
沖縄県南城市内で4ヶ所の学童クラブを運営する、一般社団法人Leikki mokki(レイキモッキ)。
団体名の“Leikki mokki”は、フィンランドで親がこどものために用意する「こどもだけの小さな家」を意味します。こどもが自分らしく過ごす大切な居場所という考え方を大切にしながら、放課後の環境をつくっています。
2023年からはプレイパークの取り組みをスタートし、2025年度のJ-CSTパートナー団体募集事業では、「はじめの一歩部門」(※プレイキット導入などの初期活動支援)に採択。
時にはフェリーにプレイカーを載せて出動するなど、離島地域ならではの活動を推進されています。
今回は、Leikki mokki代表の渡久地辰樹(たっきー)さん、理事の垣花道朗さんに、プレイカーに取り組んだ背景、伴走による変化、地域の反応、これからの展望について伺いました。
「登録制の学童」を越えて、誰でも行けるあそび場をつくりたい
渡久地さんが運営する学童クラブは、木登りや木工など自然の中で自由にあそべる環境が魅力です。しかし制度上、利用できるのは登録した世帯のみ。「地域のこどもみんなを迎えたい」という思いとのギャップに、ずっと引っかかりを感じていたといいます。

転機になったのは、県内の学童クラブ向け研修で聞いた、「川崎市子ども夢パーク」創設者・西野 博之さんの言葉でした。
「誰でも来れる場所、何をしてもいい場所」。
その理念に触れ、自分がやりたかったことはまさにこれだ!と感じたそうです。
ちょうど同じ頃、渡久地さんが運営する学童のひとつが建て替えに。木登りできる木や、こどもたち手づくりのピザ窯があるこの場所を、土日は地域に開放したいという思いを強くしました。
もう一つの学童には裏山があり、山まるごとがあそび場になるような環境もあります。しかし沖縄は公共交通機関が少なく、こどもたちが自力であそびに来るのは難しい。
「こどもたちが自分たちの意思で来ることができなければ意味がない」
その答えとして浮かんだのが、あそび場そのものが動く「プレイカー」でした。
2025年1月には「プレイカーが絶対に欲しい!」と決心した渡久地さんは、知り合いの車屋さんに相談。熱い応援とともに車を譲り受けることになり、3月にはプレイカーが納車されました。
同じ3月、J-CSTパートナー団体募集を知りました。「申請期限ギリギリだと思いながらも、やろう」と、怒涛の勢いで申請を進めました。合間には、「プレーパークせたがや」や埼玉・入間市のプレイカー「いるニコGO」も視察し、学びを重ねました。
「思いだけでずっと走っているので、お金はついてこない状況でした」と渡久地さん。
車に載せるものは学童にあるものだけで足りるのか?と、不安は尽きなかったそうですが、J-CSTによるプレイキットの支援を受けたことで必要な道具を揃えることができ、大きな安心につながったと振り返ります。
時にはフェリーで離島へ。県医師会とのコラボ企画も実現
2025年11月には、県内最大級のイベント「ハイサイアウトドアフェス」に2日間出動。木工あそびでは、こどもたちが主体となって、お父さんお母さんと一緒にのこぎりを使って椅子をつくる姿が印象的だったそうです。木材は学童の建築を支えた大工さんから譲り受けたもの。地域のつながりがあそびを支えています。

離島・伊平屋島のトレイルランイベント「伊平屋トレイルヴィレッジ」にフェリーで駆けつけることもありました。
「県内のいろいろな団体や企業も、こどもの居場所づくりに苦労していたんだと思います。海でのアクティビティやフリーマーケットはあっても、“お金をかけず、ただただあそべる場所”はこれまであまりなかった。こどもがあそびたいと思った時、親にいくら欲しいと相談しなくちゃいけないのは違うんじゃないか、という思いがありました」
プレイカーは評判を呼び、会場で出会った飲食店の出店者から直接声がかかり、新たなイベントへとつながる連鎖も生まれています。

2026年6月には、渡久地さんの娘さんが通う高校の学園祭にもプレイカーで出動しました。高校生が夢中になってあそぶ姿が印象的だったといいます。保護者のつながりから声がかかることも多く、保育を学ぶ大学生があそびに来る姿もあったそうです。
さらに、垣花さんの提案がきっかけとなり、沖縄県医師会の「うりずんフェスタ」と連携。教育プログラム中心のイベントに、こどもが主体的に選べるあそび場を組み合わせ、2,000〜3,000人規模のイベントでプレイカーが活躍しました。
海に囲まれた沖縄だからこそ。「あそびを止めない」防災のしくみを
今後力を入れたいのが、学校との連携による防災の取り組みです。
渡久地さんは地域の学校運営委員・社会教育委員も務め、発災時の炊き出しや避難を見据え「学校で火を使う経験」をこどもに届けたいと考えてきました。
学校側との協議を重ね、2026年8月には1泊2日の学校宿泊型避難訓練の実施が決定。
「まずは、学校に泊まれるんだ、避難所でもプレイカーであそべるんだという楽しさから始めたい」と語ります。
垣花さんは、沖縄の防災の特殊性を指摘します。
「沖縄の場合、本州からの陸路がない。港が被害を受ければ船は使えず、空港が使えなければ空路での運搬も難しくなります。最悪のケースだと1~2ヶ月、県内にあるものだけで過ごさなければならない可能性もあり、本島から出られないことも十分に考えられます」

本土とは異なる避難や支援のあり方を、行政・民間の垣根を越えて考えていく必要があるといいます。そのなかで、こどもの居場所やあそびをどう確保するか。「プレイカーが3台あれば、北部・中部・南部すべてにアクセスできる。学童クラブや児童館との連携もしやすくなる」と、災害時も見据えたプレイカーの可能性を語ります。
最後に、渡久地さんが見据える今後について聞きました。
「学童にいるこどもたちは、木登りも水あそびも、やりたいことをやれる環境にいます。でも一方で、それが満足にできない環境のこどもたちもいる。その子たちのあそぶ環境をどう守るか、自己決定できる環境をどうつくるかを、一歩ずつでもやっていきたい」。
少子化が進む社会の中で、こども側からすれば「やりたいことを制限する大人が多すぎる」という渡久地さん。「せめて僕らは、こどもの側に本気で立てる大人でありたい。こどもたちの思いを聞くところから、一緒に場をつくっていける仲間がもっと増えてほしい」と力を込めました。
全国の実践者に伴走する取り組みを、クラウドファンディングで応援してください!
地域の特色に合わせ、柔軟に活動の輪を広げているLeikki mokkiさん。その姿から、プレイカーが地域ごとの課題に応じて多様な役割を果たしていける可能性を感じました。
あそび with ALLは今年度、全国の実践団体への助成・伴走支援を実施するため、設立記念クラウドファンディングを実施しています。
多くのこどもたちにあそぶ環境を届けるため、ぜひとも応援をいただけると心強いです。


