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タイマイと人間のかかわりーべっこうと歴史

2025/12/21 09:30

タイマイと人間のかかわりーべっこうと歴史 Main Visual

『べっ甲(鼈甲)』とは、主にタイマイ(Eretmochelys imbricata)という種類のウミガメの甲羅(鱗板)から作られる素材で、古くから世界各地で価値のあるものとして利用されてきました。

今回は、べっ甲利用の歴史と、その背景についてまとめています。

べっ甲利用の歴史

べっ甲利用の歴史は、少なくとも紀元前にまでさかのぼります。

カエサル(ガイウス・ユリウス・カエサル)の戦利品保管倉庫に大量のべっ甲が保管されていたという記録もあり、当時からべっ甲が高価な素材として扱われていたことがうかがえます。

6世紀には中国ですでにべっ甲工芸品が作られており、8世紀にはその製作が盛んになりました。日本にべっ甲が伝わったのは、飛鳥・奈良時代とされています。

タイマイが絶滅危惧種となった最大の要因は、べっ甲を目的とした長年にわたる乱獲です。

ワシントン条約(CITES)により国際的な商取引は原則禁止され、現在、合法的なべっ甲目的の捕獲は行われていません。ただし、密漁は現在も各地で報告されています。過去の大規模な乱獲の影響は、現在の個体数にも大きく残っています。

現在残っている記録では、大航海時代以降、タイマイの大規模な捕獲と搾取が行われてきたことが分かっています。ポルトガル、オランダ、フランス、イギリスなどの海洋国家を中心に、タイマイは各地で集中的に捕獲されました。「獲り尽くしたら次の島に移動した」という記録も残されており、当時の過剰な搾取の実態を示しています。具体的な捕獲頭数は不明です。

べっ甲目的の乱獲というと、20世紀最大の輸入国であった日本が取り上げられることが多くあります。20世紀に入り、日本は世界最大のべっ甲輸入国となり、結果として世界のタイマイ個体数を約8割減少させる大きな要因の一つとなりました。しかし、タイマイ搾取の歴史は日本以前から始まっており、その点にも目を向ける必要があります。

世界のべっ甲利用

上記の通り、べっ甲を使った装飾品は世界各地で利用されてきました。例えば、ハワイの博物館では、べっ甲を用いた装身具や工芸品が展示されています。また、アルゼンチンで150~200年前に作られたとされる、見事なかんざしの写真が残されています。

べっ甲は現在も、日本以外の国々において違法またはグレーな形で利用されている実態があります。比較的取引量が多いとされる国には、中国、ベトナム、インドネシア、ソロモン諸島、キューバなどが含まれ、少なくとも十数か国で商取引が行われているとの報告があります。

日本の伝統工芸「べっこう」の特徴

世界のべっ甲工芸品の多くは、薄く加工されているのが特徴です。

一方、日本のべっ甲工芸の特徴は「重ね」の技術にあります。水と圧力のみで厚みを出し、精緻な細工を施す技法が受け継がれてきました。折れたり壊れたりした場合も、水と圧力、必要に応じて追加のべっ甲を用いて、職人の手で修復が可能です。

ワシントン条約により輸出入が禁止されているにもかかわらず、なぜ現在もべっ甲工芸が存在するのか、という質問を受けることがあります。これは、輸入が禁止される以前に国内に持ち込まれた素材、あるいは合法的に養殖されたタイマイ由来の素材が使用されているためです。

また、べっ甲は切り出し後に生じる端材も十分に活用できる素材であり、長期間大切に保存されてきました。職人ごとに使用する部位が異なるため、不要な部分を職人同士で売買したり、廃業などにより不要となった素材が引き継がれたりしながら、現在まで大事に使われ続けています。


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