私たち日本司法支援センター(通称:法テラス)は、平成18年に設立された公的な法人であり、「法的トラブル解決の総合案内所」です。
今回、法テラスでは、これまでも主にいただいた寄付金で取り組んできた法的支援を強化するため、初めてクラウドファンディングに挑戦します。寄付金は、被災地で法律相談を行うために活躍している移動相談車両「法テラス号」の運行などの「被災者への支援」や、ひとり親家庭支援の相談会開催などの「こども支援」のために活用させていただきます。これらの活動を通して社会的に孤立しがちな被災者やこどもたちへの法的支援を強化していきます。「誰もが・いつでも・どこでも法的支援を受けられる社会」の実現に向けて、ぜひ皆様の温かいご支援をお願いします。
【募集概要】
◆主催:日本司法支援センター(法テラス)
◆期間:2024年12月16 日~2025年2月14日
◆目標:300万円
◆寄付金使途:被災地支援プロジェクト、子ども支援プロジェクト
◆寄付いただいた方へ: 各プロジェクトの担当スタッフ・弁護士からの御礼メール ・活動報告のご送付 ・法テラスのHPへのお名前掲載(希望者)
ご寄付をもって、法テラスプライバシーポリシーに同意いただいたものとさせていただきます。
▶法テラスプライバシーポリシー
https://www.houterasu.or.jp/site/site-riyou/privacypolicy.html
Story
法テラスは、誰もが、いつでも、どこでも、法的なトラブルの解決に必要な情報やサービスの提供を受けられる社会の実現を目指して、国によって設立された法的支援のための「総合案内所」です。
法テラス・サポートダイヤルや全国各地にある法テラスの地方事務所では、お困りごとの内容に応じて、相談窓口や一般的な法制度情報を無料で提供しています。
平成18年10月の業務開始以降、すでに970万件を超えるお困りごとにお応えしてきました。
また、経済的にお困りの方に対し、弁護士や司法書士との無料の法律相談や、弁護士や司法書士に事件の解決を依頼する場合の費用の立替えも行っています。
これまでに約490万件の無料法律相談を実施し、弁護士・司法書士費用の立替えを行った件数は190万件を超えています。
他にも、犯罪の被害にあわれた方に対し、犯罪被害者支援の経験や理解のある弁護士の紹介を行うなどの犯罪被害者支援に関する業務、また、身近に弁護士等の専門家がおらず法的サービスを受けることが難しい地域に、法テラスに勤務する弁護士が常駐する法律事務所を設置するなど、様々な業務を行っています。
見えないニーズをみつける、くみとる、こたえる
法制度や相談窓口に関する情報があれば自分から相談に行けるだろう、無料であれば、経済的に余裕がない方もためらわずに相談できるだろう、近くに法律事務所があれば気軽に相談できるだろう、と思われるかもしれません。
ところが、例えば、加齢や病気、障害等の影響で、判断する能力が十分ではない方々の場合は、自ら問題を認識したり、解決に向けて動くことが困難なケースが少なくありません。実際、病気で倒れて救急搬送され、入院したことで初めて「発見」され、福祉と司法による支援につながったケースも報告されています。
そこで、法テラスでは、地方公共団体・福祉機関等の職員と弁護士・司法書士とが協力しながら、高齢・障害・生活困窮等の理由で自ら法的支援を求めることが難しい方々のもとに出向くなど、積極的に働きかけを行い、その方々が抱える様々な問題に対して総合的な解決を図る「司法ソーシャルワーク」と呼ばれる取組を進めてきました。また、そのようなアプローチが可能となるように、地方公共団体・福祉機関等と連携しながら地域の支援体制の整備も行っています。当初は既存の制度・枠組みの中で様々な工夫をしながら進められてきた「司法ソーシャルワーク」の取組ですが、個々の事例の適切な解決を積み重ねることによって、特定の対象者や問題が政策的課題として広く認識されるようになりました。その結果、法テラスのことを定めた法律である総合法律支援法の平成28年改正により、「特定援助対象者援助事業」が法テラスの業務として新たに付け加えられることとなりました。(「特定援助対象者援助事業」について、詳しくは https://www.houterasu.or.jp/site/bengoshitou-tokutei/ (法テラス・ホームページ))
このように、法テラスは事業を進める中で、地域の関係機関と連携し、積極的にアウトリーチの活動を行うことによって、それまでは見えにくかった対象者とニーズに気づき、法的支援による解決につなげてきました。そうした取組が「誰もが、いつでも、どこでも、法的支援を受けられる社会の実現」のためには欠かせない、と考えています。
そしてこの度、法テラスでは2つの事業の取組に力を入れたく、ご支援・ご寄付を募りたいと考えています。
【取組①】令和6年能登半島地震から1年、継続して法的な支援を届けたい
