Issues we are working on
西中国山地自然史研究会は、環境保全・里山文化の継承・生物の多様性などの観点から西中国山地の豊かな自然環境を保全し、地域社会に貢献することを目的に活動しています。
西中国山地は本州脊梁部の西端に位置します。冷涼な気候に支えられた原生的なブナ林や八幡湿原とともに、人が関わってきた里山や半自然草原などが存在します。1991年から旧芸北町が実施した自然学術調査では、貴重な発見が相次ぐ一方、野生生物の生息環境が徐々に減少している現状や、絶滅寸前の生物も存在することがわかりました。
調査に携わった研究者から、地域住民と連携した環境保全の必要性が提起されたことをきっかけに、自然の価値や意義を伝えるための町民講座が始まりました。この取組が発展し、西中国山地自然史研究会が誕生しました。
現在では、地域住民と連携しながら、里山文化を継承するための活動や環境学習を行い、持続可能な地域社会の実現のために活動しています.
Why we are tackling this issue
西中国山地自然史研究会は、貴重な動植物が生息する西中国山地を中心に、その適正な保全に資するための研究活動を長年にわたって実施しています。その成果は、自然観察会をはじめとする住民への啓発活動や、自然環境の適正な利用の促進に活用され、西中国山地のフィールドミュージアムを実践しています。
西中国山地はブナの原生林や湿原など、中国地方有数の自然を有する地域でありながら、行政による研究や保全の取り組みは進んでいませんでした。その中で1995年の発足以来、西中国山地自然史研究会は野外での研究活動を続け、自然観察会などの啓発や自然環境の保全に取り組んできました。研究会が実施している活動は、年間30回を超える自然観察会を中心に、生物多様性の保全に関するワークショップ、動植物の調査研究やそれにもとづく保全活動、成果発信など多岐にわたっています。
近年では、学術調査や保全活動における、都市住民の参加と人材育成にも活躍の幅を広げており、特に、雲月山や千町原などの半自然草原の保全や八幡湿原の再生事業では、町民・行政・下流域市民ボランティアを繋ぐ役割を果たしています。
湿原の保全については、研究会は地域に点在する湿原の調査や保全活動を続け、2002年には湿原を牧場化した場所でワークショップを実施、湿原の保全や再生について議論を行いました。
また、乾燥化した湿地の冠水実験による植物相の変化などの調査も実施しました。これらの成果は広島県に報告され、後に「八幡湿原自然再生事業」へと繋がっていきました。研究会は現在もこれまで調査してきた成果をいかし、再生事業の調査と管理に主体的に取り組んでいます。
草原の保全活動については、研究会は2007年に西中国山地に残された草地である千町原と雲月山で植生調査を実施し、わずか44ヘクタールの草原に、広島県全体の植物の15パーセントを確認して、草地生態系の貴重性や保全の必要性を明らかにしました。研究会では、その後も調査を続けるとともに、地域の住民やボランティアと協働で山焼きを続けるなど、保全作業を続けています。
地域社会との関わりでは、芸北トレッキングガイドの会に協力し、地域で活動するガイドの育成に携わっています。さらに、地域の団体と協力し、森林資材活用や地域経済の活性を進め、里山を再生するための「芸北せどやま再生プロジェクト」に参画し、活動や運営の支援、人材育成の分野を担っています。
以上のように本会の活動は、地域住民・都市住民・研究者など多様な主体が関わって行われること、環境の保全と同時に地域社会の持続性を両立させようとしていること、活動において科学的根拠を大事にしていることが特徴です。
How donations are used
【教育事業】
個性豊かな先生を招いて半月ごとに開催される自然観察会は,自然と仲良くなるための第一歩.専門知識や新発見も,わかりやすく丁寧に楽しく教えてくれます.ブナ林や湿原をはじめ,草原や河川など幅広いフィールドで,植物や野鳥をはじめ,昆虫,サンショウウオ,サツキマスなど,西中国山地特有の生き物たちに会いに行きます.知らないことが分かる,興味がどんどんひろがる,子どもや初心者の方にもおすすめの活動です.
【調査・研究活動】
自然に興味を持ったら,研究会に所属する専門家と一緒に,もっと深く調査してみましょう.観察だけでは得られない,発見や驚きがあるはずです.研究会では,自然再生事業によって復元された霧ヶ谷湿原のカスミサンショウウオの産卵調査や,植生調査など,初心者の方にも分かりやすく簡単に参加いただけるプログラムを用意しています.常に変化していく自然の状態を,定期的に調査し,記録することによって,自然環境が確認できます.
【保全活動】
社会環境の変化や文化の発達の一方で,自然をとりまく環境も変化しています.生態系や景観の保全を目的とし,研究会では様々な活動をしています.例えば,草原や湿原の保全のために,地域住民やボランティアのみなさんと草刈りや火入れといった作業を行ったり,ブッポウソウの営巣環境を提供するために巣箱を作ったりしています.作業の時に開催する自然学習「キッズプログラム」も,保全活動の一環です.