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『他国の性教育との比較』 「コンドームつけなくていいよ」と言ってしまう人に必要なのは 性知識 じゃない。vol.3

2021/7/23 17:29

『他国の性教育との比較』 「コンドームつけなくていいよ」と言ってしまう人に必要なのは 性知識 じゃない。vol.3 Main Visual

他国との比較

 私は「性の悩みを抱える人たちへの支援」「自分で人生を選択する力を育む教育環境の整備」などの事例を知るために、デンマーク、オランダ、フィンランド、イギリスなどの教育機関・医療機関・公共施設など30施設以上を訪問しました。

 これから話す事例は「その国で行われている様子の一部」で、「この教育を日本でもそのまま行うべき、という主張ではない」ということを念頭においてお読みください。

オランダ

 日本のように、必修科目と各科目での中核目標(Kern Doelen)がオランダにも存在し、「人間関係とセクシュアリティに関する教育」もその1つです。

 オランダでの性教育は、悩みを持ったときに「自分たちで解決していく」ための情報収集の仕方、自分の気持ちと向き合い意思決定をする方法、他社の人権や文化の尊重などの包括的な内容を学びます。

 私がオランダのとある小学校を訪問したとき、日本で言う4年生の子たちが図書館を利用し調べ物をするフィールドワークを行っていました。

学校の近くにある図書館には、実際に人が性行為をしている写真アダルトグッズの写真が載っているものなどもあり、そのページの裏には 性病のリスクの話や避妊具の話、性的同意の話、性暴力にあったときの対処の方法なども掲載されていました。

オランダでの性教育では「包み隠さない」をとことん徹底し、そこから「つらい出来事や悩みを打ち明けられる環境があるから、1人で悩まなくていいよ」というメッセージを子どもたちに届けます。

↑オランダの国立図書館の性教育コーナー

 また、学校の先生との話で印象的だったのは「学校教育が終わっても子どもたちが自ら正しい知識をアップデートし続ける方法を教えないといけない。人生を生きていたら必要な知識は常に変わり続ける。」という言葉でした。

子どもたちは性欲や好奇心を持っていますし、隠すことにはなんの効果もありません。今はスマホが普及する前 以上に「根拠のない情報」に子どもたちがリーチしやすくなっています。安全に暮らしていくには、リスクのある行為につながる可能性のあるものを隠すのではなく、リスクと付き合っていく知識を得ることが必要です。

デンマーク

◯ボディポジティブと性教育の関係◯

 デンマークの教育現場を含むあらゆるところで「ボディポジティブ」があふれていました。ボディポジティブが広まった当初は、肌の白が白く痩せていることが理想とされる社会に異を唱える人が主でした。最近では「自分の全てを愛していく」というムーブメントに移り変わってきています。

一見性教育とは関係がないと感じる方もいるかもしれませんが、見た目にかぎらず「自分の存在が価値あると思えること」「自分はバカにされていい存在ではないと思えること」は、性知識をえたあとの行動を左右する重要な要素です。自分の存在を大切に思えない状態では、性知識があっても、自分で人生を選択するのが難しい場合があります。「性知識をえる」ことはゴールではなく、そこから「自分で人生を選択する」、ないしは、選択の先にある「幸せな人生」が性教育の真のゴールです。

「性教育」という言葉が持つ一般的なイメージとは、かなり印象が違うかと思いますが、「行動変容を促す」ところまでで一連の教育です。そして、繰り返しになりますが「ボディポジティブは自分で人生を選択する力を育むために重要な要素」です。

 では、私がどのような生活環境にいてその雰囲気を感じていたのか、具体的にお話ししていきます。

 私が滞在拠点としていた学校(Krogerup Højskole)の図書館に入ってすぐのところに「女性器」の写真を集めたコラージュが貼ってありました。そして、私と同級生たちはその作品をみて「自己肯定していい感覚」を受け取りました。それから卒業前に「私たちも誰かをエンパワメントできるような作品をつくりたいね」と 新しく「胸」の写真で作品をつくって卒業しました。もちろん「積極的に参加したい」と意志表明した人たちだけが参加したものです。

◯なぜ「性器」の写真を見て「自己肯定していい感覚」を受け取ったのか◯

 日本の教科書では綺麗な色とカタチの性器の「」しか見たことがなかった私は、「性器の形はこんなにもさまざま」ということを、単純に知る機会がありませんでした

それに加えて、日本の広告によって「黒い・毛が生えているのは汚い」と刷り込まれていたので、「理想的な性器=白やピンク&毛が生えていない&カタチが綺麗」で、それが普通で、それ以外の見た目の性器はダメだと思い込んでいました。

 しかし、実は「どんな色/カタチが理想的な性器か」なんて、私はこの性器のコラージュをみるまで一度も考えたこともなかったのです。

そんな私が、まじまじといろんな人の性器のカタチを見比べて、やっと自分の中に「こうあるべきという思い込み」があったことに気がつきました。その「思い込み」は、認識もしていないのに私の自己肯定感を勝手に下げていました。

 性器のコラージュのおかげで「自分の中にある偏見」と「多様な見た目の性器」を知ることができました。その2つの知識が「多様性の一部である自分」を肯定するために 役立ちました。「いろんなカタチがあっていいよね」という「多様性を受け入れる側の自分」ではなく、「いろんなカタチ」という「多様性の一部である自分」を見つめて当事者意識を感じる機会になりました。

 デンマークではボディポジティブのコラージュが10年前から流行しているようです。デンマークで育った先生や生徒たちに「性器の作品」に対してもった感情をたずねたところ、肯定的な意見しかなくて驚きました。

 この話は「このやり方を日本で全く同じ方法で取り入れようという話ではない」です。しかし、この環境で私は「自分は見た目をバカにされていい存在なんかじゃない」という感覚を22年間生きてきて初めて得ました。それくらい衝撃的なほどのエンパワメントでした。

フィンランド

 フィンランドの中学/高校生と話しをしたところ、上記の2ヶ国とは、性的な話に関してかなり感覚に差があることがわかりました。性の話だけではなく、パートナーとの関係性も家族に話すのは恥ずかしいと8割以上の生徒が話していました。

だからこそ、学校では丁寧に性知識を教えます。中学校の先生に「恥ずかしい気持ちはないんですか?」とたずねたところ、「恥ずかしくないと言ったら嘘になるけれど誰かが教えないと、子どもたちは好奇心もあるし スマホで何でもみれちゃいますから。」という回答を受け、教員の方のプロ意識を見縊っていた自分を恥じました。

イギリス

 もともとイギリスはヨーロッパの中でも10代の人工中絶が多い国のひとつでしたが、10代の予期せぬ妊娠を防ぐための教育に力を入れて取り組んだ結果、イングランドとウェールズでの18歳未満の中絶率が10年で半数近くにまで減少しています。

 イギリスでは、保険証がなくても「だれでも」「無料で」診察を受けることができ、避妊具も無料で適切なものをもらうことができます。

避妊具の種類も 日本で普及している避妊法だけではなく、「子宮内に入れる避妊具」「緊急避妊薬」などの日本では数万円かかる避妊薬・器具も無料です。そして、なにより日本の医療期間ではまだ処方されない「貼るだけで避妊できる避妊パッチ」などの選択肢があり、予期せぬ妊娠をなくすために必要な選択肢が充実していました。



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