毎年のように起こる自然災害、その後も続く人々の生活
大規模災害は、広範囲かつ長期的に多数の被災者の生命・生活に深刻な影響を及ぼします。それに伴い、多数の被災者が、不動産、二重ローン、相続、仕事など様々な法的問題を抱えることとなります。被災地の復旧・復興を図り、被災者が平穏な生活を取り戻すためには、被災者の司法へのアクセスを確保し、これらの法的問題を解決していくことが必要不可欠となります。
被災地では震災により交通インフラが崩壊し(道路陥没等)、被災者は仮設住宅等への入居を余儀なくされます。さらに、被災者は、財産や家族・親しい人を喪い、先のことを考えられない状況下にあることから、不安に感じる毎日の背景にある事実関係を冷静に分析し、問題点を把握し、解決のために相談するという行動を取ることは難しいといわれています。仮にそのような行動を取ろうと思っても、交通手段が乏しい上、どこに相談に行けばよいかもわからない状況になります。被災地の中には、相談相手となる弁護士等がいない、あるいは少ない地域もあります。そして、被災者の方が相談できる状況に至るのは、災害から一定の時間が経って、自分自身の生活がある程度落ち着いた後になることも多いのです。
そのような中で、相談にたどり着いた被災者からの相談には、以下のようなものがありました。専門家である弁護士等に相談すれば解決の方向性が見つかるものの、ひとりで考えていても解決できないものが多く含まれます。
法テラスで行なってきた災害対応と「法テラス号」の活躍
法テラスは、これまで、東日本大震災のほか、「特定非常災害」の指定を受けた平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、令和元年台風第19号、令和2年7月豪雨、令和6年能登半島地震の被災者に対する支援として、弁護士等による資力を問わない無料法律相談を実施してきました。
法律相談の実施件数は、東日本大震災では約45万件に、平成28年熊本地震では約1万件に上るなど、被災者の法律相談に対する需要は非常に多く、強い支援の必要性があります。
このような中で活躍してきたのが「法テラス号」です。
「法テラス号」は、車両の後部座席部分に対面式の座席とテーブルを設置し、車内で法律相談を実施できるようにした車両です。
これまでに、東日本大震災の発生後、避難所や役場の敷地内等へ「法テラス号」を運行して無料法律相談会を実施したほか、平成28年熊本地震、令和2年7月豪雨の際にも同様に運行してきました。
令和6年能登半島地震においても、令和6年3月に「法テラス号」を法テラス石川に配備し、能登町、珠洲市、穴水町などで無料法律相談会を実施してきました。
法律相談では、相談者の高度なプライバシー情報(住所、家族構成、収入額、資産、家族の安否など)のやり取りがなされるため、プライバシーを守ることのできる相談場所が必要です。しかし、災害時、建物の損壊や支援物資の保管場所の確保などのため、法律相談を行うためのプライバシーを守ることができる場所の確保が難しい場合が多くあります。
「法テラス号」は、この問題を解消し、車内でプライバシーが守られた状態での法律相談の実施を可能にしています。また、年齢や障害などの様々な事情により相談会が開催されている施設に行くことのできない事情がある方に対しても、こちらから「法テラス号」で出向き、車内を相談場所としても活用することができます。また、これまでも、被災による避難場所や仮設住宅など、被災者の近くにまで運行して相談会を開催してきました。
発災から1年、今後の令和6年能登半島地震の支援について
現在も、被災地では復旧・復興が進んでいない状況にあり、今後も、被災者が、損壊した家屋を解体したり、相続や借金などの問題を解決したりして生活を再建していくためには、様々な法的支援が必要となることが予想されます。そのため、今後も「法テラス号」を運行し、法律相談などの支援を行っていく必要があります。
現在、石川県に配備している「法テラス号」の運行は主に寄付金により行っているため、運行を継続するには、皆様からのご支援が必要です。
そのほか、法テラスには、これまでの被災地支援の経験により、被災者に有用な制度や被災者の直面した法的トラブルの内容に応じた適切な相談先に関する情報が蓄積されています。寄付が集まれば、これらの蓄積した情報をまとめたポスター・パンフレット等を作成・配布したり、法テラスが提供できる法律サービスの内容や法テラスのサイトのQRコードなどの情報を掲載した防災グッズ等の作成・配布が行えるようになります。
【取組②】こどもと親が抱える「生きづらさ」、法的支援で構造から変化を起こしたい
気づけない法的問題、つながらない「その先」
令和4年度中に、全国232か所の児童相談所が児童虐待相談として対応した件数は214,843件で、過去最多です。
(出典:令和4年度 児童相談所における児童虐待相談対応件数2頁)
