【前編】人は何を食べて生きているのだろう〜食とメンタルヘルス、子ども食堂がつなぐもの〜
2026/7/3 08:02

【前編】人は何を食べて生きているのだろう〜食とメンタルヘルス、子ども食堂がつなぐもの〜
1. 高校生からの問い
目次
- 1. 高校生からの問い
- 2. 食べることと心の関係
- 3. 栄養だけでは人は満たされない
- 4. 相談の前に必要なもの
- 5. 子ども食堂が届けているもの
先日、ある高校生が主催する団体から「食とメンタルヘルス」をテーマにしたインタビューを受ける機会がありました。未来を担う世代が、今の社会の歪みや、そこにある「心の問題」に敏感に関心を寄せていることを知り、私自身も背筋が伸びる思いでした。
その中で、一人の高校生がこんな質問をしてくれました。 「悩みのある人に、支援イベントへ来てもらうには、どうしたらいいですか? 本当に困っている人ほど、なかなか繋がれない気がして……」
私はこの問いに、非常にハッとさせられました。なぜなら、これは心理支援の現場に立つ者が、日頃から最も頭を悩ませ、同時に最も大切にしている本質的な課題だからです。
支援の現場では、残酷なほど皮肉な現象がよく起きます。 「本当に助けが必要な人ほど、助けてと言えない」 「本当に来てほしい人ほど、一歩を踏み出せない」
これは、その人が弱いからでも、意志が薄弱だからでもありません。むしろ逆です。彼らは、過酷な環境の中で必死に自分の心を守り抜いてきた、強い生き残り戦略を持っているのです。
2. 食べることと心の関係
私たちは、ともすれば「心の問題」と「食事」を、全く別々のものとして捉えがちです。 「今の落ち込みは、職場での人間関係のせいだ」 「この不安は、親との関係、あるいは環境のせいだ」 「何事にもやる気が出ないのは、私の性格のせいだ」
もちろん、それらはメンタルヘルスに影響を与える大きな要因です。しかし、私たちが日々「どう感じるか」「どう考えるか」、そして「どう乗り越えるか」を司っている脳そのものも、私たちが毎日口にするもので作られているという事実を見落としていないでしょうか。
脳は身体の一部です。脳内で情報を伝える神経伝達物質の材料も、エネルギー源も、すべては食事から摂取されます。毎日の食事、睡眠、そして生活リズム。これらは心の健康を支える「インフラ」です。強いストレスがかかった時、食欲をなくして何も喉を通らなくなる人がいます。逆に、感情のバランスを失い、食べることで必死に心を鎮めようとする人もいます。あるいは、「これしか食べられない」と極端に偏った食事を続けることもあります。
これらは、心が極限まで疲弊している時に現れる、脳からのSOSであり、自然な防衛反応の一つです。心と体は別々ではありません。食事は、単に体を維持するための燃料補給ではなく、心を支えるための、最も根源的な土台なのです。
3. 栄養だけでは人は満たされない
しかし、誤解を恐れずに言えば、人間は「栄養」だけで生きられるほど単純な生き物ではありません。
心理学の歴史において有名な、ハリー・ハーロウによるアカゲザルの愛着実験をご存知でしょうか。母子分離された子ザルに、「ミルクが出るが針金で作られた母親」と、「ミルクは出ないが柔らかいタオル地で覆われた母親」のどちらを好むかを調べた実験です。結果は明白でした。子ザルは、ミルクを飲むとき以外は、ずっと柔らかな布でできた母親にしがみついていたのです。
生きるためには、確かに栄養が必要です。しかし、子ザルはそれだけでは満たされなかった。安心できること、触れられること、守られているという感覚、誰かとのつながり。これらがあって初めて、生命は健やかに育つことができるのです。
この実験が私たちに突きつける事実は、「人間は食べ物だけで育つ存在ではない」ということです。人は、関係性の中で育ちます。誰かに受け入れられ、「自分はここにいていいのだ」と感じられる経験こそが、どんな栄養剤よりも強力に、人の心を支え続けるのです。
4. 相談の前に必要なもの
心理学の世界には「援助希求(Help-Seeking)」という言葉があります。困った時に、誰かに「助けて」と声を上げることです。一見、当たり前の行為に見えますが、これがどれほどの勇気を必要とするか、支援者は常に痛いほど理解しています。
「こんな些細なことで相談していいのかな」 「迷惑をかけるだけではないか」 「うまく言葉にできなくて、否定されたらどうしよう」 「弱い人間だと思われたくない」
相談室のドアを叩く直前、人はこれほど多くの不安と戦っています。そして、何よりも「何かを話さなければならない」「自分の問題を言語化しなければならない」というプレッシャーが、無意識のうちに防衛心を高めてしまいます。初対面の相手に「さあ、あなたの悩みを話してください」と問われて、誰が心を開けるでしょうか。
だからこそ、私はその高校生にこう伝えました。 「まずは、一緒に食べたらいいんじゃないかな」
相談から始めようとしなくていい。深刻な話をすることを目的にもしなくていい。まずは同じ空間で、同じ時間を共有すること。それだけで十分なのです。
5. 子ども食堂が届けているもの
現在、全国の子ども食堂は12,000か所を超えました。この数字を見るたびに、私は「子ども食堂という場所は、本当に食事だけを届けているのだろうか」と考えます。
もちろん、食事の提供は素晴らしい支援です。栄養不足の子にお腹いっぱい食べてもらうこと、温かい食事を届けること。それは間違いなく、子ども食堂の重要な役割です。しかし、その価値は「栄養」という枠を超えています。
そこには、「おかえり」と迎えてくれる誰かがいる。 自分の名前を覚えていてくれる人がいる。 「また明日もここに来ていいんだ」と思える場所がある。 「ダメな自分」をさらけ出しても、そのまま受け止めてくれる大人がいる。
子ども食堂の食卓には、目に見えない栄養素が並んでいます。それは、安心感であり、つながりであり、絶対的な居場所です。そして何より、「一人ではない」という確信です。 誰かと食卓を囲むという行為は、単なる栄養摂取を超え、心と心が同期する、極めて人間的で尊い儀式なのです。

2026年二期目のこども食堂の運営資金
50,000円
2026年二期目のこども食堂の運営資金として、大切に使わせていただきます。
「ごはんとノート。@桜坂」は、小学生から高校生を対象に、
月1~開催
食材費、会場費、スタッフ人件費——
小さな積み重ねで、子どもたちの「ただいま」を受け止める場所を続けています。
1期目無我夢中でやりましたが、クラファンがなければ、助成金の3分の1がまかなえず、大赤字になるところでした。
今回は希望縮小して、
テーマは「継続」
運営側も無理をせず地域に存在し続けることで、通ってくれる方のために、安定した運営をできるように
改善をしていきます。
行政の手足になるつもりもありません。
困っていることを、伝えて、制度や仕組みは年々よくしてもらい、
地域のリソースの一つとして、正しく機能できる仕組みを回していきたいと考えてます。
いただいたご支援は、
・食材・消耗品の購入
・会場維持費の一部
・運営スタッフへの謝礼
として、全額「ごはんとノート」の継続に充てます。
「子育ては、一人でしなくていい。」
その言葉を、ごはんの形にする活動です。
7月7日、私の誕生日に、七夕の日に、あなたの気持ちを子どもたちへ届けてください。

学習障害の発見のためのアセスメントツール
2,200円
学習障害は気付かれておらず怠けや不真面目と思われている場合があります。今期の「ごはんとノート」では地域の中にまだ支援につながっていない読みと書きに困り感をもった子どもを早期発見することも目的としています。



