出産は女性の心身に大きな負担がかかるもの。一方で、教育・啓発の不足から、産む本人も、そのパートナーも、産後の心身にどんなことが起きるか知らずに産後を迎えてしまうことが多く、その結果、母体の危機、赤ちゃんの危機、産後が起点となる3大危機(産後うつ、乳児虐待、夫婦の不和)が社会問題になっています。また、本人の産後ケア不足で心身の状態が整わないため社会復帰が叶わない、というのも大きな社会的損失です。本記事は、そんな産後ケアに取り組むインストラクター自身のストーリー。どんな想いから、インストラクターになろうと決めたのか。どんな想いで産後ケアプログラムを提供しているのか。背景と想いについて聞きました。
Story
第一子の産後、納得して退職したつもりだったけれど…
大学卒業後は女性向けハイブランドのアパレルメーカーで働いていました。
学生時代から「読書」と「音楽」と「ファッション」に興味があったので、好きなことを仕事にしたい!と就職活動をしていて。
働きながらも“自分のための時間”をしっかりと確保できて、プライベートも充実させられる職場を…と探していたところで、そのアパレル企業と出会いました。
新卒で就職してから29歳で出産するまでの7年間、銀座や新宿などの店頭に毎日立って接客。
社会人になってからも続けていた音楽活動を通して夫と出会い、28歳で結婚、第一子を妊娠しました。
仕事は楽しかったので、産後は職場復帰するつもりだったのですが、当時住んでいた地域が待機児童数ワースト3に入るエリアで、半年待っても保育園に入れずで…。結果、退職せざるを得なくなりました。
保育園事情については以前から耳にしていたものの、本当に保育園に入れないという事実は衝撃的でした。
ただ自分の母親も専業主婦でしたし、そのタイミングで第二子を授かったこともあり、自分の中では前向きにシフトチェンジしたつもりでした。
第二子の産後、“産後うつ”の一歩手前に
ただ、第二子の産後が本当に辛くて…。2歳になったばかりの長男の赤ちゃん返りで、精神的にかなり不安定な日々でした。
第二子の妊娠中に妊娠・出産に関するエッセイや漫画を読み漁っていたので、マドレボニータの『産褥記』も読んで『産後ケア教室』には興味はもっていましたが、そんな長男の預け先もなく、諦めていました。
子どもとの時間を作らないと!という気持ちはありましたが、自分のための時間を確保しようとは思えなかったんです。
赤ちゃん返りした2歳児と生まれたばかりの赤ちゃん2人を抱え、いっぱいいっぱいの毎日で、産後9か月の時に、これは“産後うつ”に片足を突っ込んでいるなと思いました。
その時やっと「私はしんどい。子どもと離れたい。」という気持ちを夫に伝えることができました。
前々から夫は「たまには一人で出かけたりして息抜きしてくれば?」と言ってくれていたのですが、まずは長男の気持ちを自分が受け止めなければ…という想いが最優先。
今、振り返ってみると、なにより自分の時間が必要だったんだと思います。自分の気持ちに気づき、夫にも伝えられたことで、徐々に気持ちが落ち着いてきました。
“第三子、産む?産まない?”問題で育まれたパートナーシップ
そんな第二子の産後の辛さや、妊娠中のつわりがひどいこともあり、私自身、子どもは2人にしたいと思っていました。でも夫が第三子を強く希望していて。
育児や家事の負担は増える一方ですし、大好きなお酒も自分だけが我慢しないといけなくなる。そんな思いも含めて夫と何度も何度も話し合いをしました。
それまで家事や育児の分担は私と夫で9.7:0.3くらいだったのですが、第三子の妊娠中から産後にかけて、夫はフレックス制度を使い朝5時に家を出て、夜6時には帰宅する、という毎日に。
夫も家の中のことを担えるようになり、我が家にとって革命的なターニングポイントとなりました。
この、”第三子問題“があったからこそ、改めて夫と一緒に、よりよい家庭と関係性を築き直すチャンスになったのだと思います。
夫に気持ちを伝えられるようになったことで、自分も無理をしなくなりました。
教室参加をきっかけに、社会復帰への想いが再燃
そんな夫の支えもあり、第三子の産後2か月目に念願の『産後ケア教室』に通うことができました。
とにかくレッスンが楽しくて楽しくて。エクササイズはもちろん、コミュニケーションのワークで自分を主語に語ることで、どんどん本当の想いが溢れてきたことを覚えています。
「自分も社会復帰したい!好きなことを仕事にしたい!」という想いが大きくなっていたんです。
三度の妊娠・出産・産後の経験を生かして、女性が笑顔になるような仕事がしたい。誰かに委ねて終わり…ではなく、自分の力で生活を整えられるようなサポートがしたい。
ぼんやりと描いていた思いが、4回コースのレッスンに参加したことでくっきりと浮かび上がってきました。
ボロボロだった産後の体がどんどん変化していくのを感じられたり、人生についてこんなにも深い話ができる場所は他になかなかない。
同じ参加者の方たちも本当に楽しそうに受講されていましたし、何より前に立つインストラクターがとても素敵で魅力的で。
こういう場がもっともっと広がっていったら、自分も産後ケアの担い手になりたい!と、自分の想いと、未来のビジョンがビビビとつながったような感覚でした。
「尊厳」と「自由」を大切にできる社会に
妊娠して、子どもを出産すると、自分自身のアイデンティティ自体は変わっていないのに、周囲から「ママ」とか「お母さん」と呼ばれ、キャリアが絶たれたり、思うように仕事ができなくなる人が多いのが実態です。
社会からも遮断され、それまで当たり前のようにやってきたことができなくなる。それが、自分自身が産後を経験して、ずっともやもやしていたことでした。
一人の女性として生きることが尊重される。マドレボニータの『産後ケア教室』には、その当たり前があった。誰もが対等で、尊重し合える場をとても心地よく感じました。
私には知的障がいのある親族がいて、家族の中ではそれが当たり前でも、社会に出るとマイノリティとして、弱者になる。このことに強い違和感を感じていました。
産後女性も同様に、社会では弱者になると思います。そんな社会の在り方はおかしいし、変えたい。マドレボニータの産後ケア教室は、自分が感じていた社会課題を解決する場でもありました。
「それぞれが本来持っている力を発揮して、自分らしい人生を歩いていく」…マドレボニータが発信するメッセージがとても心に響いて。
「尊厳」が守られ、誰しもが「自由」でいられる社会づくりに、この仕事を通してなら、自分も力を発揮できるのではないか、と強く感じました。
自分自身を認め、人生を歩み進めるきっかけに
「こんなはずじゃなかった…。」
「社会から孤立して自分はひとりぼっち…。」
「赤ちゃんと二人きりでいるのがつらい…。」
産後、そんな想いを抱えている方にマドレボニータの教室に参加してもらいたい。仲間を見つけてほしいと思います。
私自身、コミュニケーションのワークでは、想像以上の気づきと力を得ることができました。
自分を主語にただただ話し、相手に受け止めてもらえることが、どれほどの力になったか…。
産後の、何者でもなくなった自分が、一人の女性であることを思い出させてくれる、実感できる。他者に認めてもらえることで、自分が自分を認められるようになる。
そんな風に、社会にいる一人一人がお互いを認め合って、自信をもって、自分の人生を歩み進められる。そんなきっかけになれたら嬉しいです。
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