親元で育っていないということはどういうことなのか⋯何が当たり前なのか⋯

彼らが幼い頃から関わりを持たせてもらっている私達は、彼らのことを心から大切に思っているが、他人でしかない。

困った時に、連絡が来て、一人でいられない時に迎えに行き、一緒に涙し、怒鳴り散らしたりしながら一緒に歩んできた。

腹立たしいときも、苦しいときも、嬉しいときも⋯

ただ、他人なのだ。

「家族」という言葉を人生の中であまり耳にしていない彼は、この病気になって何度となく初めて会った人に「ご家族は？」と聞かれている。

どんな思いをしているのだろうか。

家族がいないという現実を今までも何度となく突きつけられてきたことだろう。

「3人に一人は死ぬ病気ですよ」と言われ、何を考えただろうか。

生きていることが素晴らしいと、言えることを私達がしてあげられるのだろうか。

数々の苦しい瞬間を乗り越えてきた彼から出てくる言葉は、人の心を動かす。

そんな彼との会話を、応援しながら紡いでいきたいと思う。