このように、未だ解決できていない虐待やネグレクトの背景には、配偶者からのDV、社会からの孤立、生活困窮など、親の抱える様々な問題が複雑に絡み合っています。虐待に至るその前に、こども本人に加え、その親に対し適切な法的支援を行うことで、虐待防止のための環境調整につなげることができます。
しかし、法的問題を抱える家庭が法的支援につながることには、大きなハードルがあります。その背景には、こども、親、こどもや親の支援者の抱える構造的な問題があります。
⑴ こども
こども自身が、自分の抱える生きづらさの背景に法的問題があると気づくことはとても難しいことです。仮に気づくことができたとしても、親の意向を離れて、自分で直接弁護士等に相談することは困難です。
⑵ 親
親も自分の生きづらさの背景に法的問題があると認識して、自ら動き始めることは難しいです。それは、親自身も傷つき、問題を冷静に分析し、問題解決に向かっていく力を失っているからです。その上、社会的に孤立していることが、より一層法的支援につながることを難しくしています。
⑶ こどもや親の支援者
既に虐待が起きている局面では、児童相談所や支援者は、こどもの側に立って保護や支援を行うことを優先しなければなりません。たとえ親の側に法的問題があることが判明しても、これを解決するための支援まで行うことは難しいです。
こどもと親を法的支援につなげる仕組み作り
法テラスでは、地域の関係機関と連携し、こども、親、こどもや親の支援者が、適時に法的支援につながる仕組み作りを進めます。いただいた寄付金は、例えば、以下のような取組のために使わせていただきます。
1 ひとり親家庭支援の相談会
順次、各地で相談会場を設けて、悩みを抱えたひとり親家庭の方々を支援するため、弁護士、社会福祉士、心理専門職等による相談会を実施します。
2 こども食堂における相談会
こども食堂に来たついでに、こどもや親が弁護士に相談をできる仕組みです。こども食堂を運営するNPO法人等の希望に応じて、弁護士を派遣します。
3 こどもや親の支援者に対する支援
そのほかにも、こどもや親を支援している方々に対しても、必要な支援を模索し、取り組んでいきたいと考えています。
このような「子と親を法的支援につなげる仕組み作り」を通して、こどもやその親が抱える課題に対して、法的支援によって解決の糸口を見つけていきたいと考えています。
皆様のお力で実現したい社会
近年増加する自然災害。そのたびに被災者へのきめ細やかな支援の必要性とそのための日ごろからの備えの重要性が指摘されています。どうしても国土の強靭化による防災・減災対策や災害発生時の救援体制や復旧・復興支援体制の整備等のハード面の対策に注目が集まりがちです。
しかし、大規模災害では、住まい、仕事、収入を失ったり、さらには家族を喪うなど、多くの方が生活の基盤全般に一斉に大きなダメージを受けることがあります。
例えば、これまでどおりの収入があれば払えていた住宅ローンが払えなくなってしまったり、あるいは相続の問題が発生したりなど、多様な問題が一斉に発生し、複雑な状況となることがあります。
また、生活再建支援のための様々な制度がありますが、専門家の支援があれば、どういった支援が受けられるのか、複数の中からどのような支援を選べばよいのかなどがわかり、より利用しやすくなります。
さらに、何よりも生活再建には、経済的だけでなく心理的・体力的にも大きな負担がかかります。専門家の支援により、負担を少しでも軽くすることが必要です。
法律相談には、状況や課題を整理し、対応方針を示し、必要な支援を洗い出した上で、行政機関や各種専門家など、支援者の役割分担を明確にするといった機能があり、その結果、迅速かつスムーズな課題解決・状況の改善につながります。
また、何より解決への道筋を示すことは、災害に打ちひしがれ「どうしていいのかわからない」という状況のまま被災者を絶望に陥らせないことにもつながります。被災者支援において、法律相談はこのような重要な機能があります。
しかし、ご高齢の方や障害をお持ちの方などは、既設の相談場所へのアクセスが困難です。法的支援をお届けするためには、こちらからそのような方のところへ行き、それだけでなく、安心して相談できるように、プライバシーが守られる場所を確保しなければなりません。
このような問題は、法的支援を必要としているこどもについても同様に発生します。先に述べたとおり、こどもを取り巻く問題の支援には、背景に、こども、親、支援者の抱える構造的な問題があり、様々な方面から課題克服の努力が行われているものの、現状では、こどもへの法的支援は不十分なままとなりかねません。
これらの課題は、法テラスのこれまでの取組の中で見いだされてきた新たな課題です。まずは皆様のご助力を得て、着実に実績を積み重ねていきたいと思います。そしてそれを通じて、「誰もが、いつでも、どこでも、法的支援を受けられる社会」の実現に貢献していきたいと考えています。