薬物についての正しい情報を知らないまま、乱用に陥り心身を傷つけて、命を落としてしまう子ども達が開発途上国において少なくありません。
そのような若者たちをなくすために、1993年から「ダメ。ゼッタイ。」国連支援募金運動を日本国内で呼びかけ、国連薬物・犯罪事務所(UNODC)を通じて、開発途上国を中心とした各国で、薬物乱用防止の教育啓発をおこない健康的なライフスタイルの促進に努めるNGO団体を支援しています。
30年以上続く事業ですが、今年は国連の6月26日の『国際麻薬乱用撲滅デー』に合わせて、初めて期間限定のクラウドファンディングに挑戦します。
ぜひ皆様のご支援・ご協力をよろしくお願いいたします!
ストーリー
■ 「それ、ニュースで見た」だけで済ませられない現実
あなたの近所でも、薬物に関わる事件が起きているかもしれません!
近年、日本国内で薬物関連の事件のニュースが後を絶ちません。
日本でも大麻所持などの薬物の犯罪を起こす人は年間1万人を超えており、中でも令和5年には大麻事犯の20歳未満の検挙人員数は過去最多を記録、若者の薬物乱用が急増しています。
大麻事犯における20歳未満の検挙人員(出典:「第六次薬物乱用防止五か年戦略」フォローアップ厚生労働省2024年)
また昨今では、10代の子ども達が身近な薬局で買える咳止め薬などの市販薬を一度に大量に摂るなどの過剰摂取も増えています。SNS上では、特に大麻を使用しても問題ないと思わせるような投稿があふれ、薬物の売人とも秘匿性の高いSNSを使って、中高生でさえも薬物を入手できるという環境があります。都市部にかかわらず、地方都市でも、将来ある若者が薬物乱用に陥ってしまったという報道が相次いでいます。「自分には関係ない」と思っていた問題が、いつの間にか、私たちのすぐそばまで迫っているのです。
(例)SNS上の売買サイト -野菜(=大麻)、手押し(=手渡し)などの隠語があふれています。
SNSを通じて広がる薬物売買や誤った情報。特に現代では、外国語の情報でもAI翻訳を通じて、インターネット上の薬物に関する誤情報に簡単にアクセスできてしまいます。もはやこれはグローバルな問題にもつながるのです。
薬物の問題は、もはや“誰かの話”ではなく、“私たちの社会の課題”です。
■ 国境を越える薬物問題
世界規模でいうと、年間で推定2億9,200万人が薬物を使用しており、これは2012年の調査時に比べて4,900万人も増加していることになります。(出典:国連薬物・犯罪事務所 UNODC World Report 2024)そして、これは世界の15~64歳人口の約18人に1人が薬物を使用しているという計算になります。
日本国外の子ども達にとっても、薬物は身近なものです。たとえば、ウガンダの首都カンパラのスラム街では、14歳~19歳のうち約35%、つまり3人に1人の子どもが違法薬物を過去3か月以内に使用した、という調査報告があります。(出典:National Library of Medicine)
このような中、開発途上国や中所得国など、経済問題、人身売買、性犯罪など、様々な事情から薬物乱用防止教育に十分手が届きにくい国に対して、国連支援募金を通して支援しています。薬物についての正確な情報を知らないまま、乱用に陥り心身を傷付け、命を落としてしまう子ども達をなくすために、1993年から「ダメ。ゼッタイ。」国連支援募金を日本国内で呼びかけ、国連薬物・犯罪事務所(UNODC)を通じてそれぞれの国で薬物乱用防止の教育営発を行い、健康的なライフスタイルの促進に努めるNGO団体を支援しています。
アンナ(仮名:17歳・エクアドル)「薬物乱用に陥らないように、心の痛みや孤独を救いたい」――一人の少女が始めた、心を支える乱用防止活動
アンナ(仮名)は、エクアドルの首都キトに住む17歳の高校生。当センターの「ダメ。ゼッタイ。」国連支援募金による助成金を受けて、彼女が参加した「Strong Personalities(主体性や内面の強さを育てる)」というプログラムは、自己肯定感や意思決定力といった“生きる力”を育むものでした。このプログラムとの出会いが、彼女の人生を変えました。
「予防は、共感することから始まると思います。薬物乱用など多くの危険な行動は、心の痛みや孤独から生まれると気づきました。だからこそ、私は自分のプロジェクトでその声なき声を伝えたかったのです。」
この言葉の通り、アンナは自分の卒業プロジェクトで、薬物乱用防止活動の実践を行いました。自らパンフレットを作り、体験型ワークショップを企画・実施。家族や学校の協力のもと、132人の最終学年生徒に向けて、心に届くメッセージを発信しました。
