Purpose
*本来であれば外国人が入れない地区での事業のため、多くの写真を共有することができません。ご了承ください。
教育問題・環境問題・公衆衛生問題・雇用問題に包括的に取り組む
インドのヒマーチャル・プラデッシュ州アグラ市にある貧困地区の小中学校の増改築と、それに並行した学校周辺を中心とする総合的な環境問題・公衆衛生問題・雇用問題に包括的に取り組んでいます。この事業は熊本大学名誉教授の伊藤重剛先生(建築専門家)のリーダーシップのもと、環境課題には熊本県立大学環境共生学部、熊本県立環境センター、そして就労課題には熊本県の企業にご協力を頂きながら進めています。
具体的には:
・校舎の増改築
・コミュニティセンター(兼 図書館/職業訓練センター)の建設
・環境保全と公衆衛生の啓蒙活動
・ゴミの分別とリサイクル化
・街の美化運動
・安全な飲み水の確保
・トイレ汚水や下水道の浄化装置整備
等を支援しています。
わたくしたちの経験上、教育問題・環境問題・公衆衛生問題・雇用問題は、貧困地区共通の課題であり、切り離して考えることは不可能です。貧困の根源は就労できないことにあり、就労できないことの根源は教育を受けられないことあり、教育を受けられない根源は貧困にあるからです。そして貧困だから環境保全も、公衆衛生も後回しになっているのです。
経済発展で拡大する貧富の差
近年インドは経済の発展が著しく、月に探査機を着陸させるほどの経済力・技術力がある国であり、「いったいなぜそんな国に支援をしなければならないのか?」と疑問を持たれる方も少なくないと思います。インドに残る貧困問題も国の経済発展で解消するであろうとお考えの方もいらっしゃると思います。長期的に見ればそうかも知れません。しかし短期的には、急速な経済発展の「犠牲者」がいることも事実です。
実は、インドでは昔からの因習が現代社会でも根強く残っており、生まれた家庭の社会的階級によって就ける職業が決まっています。そして近年の経済発展の恩恵を教授しているのはごく一部の上位階級の人々であり、下位階級の人々は経済発展で急騰する物価のあおりを受け、逆に以前よりも生活が苦しくなっています。実質的には貧富の格差が急速に拡大しているということです。
家計が苦しくなる → 子どもに日雇い労働をさせる → 学校に行かない → 就職できない
富裕層が更に豊かになっていく一方で、貧しい人々は更に貧しくなる負の連鎖に陥っているのです。
わたくしたちは支援しているアグラ市の貧困地区に何度も調査に訪れました。そこでは子ども達が暗い家の中で革靴の縫い付けをしている光景を多く目にしました。その多くが女の子です。何故かというと、この地域では男尊女卑の風習も根強く残っており、男の子は学校に行かせるが、女の子は学校に行かせず、内職や家事の手伝いをさせられることが当たり前となっています。
タブーへの挑戦
このような話を社会的地位のあるインド人に聞くと、おそらくことごとく否定されるでしょう。「インドにそんな地域はない」と。インドは憲法で階級による一切の差別を認めないとしています。まさに「都合の悪い真実」なのです。だからこそわたくしたちは使命感を感じるのです。
実はわたくしたちは1990年代にタイのスラム街の支援をやっておりました。当時のタイのスラム街はこのアグラ市の貧困地区と同じように酷い状態でした。今のインドと同じように、当時のタイは急激な経済発展の裏で、貧困層の人々は物価急騰のあおりを受けて苦しんでいました。そのスラム街に建てた図書館に毎日通ってきては片っ端から本を読み漁る1人の女の子がいました。家にいると両親の夫婦げんかに巻き込まれるので、この図書館に「避難」していたのです。そしてこの子はこの図書館ですべて独学でいろんな知識を身に付けました。この子は今、なんとタイ政府の駐ロシア外交官になっています。
そういうことが起きることをわたくしたちは身を持って知っているので、このインド社会のタブーにも敢えて挑戦してみようという勇気が沸いてくるのです。