「WANへの応援メッセージ」 新垣 涼 コピーライター/フェミニスト
2020/1/9 01:05
フェミニズム。これほど劇的に私の人生の価値観を変えたものはない。地元を離れて一人東京の大学に出てきたときよりも、初めて海外に行ったときよりも、フェミニズムが私に“インストール”された瞬間のインパクトは大きかった。
何しろ、生まれて初めて自分を「女」だと意識したのだから。
子どもの頃、自分にできないものなどないと思っていた。
ただ、小学生・中学生と過ごす間に「どうして男の子だけ?」と思う瞬間が時々あった。高校にあがり、大学受験を目前にして遂に私が目の当たりにしたのが「女がこれ以上勉強したって何もならん」と父親から言われて医者の夢を諦める友人の姿だった。
社会人になっても、なぜか後から入ってきた後輩男性社員のほうが先に役職がつく。男性上司は当然のように言う「彼は今度結婚するからね」と。育休明けの先輩は戻る場所がないとパートタイムに降格したというのに?
いまの30代以下の女性たちはバブルの恩恵などまともに知らない。
「みんなが大人になるときには景気も回復してるよ」なんて中学校時代の担任は気軽なこと言ってたっけ。そこから10年経ち、私たちの世代は「超」がつくほどの就職氷河期のなか必死で職を求めた。どこでもいい、やっとの思いで掴み取った会社はお茶汲みと電話当番を女性にだけ押し付けるところだった。私はこの全てが“社会”なのだと、ずっとずっとそう思って生きてきた。
そして昨年、上野千鶴子先生の「女ぎらい」を図書館で偶然見つけた。
手に取り、パラパラと捲った瞬間に“やばい本”を読んでいる感覚に陥った。「こんなこと言っていいのか?」。焦った。立ち読みしている姿を他の人に見られたくなくて、急いで借りて一人でこっそりと貪り読んだ。パートナーにだってバレないように。
「女だから」それを理由に自分を諦めてきた日々が次々とフラッシュバックした。
同時にこの怒りや悲しみをどう伝えていくべきなのか、どうすれば第二の「私」が生まれてくることを阻止できるのか、女性が「女」であることに自信を持って生きていける日がくるのか。そして、何より私が女を理由に「私」を諦めることのない日は実現できるのか。
そんな思いのなか、門戸を叩いた(というより蹴破った)のがWANだった。
私を目覚めさせた上野千鶴子先生が多くの人に向け、広く開いている場所だ。
上野先生は突然やってきた見ず知らずの私の言葉に真剣に耳を傾けてくださり、そして一言、「あなた、今日はそれを言いにここに来たの?面白いじゃない」と。
私は現在、WANであらゆる女性問題をアカデミックな観点から学んでいるが課題もすでに見えている。綿々と続く女性たちが闘ってきた歴史をいかに次世代へ伝えていくか、そして未だ達成されない女性の声ある政治をいかに実現するか、全国の女性たちをいかに繋いでいくかだ。
WANは女性に関する最新の情報が行き交い、多くの歴史が蓄積される非常に価値ある場所だ。
ただ、課題は山積。世界的なフェミニズムのムーヴメントの後押しがあるとはいえ、ジェンダーギャップ指数110位(2018年)の日本で暮らす女性たちにはまだまだ多くのリソースが不足している。
そこで、この場を借りてどうかお願いです。
あなたのお力を貸してください。
未来の女性のために、そして何より日本の未来のために。
女性が女性であることを悔やむことのない世界をつくるために。
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