「真相解明」で金正恩総書記を交渉のテーブルに
2025/12/30 11:17

2009年4月5日の試験通信衛星「光明星2号」の打ち上げに携わった科学者・技術者らと記念写真を撮る金正日総書記(朝鮮中央通信)、丸で囲ったのは日本から拉致された可能性がある人物
高市早苗首相は就任早々、北朝鮮に対し、金正恩総書記との会談を呼びかけました。しかし今のところ、進展はありません。金総書記を交渉の席につかせるだけのカードがないのです。
北朝鮮への経済支援などいくつかのカードは考えられますが、最大のカードは日本人拉致事件の真相解明だと私は考えます。
日本政府が拉致と認定している被害者は17人。これに対して、警察庁が「拉致の可能性を排除できない事案」にリストアップしているのは871人です。今見えている事件の姿は、氷山の一角なのです。
Tansaで連載し、書籍化された『消えた核科学者』(岩波書店)では、拉致をされている日本人は17人ではなく、もっと多いという視点に加え、北朝鮮の拉致の真の目的に迫りました。自国の技術向上に役立つ日本人を拉致するという目的です。
その象徴的な事例として、『消えた核科学者』では竹村達也さんを取り上げました。動燃(現・日本原子力研究開発機構)でかつて、プルトニウム製造係長を務めた人物です。1960年代から70年代にかけて、「プルトニウム四天王」と呼ばれたほど、日本で最先端の核科学者でした。北朝鮮は核兵器の開発に血道を上げていましたから、竹村さんは拉致してでも獲得したい人材だったはずです。
2025年は、拉致された可能性が高い他の技術者たちの失踪について、さらに取材しました。北朝鮮のミサイル発射に貢献した技術者と、同一と思われる人物もいます。
拉致被害者の家族が亡くなっていく中、拉致事件の取材は時間との闘いです。情報源となる人物も亡くなっていきますし、証拠も時間とともに得にくくなります。
2026年は何としてでも探査報道で成果を出したいと考えています。引き続き、応援のほどをよろしくお願いいたします。
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