Issues we are working on
子どもの自然体験の不足、地域共同体と担い手の弱体化、教職志望者の実践機会の欠如、里山の生物多様性の劣化が相互に絡み合い、世代を超えた学びと共生の循環が滞っています。これらを同時に解決する仕組みづくりが、私たちが挑むべき課題です。
子どもの自然体験と学びの機会の減少
都市化の進展により、子どもが自然のなかで自由に遊び、挑戦を通じて学ぶ機会は急速に減少しています。
文科省調査でも、屋外での自由な遊び時間はこの30年で半減。小学生の4割以上が「木登りや川遊びをほとんど経験していない」と答える報告もあります。体験の不足は主体性や協働力の伸びに直結し、学年が上がるほど「放課後・休日が充実していない」と感じる子どもが増えています。
また、高校生の約3割が「なりたい大人が身近にいない」と答えており、ロールモデルの不在も課題です。
里山の荒廃と生物多様性の喪失
環境省の報告では、国内の里山景観の約4割が管理不足により劣化傾向にあります。
管理が行き届かない“アンダーユース”によって、生物多様性が失われ、かつて見られた動植物の多くが姿を消しつつあります。国は2030年までに劣化した生態系の少なくとも30%を回復する目標を掲げていますが、都市近郊の里山も例外ではなく、このままでは教育や地域活動の基盤資源そのものが失われかねません。
地域共同体の希薄化と多世代関与の不足
家庭や学校だけでは支えきれない「第三の居場所」が不足し、孤立や体験格差が拡大しています。
内閣府の調査でも、地域に信頼できる大人がいると答える子どもの割合は減少傾向にあります。一方で、放課後児童クラブの登録児童は151万人と過去最高に達しながら、待機児童は約1.8万人。地域の「場」と「担い手」が慢性的に不足しており、子どもを支える大人のネットワークづくりが急務です。
教職志望者の実践機会の不足
学校現場では人材難が深刻化し、教員採用試験の競争率は過去最低(全体3.2倍/小学校2.2倍)まで低下しています。
現場に余力がないため、教職志望の学生が子どもと関わりながら責任を持って実践できる機会は限られています。本来なら教育現場につながるはずの挑戦やインキュベーションの場が乏しく、若者が経験を積み学び合う機会の損失となっています。
Why we are tackling this issue
私たちは、まちの裏庭をひらく営みとして「ASOBO」をつくっています。
ASOBOは1973年に森林組合と姫路YMCAの協力によって誕生し、約1万坪の里山を舞台に半世紀以上、子どもの冒険と成長を支えてきました。
ここでは、木登りや川遊びなどの自然体験が単なる余暇ではなく、挑戦や発見の連続として子どもの自信と主体性を育んできました。同時に、教員志望の大学生は子どもを見守るリーダーとして責任ある役割を担い、大人は安全や運営を支え合いながら共同体をつくってきました。
こうした多世代の関与が「居場所と出番」を生み出し、人と人、人と自然の関係を編み直してきたのです。
今、社会は子どもの自然体験の不足、地域共同体の弱体化、教育現場と担い手不足、そして里山の生物多様性の劣化という複合的な課題に直面しています。これらはバラバラの問題ではなく、相互に絡み合い世代を超えた循環を阻んでいます。
ASOBOはこの循環を再生する拠点として機能し得る存在です。子どもにとっては挑戦を通じて成長できる場であり、大学生にとっては教育の実践を積むインキュベーションの場であり、大人にとっては地域での関わり直しの機会であり、自然にとっては再生活動が進む保全の場となります。
また、ASOBOの価値は「教育」「社会」「地域」「環境」「経済」「研究」という六つの領域に広がります。
教育面では遊びを生きた学びに変え、社会面では共助とボランティアの文化を育みます。地域面では眠っていた資源を共同管理し、環境面では生物多様性の回復を指標化できます。経済面では参加費と寄付を循環させる自立運営を構築し、研究面では教育・社会・環境を横断するデータを蓄積できます。
ASOBOに取り組む理由は明確です。ここは単なるキャンプ場でも学習施設でもなく、人・自然・文化が交わる「まちの裏庭」です。
都市に暮らす人々が気軽に訪れ、子どもが成長し、大人や若者が支え合い、森が再生していく。その営みを世代を超えて受け渡すことこそ、持続可能な社会を築くために今必要な挑戦です。ASOBOはその舞台をすでに持っており、だからこそ私たちはこの課題に取り組み続ける使命があります。
How support is used
いただいたご寄付は、子どもたちが自然の中で挑戦や発見を重ね、成長していく体験の基盤として活かされます。
森や池を含む里山の環境整備や生物多様性の保全、活動の安全管理や教育プログラムの充実に役立ちます。
また、約30名の教員志望の大学生リーダーや地域の大人が学び合いながら子どもを支える仕組みを支え、世代を超えて関わりを紡ぐことにつながります。
さらに、活動の記録や共有を通じて地域や社会に開かれた学びと物語を未来へ手渡す営みにも寄与します。