Purpose
LD(学習障害)は、文部科学省の定義によると、「学習障害とは、基本的には、全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算するまたは推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を示すものである。」とされています。
教育の分野では、能力的に学習しにくい状況として、Learning Disabilities。医療分野では、機能的な障害として、Learning Disorders。学習の仕方が多くの人の違うという意味で、Learning Differencesという見方もあります。
LD(学習障害)は、自閉症スペクトラム症(ASD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、発達性協調運動障害(DCD)など、脳機能の障害である発達障害の一つとされており、LDと他の発達障害が併存する場合もあります。
文部科学省が2012年に実施した調査によると、全国の小中学校の通常学級に、学習で著しい困難を示す子が4.5%、その中でも読み書きに著しい困難を示す子が2.4%とされています。子どもの総人口は、2014年時点で、小学生が約650万人、中学生が約350万人、合わせて約1000万人です。学習に困難がある子どもは、約45万人いることになります。
学習障害の中で、読み書きの能力だけに特に困難を示す症状は、発達性読み書き障害、発達性ディスレクシアと言われています。発達性ディスレクシアの研究者による2009年の調査では、日本の小学生の8%弱が読み書きに困難があるという結果が出ています。40人学級に3人はいることになります。
発達性読み書き障害の出現頻度は、どの障害よりも高いといわれていますが、認知度がとても低いのが現状です。
LD児は、学習面で、頑張ってもうまくいかない、できないという経験を積み重ねることが多く、大人からも怠けている、勉強ができない子と見られ、自信をなくしてしまいがちです。そのため、発達障害という一次的な問題に加え、不登校、引きこもり、うつ、不安症群などの二次障害になりやすいといわれています。
学校教育においては、2007年から特別支援教育が学校教育法に位置付けられ、2006年に学習障害が新たに通級指導の対象となり、LD児の指導・支援も制度として認められるようになりました。
また、2016年には、「障害者差別解消法」が施行され、公立学校に、障害を持つ人に対して必要な環境整備などの配慮を行う、合理的配慮の提供が義務付けられています。(私立学校は、努力義務)
ですが、自治体により、通級指導教室の設置や、通常学級における合理的配慮の提供など、LD児への支援には差があるのが現状です。
それだけではなく、専門家や専門機関が限られる、検査・診断ができる医療機関が少ない、相談機関の知識や情報不足、保護者や教育に関わる大人のLDの理解が乏しいなどの理由により、社会全体として支援体制が十分ではありません。
このことから、まず、子どもの身近にいる保護者や子どもに関わりのある大人が、LDの知識を持ち、正しく理解し、学習に困難や苦手さのある子どもに気づき、適切な支援に繋げていくことが必要と考えます。
また、HSC(Highy Sensitive Child)は、アメリカの心理学者、エレイン・N・アローンが提唱し、人一倍敏感な子どもという意味です。その著書「ひといちばい敏感な子」により、近年、日本でも広く知られるようになってきました。
HSCは、感覚的に敏感なだけでなく、人の気持ちにも敏感で優しいところがある反面、気苦労が多く、疲れやすい、ところがあります。HSCは、育て方でなるのではなく、持って生まれた気質です。
HSCは、人口の15~20%、およそ5人に1人の割合でいます。
HSCは、深く考える、過剰に刺激を受けやすい、感情反応が強く・共感能力が高い、ささいな刺激を察知する、という特徴があります。
このことから、HSCは、外界からの刺激によるストレスを感じやすく、学校生活や家庭で生きづらさを抱えていることも多くあります。また、最近では、心療内科や精神科など専門医からの指摘もあり、不登校の原因の一つと考えられるようになっています。
このことから、保護者や子どもに関わる大人が、HSCの特性を理解し、必要があれば適切な配慮をしていくことが必要だと考えます。
