
千葉県習志野市の湾岸エリアを拠点に、こどもの居場所づくりに取り組む地域団体MAP。
団地内での放課後ジョインスポット(室内プレーパーク)や、「香澄公園プレーパーク」の運営、さらに出張プレーパークなど、多様な形でこどもが自由に遊べる場を地域に展開してきました。
あそび with ALLの前身プロジェクトであるJ-CSTのパートナー団体募集事業では、2025年度に「つくるぞ!がっつり部門」(車両の新規購入を含めた本格活動支援)に採択。
プレイカーを導入した移動式あそび場の本格展開がスタートし、地域の中で新たな広がりが生まれています。
今回は、MAPの代表を務める西村さんに、「移動式あそび場」に挑戦した理由、プレイカーがもたらした変化、地域の反応、そしてこれから目指す姿について伺いました。
能登でプレイカーに遭遇し「どうしてもあれがほしい!」
MAPの活動の原点は、2020年に始まったプレーパークです。
西村さんの次女が大学の授業でプレーパークを知り、一般社団法人千葉県冒険遊び場ネットワークの研修に飛び込みます。その2か月後には、親子で自家用車におもちゃを積んで活動をスタートさせました。
「自分が子育てでやってきたことが、プレーパーク的な考え方と一致していた」と振り返る西村さん。香澄公園で年6回のプレーパークを開きながら、地域のママ友とともに、ゆるやかに活動を広げてきました。
転機となったのは、2025年3月。個人的に能登の被災地を訪れた際、J-CSTのプレイカーに偶然出会います。
そこで目にしたのは、プレイカーの周りで4時間も5時間も夢中になってあそびつづけるこどもたちの姿でした。親御さんたちは「被災してからほとんど外遊びもできなかった。本当にありがたい」と口をそろえていたといいます。

【写真】能登で活動するプレイカーの様子:Chance For All(J-CST主催団体) 提供
「あそびのための車だと一目でわかるし、本当にどこにでも行ける。これだ!と思いました」
J-CSTのスタッフからパートナー団体募集のことを聞いた西村さんは、帰宅後すぐに申請に取り掛かります。「帰った時にはもうプレイカーが欲しくてたまらなくて。MAPのメンバーに相談したら『いいねー!プレイカー私も欲しい。』と言ってくれました」と笑う西村さん。締め切りまであと1週間という中で、みんなで相談しながらつくりあげた応募書類が採択され、プレイカーの挑戦が始まりました。
地域一丸でつくったMAP号
採択が決まり、まず取り組んだのは車の調達。
「とにかく能登で見た車と同じ形が欲しかった」という西村さん。
知人のつながりで中古車のディーラーを営む方に相談し、能登で見たプレイカーの写真を見せました。
「わかりました、絶対に競り落とします」の言葉通り、競りを制して5月末には真っ白なトラックが自宅にやってきたそうです。
続いてはじまった車体のペンキ塗り。高齢者コミュニティの拠点をお借りして作業をしていると、通りかかった人たちが次々と「なにやってるの?」と声をかけてくれました。
「建築の仕事をしていたおじいちゃんが、『(車体に上って滑り降りる)滑り台をつくってやるよ』と言ってくれたり、刷毛の会社を営むおじいちゃんが『一緒に塗る』と塗装を手伝ってくれたり。84歳の人までまざって、一生懸命ペンキを塗りました」

SNSでの告知や現地での出会いを積み重ね、制作段階からみんなに育てられたMAP号。
完成と同時にさっそく地域のキャンプイベントへの出動が決まり、そこで出会った学校の校長先生から防災授業の依頼が舞い込みました。
「出動するたびに、3~4団体から声かけをいただくような状態でした」
こども食堂や地域のお祭り、学童など、出動先が一気に拡大
2025年度、MAP号であそんだこどもたちの数はのべ3,400人以上。
放課後児童教室からは夏のイベントへの出動依頼が来るようになり、公民館でのイベント、市役所の福祉部門からも突然電話がかかってきて、福祉祭りに出展することもありました。
「いまは、こども会がない町内会も多いです。ご高齢の方だけの集まりになってしまって、課題感を感じている人もそれなりにいる。ご高齢の方向けの文化祭の隣にプレイカーが出動すると、こどもたちがたくさん集まってきてくれ、町内会の方にもとても喜ばれました。年2回、定期的に呼んでいただけることになった事例もあります」
ほかの子ども会では、夏のラジオ体操の終わりにQUOカードを配っていたところを、MAP号の1日あそび場に変更。
「公園の中でプレーパークをやっていたころより、いろんな人の目に触れて、さまざまな世代の方から声がかかるようになりました」

チームの士気にも変化が
変わったのは、地域からの見られ方だけではありません。
「以前は『プレーパークって、趣味でやってるんでしょ』という見られ方があった気がします。でも、プレイカーがあることで、私たちの本気度が一目瞭然になった。安全面への意識も一段と高まり、チームメンバー全員がプレイワーカーに関する研修を自主的に受けるようになりました」
また、出動を依頼してくださる行政や団体さんにも、堂々と予算の相談ができるようになったそうです。
「プレイワーカーとしての価値と、プレイカーという“形”が一緒になることで、まちづくりに取り組んでいる存在として認識してもらえるようになった感覚があります」
あそびに関わる仕事で、地域に雇用を生み出したい
デンマークやスウェーデンを訪れ、現地のプレーパークを視察した経験がある西村さん。専門の大学を出た「ペタゴー」という資格保持者が誇りを持ってこどもと関わる姿や、スウェーデンの「余暇指導員」という国家資格の存在に感銘を受けたと言います。
ゆくゆくは、プレイワーカーという仕事で地域に雇用を生み出したいと考えているそうです。
「街中でMAP号を見かけたこどもが手を振ってくれるんです。中学生になっても、MAP号をまちで見かけた時に、あの頃の楽しかった記憶が蘇ってくる。そんな存在になりたいと思っています。走り続けることで、あそび場の記憶が町の風景に溶け込んでいく。それがこのプレイカーの一番の魅力ですね。将来的には、大人が専門性をもってこどもに関わり、こどもが夢中になってあそぶ。それで収入も生まれて…そんな地域の仕組みをつくりたいと思っています。」
最後に、西村さんから、これからプレイカーに取り組みたいと考えている方に向けたメッセージをいただきました。
「駐車場のこと、維持管理のこと、考えれば考えるほどハードルはあるかもしれません。でも実際に持ってみると、本当に夢のような車です。最初の一歩を踏み出してみてください。人が集まってきて、楽しい世界が待っています」
全国の実践者に伴走する取り組みを、クラウドファンディングで応援してください!
MAPさんの実践から見えてくるのは、プレイカーが地域にもたらす大きな可能性です。それはこどもたちのあそぶ環境づくりにとどまらず、多世代をつなぎ、地域を「安心」と「楽しい」で満たしていく力を持っています。
あそび with ALLは今年度、全国の団体への助成・伴走支援を実施するため、設立記念クラウドファンディングを実施しています。
全国の実践者を通じて、多くのこどもたちにあそぶ環境を届けるため、ぜひとも応援をいただけると心強いです。


