「わからなくなったことが一番の学びでした」ネパールでの経験がくれた気づきと迷い──園部心望さんインタビュー
2025/7/23 16:42

高知大学に通う 園部心望(そのべここみ)さんは、大学1年生の春にHĀWĀのケアボランティアプログラムに参加しました。「わからなくなったことが最大の気づきだった」といいます。帰国後もHĀWĀのサポーターとして関わる園部さんに、現地での体験とそこで得た学びについて聞きました。
きっかけはInstagram。子どもと触れ合えることに惹かれて
「HĀWĀの存在はインスタで知りました。私自身、過去にフィリピンやルワンダに海外ボランティアで行ったことがあって、次に行くところをInstagramで探していたんです。私は子どもの教育に関わりたいという想いがあったので、子どもとの関わりを軸に探していたなかで、HĀWĀの活動が目にとまったんです。」
園部さんが参加したのは、スラムのアフタースクールや孤児院に関わる “ケアボランティア” 。自分で考えて動ける自由度の高さが魅力だったと言います。
「スケジュールがカチッと決まっているんじゃなくて、自分でやることを見つけて動いていける。自主性を大切にしてくれるプログラムなのがすごく良かったです。」
英語の授業を自分で考え、子どもたちと一緒に学ぶ
思い出に残っている活動は、10〜11歳の子どもたちに授業をしたこと。60分間の英語の授業を実施しました。
「現在完了の表現など、中学校2,3年生くらいの内容をやってもらったんですけど、すぐにできちゃって。ネパールのおすすめの場所を書いてみようみたいなのもスラスラ書けていて、レベルが高くてびっくりしました。他には、英語で脳トレをしたり、カードゲームをやったりして、英語自体を学ぶというよりは、英語を使って活動することがこの子たちには合ってるんだなと思いました。」
SNSや本の情報だけでは得られない広くて深いリアルを感じた
渡航前、園部さんはSNSや本などを通してネパールのことをリサーチしました。
「さまざまな民族がいること、たくさんの神様がいること、貧富の差による教育格差があること、スラムがあること...。でも、実際にネパールの活動で見えてきたのは、民族や家庭によっても教育に対する考え方が違うという現実でした。」
「現地の先生から “民族や家庭によって教育を重視するかどうかが違う” という話を聞いたことがすごく印象に残っています。教育よりも家業を大事にする民族や家庭もいると...。日本だったら、学校に行けてないってだけで問題になると思うんですね。それは親の義務だから。だから、”教育が受けられないのはかわいそう” って思い込んでいた自分に気づいて、すごく考えさせられました。」
「学校に行けない子どもたちがいてかわいそう。学びたいのに学べなくてきっと悩んでるんだろうな。みんなが同じようになるために指導してあげなきゃダメなんだろうな、みたいに思っていたんです。だから、教育環境を改善すればみんなが幸せ、みんなが笑顔っていうのが支援の形としてあるって思っていました。でもそれが全てではなくて、民族とか家庭での大切な価値観がある。学べないからそれは不幸だ、というわけじゃない。学べなくても幸せな子たちもいることを知りました。」
「改めて ”途上国への支援” っていう視点で考えてみると、誰もがもっと良い環境になるようにとか、みんなが平等に貧困から抜け出して良い教育が受けられるようにとかがよく言われます。もちろん改善したほうがいい現実もあります。でも、教育よりも家業を大事にする文化もあるわけで、それを大事にすることは、多様性を大事にすることでもあるなって思ったんです。それをかわいそうだという理由で平等にするのが絶対に良いということは言えないんだなと思いました。」
「わからなくなったこと」が、一番の学び
支援のなかには、「善意による価値観の押し付けがある」ともいいます。
「例えば、全部日本式の教育にしたらいいのかって言ったら絶対そうじゃないし、美徳とされていることとかも全然違う。だから、現地の人たちの考えとか意思とかを汲み取って、私たちができることを広げていくことが大事だと思います。でも、私たちの理想にはできないし、理想通りにするのは違うという感覚を持つことも重要だと思います。それは私たちの育ってきたバックグラウンドが基準になっているから。」
園部さんにとって一番大きな学び、それは「わからなくなったこと」でした。
「じゃあ本当はどういう形の支援が良いのか。支援のゴールってなんだろう?って考え始めて、正直言ってよくわからなくなりました。それはネガティブな気持ちではないんです。視点が広がってわからなくなったっていうイメージです。」
対話を大切にするHĀWĀ。それは支援の本質かもしれない
「ネパールでの活動中、他のプログラムに参加している仲間やHĀWĀの代表であるようたろうさんとたくさん対話をしました。自分の感じたことをシェアし合う時間が楽しかったです。考えや感じ方が一人ひとり違うので、学びが多かったです。」
「支援の正解ってなんだろう」と考える中で、園部さんが大切だと感じたことは、まさに ”対話” でした。
「お互いに考えをシェアしたり、学び合うことはどんな場所でもどんな環境でも一緒だと思います。対話を通して相手から学び、自分の考えを深めていくこの感覚は、これからも絶対に忘れちゃいけないと思いました。相手の価値観や背景を知ろうとする姿勢や異なる考えを受け止める柔軟さ。それが支援の本質かもしれないって思っています。」
迷っているいまが心地いい
帰国後もHĀWĀに関わり続けている園部さんは、現在、これから渡航する参加者のサポートを担当しています。
「ネパールでの経験は本当に楽しく、私にとって大きなターニングポイントになりました。これまで持っていた価値観が揺らいで、“迷っている” という感覚です。ただ、それはネガティブな意味での迷いではないことを伝えたいです。支援の方法はどうあるべきか、本当に私たちのスタイルでいいのか、様々な気づきがあり、迷いながらも今のこの状態が、ある意味で心地よく感じています。」
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