Issues we are working on
鯨類(イルカ・クジラ)は,海洋生態系の頂点にいます。その生態を知ることによって,人間が海洋生態系と共存することへの多くのヒントが得られます。一般に,洋上での鯨類の捕獲・調査は極めて困難です。我々は,ストランディング(漂着,座礁,混獲等)した個体の調査を行い,取得した標本を多くの研究者に無条件で配分し,鯨類研究に貢献します。活動をはじめた2007年以来,少なくとも25種,約1200個体以上の通報を受け,その半数以上について取得した標本を配分しました。例えば,2019年のクロツチクジラ新種認定は,我々の活動の大きな成果です。また,鯨類の胃から出現する海洋ゴミなど,今後取り組むべき課題も山積しています。鯨類研究への貢献はもとより,得られた研究成果をわかりやすく社会に還元したいと考えています。
今まで任意団体として活動してきましたが,活動の継続性と社会への貢献体制を確立するために,2021年よりNPO法人として活動を開始しました。日本の一都道府県であるのみならず,豊かな海に囲まれ漁業が盛んな地球上唯一無二のバイオリージョンである北海道で,鯨類ストランディングに関する活動をすることは,地球規模の意義があると考えています。
Why we are tackling this issue
北海道における鯨類漂着の報告は,2006年までは年間30件程度でした。ほとんどは,報道等による報告を研究機関が見つけて記録したもので,鯨種判定などの信頼性が欠ける事例も多く含まれていました。2007年にストランディングネットワーク北海道が任意団体として設立されて以来,2022年までに1107件,1220頭の報告を受けており,年平均69件,76頭となります。近年は,これらの報告の全件で種判定に用いることのできる写真を入手,約半数で標本を取得しています。これらは,全国15研究機関(国立科学博物館,愛媛大生物環境試料バンク(es-BANK),日本鯨類研究所,北海道大学,帯広畜産大学,東京農業大学等)に,無条件で譲渡し,鯨類研究に寄与してきました。
これをもとに,すでに48報を超える学術論文,6本の博士学位論文,127件を超える学会発表が行われており,日本における鯨類研究の標本提供基盤となっています。中でも,新種クロツチクジラについては,2008年にストランディングネットワーク北海道が標本をはじめて確保したのがきっかけで研究がはじまり,その後得られた6個体の標本を含めて分析し,2019年にNature誌の発行する電子科学雑誌 Scientific Reportsにて新種として発表,全世界3000以上の報道機関で報じられました。
すでに鯨類研究基盤となっているストランディングネットワーク北海道の活動を,持続的に行っていくために,NPO法人化して財政・人材の体制を整えるとともに,アウトリーチ活動を通じて,鯨類保全,鯨類と人類との共存に向けての啓発を行っていく必要があると考えています。
How donations are used
いただきました寄付金は,大切に以下の用途に使用させていただきます。
・漂着鯨類調査旅費(1件につき平均5万円,年間約150万円を要します)
・漂着鯨類調査消耗品費(1件につき平均7000円,年間20万円を要します)
・胃内容物における海洋ゴミ分析
・講演会の開催経費