その活動は学校内でも注目を集め、彼女の想いは同級生だけでなく大人たちにも響きました。
彼女は今、薬物乱用防止の分野での未来を真剣に考えています。
私たちの支援により、アンナが有望な未来のキャリアへの第一歩として、効果的な予防活動を実践していくことが確かになりました。
デボラ(15歳・ナイジェリア)「私にも夢がある」――不安と孤独を乗り越えた少女が、“希望の灯”になるまで
ナイジェリアの小さな町・オドケケレに住む15歳の少女、デボラ。彼女は、人間関係に悩み、自分の未来が見えなくなっていました。そんな彼女を変えたのが、当センターの「ダメ。ゼッタイ。」国連支援募金の助成金を受けて推進されたプロジェクト「家族強化プログラムによる薬物乱用防止」です。
7回のセッションを通じて、家族との絆を深め、将来を見据える力を育てたデボラ。今では「医師になりたい」という夢を堂々と語り、学業に邁進しています。学校でも教会でも、同世代に学んだことを伝えるピア・エデュケーターとして活躍しています。
彼女の影響によって、かつては否定的だった仲間のグループが、向上心を持ち、薬物ではない健全な選択をする集団へと変わっていきました。
このプロジェクトは、デボラのような若者160人以上とその家族を支え、地域に“希望の輪”を広げています。もしこの支援がなかったら、デボラは今も自信をなくし、迷っていたかもしれません。でも今の彼女は、地域の希望となる存在です。
彼女のストーリーは、一つの支援が、いかに個人の人生を変え、地域全体にまで影響を及ぼしうることを語っています。
■ 「ダメ。ゼッタイ。」国連支援募金とは?
当センター主催で1993年からスタートした「ダメ。ゼッタイ。」薬物乱用防止運動に呼応して、乱用のない社会環境づくりのために募金活動が全国展開されており、集められた募金は国連薬物・犯罪事務所(UNODC)を通じて、開発途上国や中所得国において、薬物乱用防止活動を行っているNGO団体のプロジェクトを援助しています。
6月20日~7月19日までの1ヶ月間を集中運動期間とし、40を超える多くの機関や団体様からの協賛や、厚労省など公的機関の後援を受けて、募金活動を実施しています。これまで約7億5500万円を国際連合薬物犯罪事務所(UNODC)に寄付し、開発途上国を中心に、延べ659の国と地域で、790のプロジェクトを支援してきました。
募金活動の様子(写真)
■ 支援実績
レバノンでは11~15歳の若者を対象に、ライフスキルやメンタルヘルスに関する講習を通して自己管理能力や対人スキル等を学ぶことで、薬物使用を予防する活動を行いました。本プロジェクト「Empowering Youth, Building Strong Foundations(若者に力を与え強固な基盤を築く)」は、11~15歳の若者を対象に実施されました。ライフスキルやメンタルヘルスに関する講習を通して、自己管理能力や対人スキルなどを育み、薬物使用の予防を目的としています。
あわせて、薬物乱用のリスクに関する知識を広めるための青少年向けの啓発活動も行いました。また、若者自身が乱用防止活動に参加できる機会を提供し、さらに保護者向けの支援プログラムも実施しました。
レバノンでの家族を含むワークショップの様子
またインドではケララ州で薬物乱用が危惧される30校の約9,000人の子ども達を対象に、薬物使用防止教育を実施しました。この教育により、今までに30万人以上の子どもたちや教師、保護者が薬物の有害性について学ぶことができました。
教員対象の研修の様子
当センターの国連支援募金はこれまで、開発途上国延べ659の国と地域で、790のプロジェクトを支援してきました。
このような当センターの貢献に対し、国連薬物・犯罪事務所(UNODC)のワーリー事務局長からは、下記のように当財団の長年にわたる支援に感謝の意が示され、今後も実りある協力関係を継続していくことへの期待が寄せられています。
「私たちは予防の力を決して過小評価してはなりません。若者の健全な育成に投資することは私たち共通の未来への投資なのです。(中略)麻薬・覚せい剤乱用防止センターの長年に渡る支援に感謝いたします。UNODCは私たちのパートナーシップを誇りに思っていますし、子供や若者による薬物使用防止を予防するために実りある協力関係を更に何年も続けていくことを望んでおります。」
(2023年国連麻薬委員会における日本政府主催の国連支援募金30周年記念サイド・イベントにおけるスピーチより抜粋)
当センター藤野理事長と国連薬物・犯罪事務所(UNODC)ワーリー事務局長
国連の公式ウェブサイト内にも、この国連支援募金によるDAPC助成金の特設ページが常設されるなど、この募金活動に対する期待の大きさがうかがえます。