LDやHSCなどの特性がある子は、周囲から理解されず、努力不足、育て方が悪いなど、誤解を受けやすく、適切な支援が受けられないことが多々あります。さまざまな問題や困難を抱えることで、意欲や自信を失ったり、自尊心を失ってしまうことさえあります。
LDやHSCなど特性のある子ども達の個性を正しく理解し、そのような子ども達に気づき、適正な支援が受けられるようにすることが大切です。
すべての子ども達の個性が尊重され、家庭や学校、社会の中で、その子らしく生きられる環境を整えるために、この事業を実施していきます。
Past Activities
〈2020年度実施〉
◎発達性ディスレクシアの子どもの学習支援〈動画講座〉
◎支援者のための発達性ディスレクシア研修会〈基礎〉
◎子どもの気持ちに寄り添う学びのサポーター養成講座〈4回連続講座〉
◎学習に不安のある子の親のための勉強会・◎HSC-ひといちばい敏感な子-講演会
◎HSCの親のための交流会
◎不登校の子の親のための交流会
Achievements
令和2年度 水戸市協働事業わくわくプロジェクトとして、じゃぁまいいかねっと、障害福祉課、総合教育研究所が協働で実施しました。( 実施期間:令和2年4月~令和3年3月)
発達性ディスレクシアの基礎知識を広めるための活動
発達性ディスレクシアの基礎知識を広めるために、専門家の動画講座を配信しました。
水戸市内の公立・私立の小中学校・幼稚園・保育園の保護者、教員、特別支援教育支援員、開放学級、学童クラブ、放課後等ディサービスにチラシを配布。約3万5,000枚。
2.15市報掲載。
■発達性ディスレクシアの子どもの学習支援〈動画講座〉
○家庭や学校での実態を理解する[基礎編] (約13分) ○通常学級における支援を知る[支援編] (約19分)
講師:宇野彰氏 期間:2020年9月1日~2021年3月31日
受講者: 396名 動画講座受講者343名 (保護者170名 教員45名 支援者49名 その他79名) 発達性ディスレクシア研修会受講者53名
教員対象の活動
■発達性ディスレクシア研修会〈基礎〉
教員対象に発達性ディスレクシアの基礎知識を学ぶ研修会を実施しました。
日時:2020年12月3日(木)15:30~17:00 会場:総合教育研究所 対象:教員、特別支援教育支援員
講師:宇野彰氏 受講者: 53名
■動画DVD配布
水戸市内の公立小中学校、研修会にご参加の学校に、発達性ディスレクシアの子どもの学習支援〈動画講座〉のDVDを配布しました。
支援者対象の活動
支援者を対象に、子どもの気持ちに寄り添う学習支援を学ぶ講座を実施しました。
水戸市内の公立・私立の小中学校の保護者、特別支援教育支援員、開放学級、学童クラブ、放課後等ディサービスにチラシを配布。約2万5,000枚。
■学びのサポーター養成講座〈4回連続講座〉
日時:2021年1月17日、31日、2月14日、31日13:00~16:00
会場:オンライン 対象:特別支援教育支援員、開放学級支援員、学童クラブ、放課後等デイサービス、保護者
講師:大六一志氏、小野村哲氏、松野祐香氏
受講者:28名(支援者17名 保護者11名) ※当初、現地開催では40名参加の予定。自粛要請をうけ、オンラインに変更。
学習に不安がある子の保護者対象の活動
■学習に不安のある子の親のための勉強会
日時:2021年2月4日(木)10:00~12:00 会場:オンライン 対象:保護者
講師:松野祐香氏 参加者:7名 ※当初、現地開催予定では22名参加予定。 自粛要請をうけ、オンラインに変更。
■学習に不安のある子の親のための情報交換会
日時:2020年10月27日(木)10:00~12:00 11月14日(日)10:00~12:00
会場:総合教育研究所 対象:保護者 参加者:10月27日 11名 11月14日 9名
HSCの基礎知識を広めるための活動
HSCの基礎知識を広めるために専門家の講演会を実施しました。
水戸市内の公立・私立の小中学校・幼稚園・保育園の保護者、教員、特別支援教育支援員、開放学級、学童クラブ、放課後等ディサービスにチラシを配布。約3万5,000枚。茨城新聞掲載。
■HSC-ひといちばい敏感な子-講演会
日時:2021年3月6日(土)10:00~12:00
※動画視聴期間:3月7日~31日
会場:オンライン 講師:明橋大二氏
受講者: 558名 (保護者363名、 教員74、支援員39名、幼稚園保育園51名、その他31名)
