Issues we are working on
がん経験者さんは主に以下のような課題を抱えています。
(1)身体的な課題
- 手術や化学療法、ホルモン療法による副作用
- 体力や筋力の低下
- がん再発のリスク
手術や治療による影響で体力や筋力が低下するだけでなく、腕が上げづらくなったり、リンパ浮腫などのリスクが高まります。
また、化学療法やホルモン療法の副作用により、脱毛や吐き気だけでなく、関節痛や筋肉痛、手足の痺れやホットフラッシュなどに悩まされています。
(2)精神的な課題
- 不安や落ち込み
- 不眠
- 再発への恐れ
がんになった自分のことを責めてしまったり、今までできたことができなくなることによって自信を失いがちです。
少しでも痛みや違和感を感じると「再発したのではないか」と心配になったり、がんになってからなかなか寝付けず睡眠導入剤が手放せなくなる人も多いです。
(3)社会的な課題
- がんになったことを話せない
- 同じ境遇の仲間がいない
がんは一生を通して二人に一人がなる病気です。それにも関わらず社会的ながんに対する理解はまだまだ浅く、多くの方ががんになったことをなかなか話せないでいます。
また、周囲にがんを経験した人がおらず、孤独を感じている人も多くいます。
Why we are tackling this issue
最初は私のおばが悪性リンパ腫になったことがきっかけでした。
何かおばの力になりたいとがんに特化したヨガのメソッドを学び、多くのがん経験者さんと交流をしていく中で、彼女たちの力になりたいと強く思うようになりました
「がん経験者のためのヨガ」はがん経験者さんが抱えている課題の助けになる力や可能性を秘めています。
特に最近はヨガの研究が進んできていて、がん経験者さんに対してヨガがどう影響を与えることができるのか、多くの論文が発表されています。
(1)身体的な課題に対してヨガに期待できること
- 副作用の緩和
- 体力、筋力、柔軟性の向上
- 再発率の低下
ヨガで全身を動かすことで、必要な体力や筋力を無理なく取り戻すことができます。
例えば乳がんの場合、手術をした傷が瘢痕組織化してつっぱり腕が上げづらくなりますが、ヨガで無理なく伸ばすことで腕が上げやすくなります。
また、リンパ節に転移があった場合、リンパ節を取り除いているため腕がリンパ浮腫になるリスクがあります。
ヨガの深い呼吸と動きは腕に負担をかけることなくリンパの流れを促進させるためリンパ浮腫の予防やケアに繋がります。
「がん経験者のためのヨガ」はこういったがん経験者さん特有の事情に配慮されているため、がん経験者さんが無理なく安心して取り組むことができます。
特に運動を週に60分以上している乳がん経験者さんはがんの再発率が25%低下すると報告されていますが(*1)、ヨガはスポーツのように体に負担をかけることなくご自分のペースで取り組んでいただくことができます。
(2)精神的な課題に対してヨガに期待できること
- 気分の改善
- 睡眠の質の向上
- ストレス軽減
ヨガは心にも働きかけると言われていますが、多くの場合、ヨガをした後はすっきりしたり、心の穏やかさを感じることができます。
これは科学的には気分を向上させたり、うつ状態を緩和させる脳内の神経伝達物質であるGABAが増えるためと考えられています。(*2)
また、ヨガのポーズを通じて身体や呼吸に集中することでマインドフルにな状態になるため、心配や不安などのストレスから解放され心を穏やかにすることができます。
ヨガに継続的に取り組んでいるがん経験者さんは睡眠の質が向上したり、睡眠薬の使用が減ったとの報告もあります。(*3)
(3)社会的な課題に対してヨガに期待できること
- 同じ境遇の仲間と繋がれる
- 安心・安全の中で話ができる
「がん経験者のためのヨガ」はがん経験者さんだけが参加できるコミュニティです。
多くのがん経験者さんは自分ががんになったことを人に話せないでいます。勇気を出して話したとしても、相手の何気ない一言に傷ついてしまうこともあります。
周囲にがんを経験した人がいなかったり、がん患者会に参加するのはちょっと気が引けてしまう場合もあります。
がん経験者さん同士が安心して繋がれる場所。
みんなで一緒にヨガをして健康を取り戻せる場所。
安心して自分のことを気兼ねなく話せる場所。
そんな「場」を作りたい。
それが「がん経験者のためのヨガ」の原点です。
*1 日本乳癌学会「患者さんのための乳癌診断ガイドライン2019年度版」より
*2 Thalamic Gamma Aminobutyric Acid Level Changes in Major Depressive Disorder After a 12-Week Iyengar Yoga and Coherent Breathing Intervention
*3 Cohen, L., Warneke, C., Fouladi, R. T., Rodriguez, M. A. and Chaoul-Reich, A. (2004). Psychological adjustment and sleep quality in a randomized trial of the effects of a Tibetan yoga intervention in patients with lymphoma. Cancer, 100: 2253–60.
How donations are used
寄付金は以下のように活用させていただきます。
(1)養成講座の開催準備
がん経験者さんが「がん経験者のためのヨガ」を日本全国、どこでも受けられるように「がん経験者のためのヨガ」を開催できる仲間を増やしていきます。そのための養成講座を2024年までに開催すること目標としています。
受講者が自信を持って指導ができるようになるため、エビデンスに基づいた知識を得られるよう医師など医療従事者にも協力を呼びかけていきます。
(2)レッスンの運営
現在、朝活と称して誰もが無料で気軽に受けられる「がん経験者のためのヨガ」をインスタライブで平日に毎朝開催しています。仲間を増やし、がん経験者さんが無料で受けられるコンテンツを増やしていきます。
(3)独自の研究
NPO法人シーウィズとして発表できる研究をしていきたいと思います。がんと運動療法に関する研究は欧米では盛んに行われていますが、日本ではまだ少なく、特にヨガに限るとさらに研究数が少なくなってしまいます。
朝活は一年で258回開催、延べおよそ6,000人が参加しています。参加者の多い朝活を通して数ヶ月〜一年に及ぶ臨床データを取ることを2023年度中に開始します。
(4)書籍の執筆・販売
「がん経験者のためのヨガ」のメソッドに則った書籍を執筆・販売することで幅広く「がん経験者のためのヨガ」を知っていただき、ヨガのインストラクターだけでなく、ご家庭でも気軽に活用していただけるようにしていきます。