https://www.unodc.org/unodc/en/prevention/youth-initiative/dapc-grant.html
国連ウェブサイト内に常設された特設ページ(英文のみ)
今回は、30年以上続く中で初めての期間限定のクラウドファンディングへの挑戦となります。
※さらなる詳細は当センターのHPをご覧ください:https://www.dapc.or.jp/torikumi/31_donation.html
担当スタッフの想い『薬物は遠い話じゃない。誰かの未来が壊れる前に、できることを。』
こんにちは。今回のクラウドファンディングの担当をしている、麻薬・覚せい剤乱用防止センターの菅家と申します。
この国連支援募金の期間限定のクラウドファンディングに挑戦するのは、当センターとして初めてのことです。
私自身、この取り組みには個人としての強い想いがあります。
大学卒業後、オーストラリアやイギリスに滞在・留学していた頃、薬物が非常に身近な環境に何度も出会いました。
滞在先のシェアハウスでは、大麻を常用するルームメイトがいて、キッチンに無造作に置かれている光景もありました。
イギリスでは、シーンや気分に合わせて覚醒剤やLSD、MDMAを使うという女子学生に出会い、私自身も薬物を勧められたことがあります。
もちろん私は断りましたが、その時一緒にいた友人は薬物に手を出し、摂取後に極度の体調不良を起こし、奇妙な言動に陥ってしまいました。
そして、音信不通となっていきました。
さらに、薬物乱用が蔓延する地域には必ず犯罪がつきまとっていました。
昼間に街を歩いていた友人が強盗に遭い、私自身も街中で、薬物の影響と思われる意識朦朧とした人物からお金をせがまれることもありました。
近所では、薬物やアルコールを摂取したティーンエイジャーたちが集団で町にたむろし、恐喝をしたり、路上駐車の車を破壊したりしていました。夜中になると毎晩のように、けたたましく盗難警報が鳴り響いていました。
私はその体験を通じて、「薬物は個人の問題にとどまらず、家族や社会全体に波及する恐ろしさ」を深く実感したのです。
「一線を越えないための予防」がすべての鍵
そして帰国後、薬物乱用防止活動の非営利団体代表として16年以上ボランティアとして従事し、学校での講演活動や街中で啓発小冊子を配布したりする中で、薬物がどう有害なのか、なぜやってはいけないのかを一人一人が自分ごととして理解することが、最初の一線を越えないための予防の有効な策だと強く思いました。
昨年当センターへ入職し、今では小学生男児の母ですが、自分の子どもが大きくなった時に、薬物が蔓延する世の中ではなく、薬物乱用のない安全安心な世界であってほしいと心から願っています。
今回のクラウドファンディングでは、皆さまからのご支援を通じて、世界各地で薬物乱用の予防・啓発を行うプロジェクトを国連を通じて後押しします。
具体的には、貧困や人身売買、教育不足、性犯罪など様々な問題を抱える開発途上国へ向けて、薬物乱用防止のプロジェクトを助成する資金(国連支援募金)を募ります。
助成先の国やプロジェクトは、当センターとの協定に基づいて国連薬物・犯罪事務所の方で審査し決定しますが、科学的根拠を踏まえた効果のあるプロジェクトが選ばれます。
未来ある子ども達を薬物の魔の手から守り、自分の夢や目標に向かって生き生きとした人生を送る子ども達を一人でも増やしていきたい――。
その思いで、私たちはこの挑戦に取り組んでいます。
薬物乱用のない安全安心な社会づくりのため、皆様からのお力添えをどうぞよろしくお願いいたします。
補足:シンガポールでの国際会議にて。マレーシア、パキスタン、バングラデシュの薬物乱用防止に関わる人たちと。(右から2人目が私です)
アジアの他の国の方々との会話で、薬物汚染の深刻さと日本に求められるリーダーシップを肌で感じられました。
あなたの寄付が開発途上国の薬物問題から若者たちを救います。ー薬物乱用のない世界の実現に向けて
経済問題、人権問題など様々な社会問題を抱える中で、資金不足の開発途上国や中所得国においては、薬物乱用防止教育が十分に行きわたりづらく、その国の若者たちは薬物に対する知識を持たないまま薬物の魔の手にさらされています。薬物に無防備であるがゆえに乱用に陥り、自分の健康を損ね、輝かしい未来への扉を閉ざしてしまう若者たち。
そんな若者たちをなくすため、32年間、国連支援募金を通して、薬物乱用を防止し、健康的なライフスタイルの促進に努めるNGOを支援してきました。
若者たちの健全な育成に投資することは、私たち共通の未来への投資となります。
あなたからのご寄付・ご支援をお待ちしています。