HSC・不登校の子の保護者対象の活動
■HSCの親のための交流会
日時:2021年3月12日(金)10:00~12:00 会場:オンライン+水戸市役所こみっとルーム 対象:保護者
参加者: 20名
■不登校の子の親のための交流会
日時:2021年2月22日(月)10:00~12:00 会場:オンライン+水戸市役所こみっとルーム 対象:保護者
参加者: 7名
その他の活動
■要望書の提出
12月23日に水戸市教員会教育長、1月13日に茨城県知事、茨城県教育委員会教育長に、水戸市内の小中学生保護者有志とじゃぁまいいかねっとで、学習障害児の学校教育における特別 支援教育や支援の充実を求める要望書を提出しました。
また、2年12月水戸市議会、3年3月水戸市議会で、田中まさき議員が、LD(学習障害)の児童生徒への支援について取り上げてくださいました。
◎事業により得られた成果
●この事業に参加してくださった方は、延べ1,089名でした。
多くの保護者や学校の先生、支援者に、LDやHSCについての基礎知識を知っていただき、認知が広まりました。水戸市との協働で、より公的な事業であったことで、皆さんに広く知っていただけと思います。
●この事業を通し、保護者、学校の先生、支援者からたくさんの声を聞きました。その中で、情報を知りたい、どこに相談したらいいのか、どう支援したらいいのか、二次障害の子が増えている、など。たくさんの方がそれぞれの立場で悩み、困っている現状があることがわかりました。
●ただ、このような状況の中で、一番困っているのは、子ども達です。今、毎日の学校生活や学習をする中で、困っている子どもがたくさんいると想定されます。理解がない・支援体制が整っていないために、支援がなく、その子に合った適切な環境や学習の機会が与えられていない可能性があります。
今現在、困っている子ども達がいる以上、早急な対応が必要であり、引き続き、事業を継続していく必要性があることがわかりました。
●この事業を実施にあたり、たくさんの方々にご協力をいただきました。子ども達の育つ環境をよりよくしたいという意識のある方がたくさんいることがわかりました。
●この事業を通し、保護者の方々と繋がりがきで、水戸市や県へ要望書を提出しました。その結果、水戸市内の小学校にLDの通級指導教室が初めて開設されることになりました。
特別支援教育や合理的配慮の認識や支援体制が整っていくためには、保護者からの働きかけや要望も重要です。保護者の皆さんとは、今後も継続して情報共有、連携をしていきます。
Necessary expenses of the business
〈2021年度活動予定〉
教員対象の活動
■読み書きスクリーニング検査研修会
読み書きスクリーニング検査が実施できるための研修をします。
■発達性ディスレクシア年間研修会(4回)
発達性ディスレクシアの専門的な指導者を育成する研修です。
■特別支援教育・合理的配慮研修会
特別支援教育・合理的配慮についての研修をします。
教員・PTA対象の活動
■特別支援教育・合理的配慮についての研修会講師一覧の配布
小中学校、PTAに合理的配慮等の研修の講師の一覧を配布し、各学校、PTAで研修を開催する際に活用していただけるようにします。
保護者対象の活動
■学習に不安がある子の親のための勉強会
保護者や支援者対象に、学習に困難さや苦手さがある子どもへの支援について学ぶ講座を実施します。
■学習に不安がある子の親のための情報交換会
学習に困難さや苦手さがある子どもの保護者対象を対象に、情報交換や交流の機会とします。
英語に関する活動
■英語学習に苦手さがある子どもへの英語指導の研修会
教員対象に、学習に困難さや苦手さがある児童・生徒への効果的な英語指導法を学ぶ機会とします。
■子どものための英語学習会
英語学習に困難さや苦手さがある児童・生徒対象に、英語の勉強の仕方につて学ぶ機会とします。また、学習への苦手さから不登校になっている児童・生徒もいることが考えられることから、不登校の児童・生徒も学べる機会とします。
■英語クラブ
小学5・6年生、中学生が、フォニックスを使って英語の綴りの習得、ローマ字、アルファベットなどを学ぶ機会とします。また、学習
の苦手さから不登校になっている児童・生徒もいることが考えられることから、不登校の児童・生徒も学べる機会とします。
講演会
■教育に関する講演会
子どもの教育についての専門家の講演会を開催し、新しい教育のあり方を学ぶ機会とします。