者であっても、必要に応じて外部機関や相談支援専門員との連携費用
・自身の支援力を保つための、オンライン講座や研修・教材の購入費など
一人支援でも孤立せず、学びを継続できる土台づくりを支えます。
6. 支援後の社会参加サポート経費
・引きこもり状態からの外出支援にかかる交通費や付き添い費
・ご家族の相談継続に必要な通信費(電話代・オンライン相談ツール使用料)など
「訪問だけ」で終わらず、次の一歩まで伴走する費用です。
このように、質の高い関わりを持続するためには、多面的な経費が発生します。
いただいたご寄付は、現場での活動を支えるこれらの費用に大切に充てさせていただきます。