冬の北海道にはサンバが必要かもしれない
2025/6/3 09:30

マ○ケンサンバⅡブーム再燃の2023年,老若男女がマ○ケンに誘われ,一度は(心のなかだけでも)軽くステップを踏んだことでしょう。つまり,誰もがサンバを踊ったわけです(あれがサンバかどうかの議論はまたの機会に)。
そんなサンバの熱気が冷めやらぬ2023年の暮れ,氷点下の北海道で野外調査の機会がありました。
最初は凍てつく雪の上でも特に何も感じません。靴底が足裏を守ってくれます。頼もしいですね。
しかし,徐々に冷気が靴底を貫通し,足裏が痛いほど冷たくなってくる,接地時間を短くしたい,もちろん体全体だって寒気を訴えて,動いて体を暖めたい…
そう,やっぱりサンバが踊りたくなるわけです。
12月6日,既に雪深いえりも岬近く,様似町鵜苫海岸に,きっと幼いのであろう小さな(といっても3m以上ある)ハッブスオウギハクジラが打ちあがりました。
満潮時に波のかぶる位置にも関わらず,自治体のご厚意でブルーシートに包んでいただいた鯨体は食害がほとんどなく,自然に冷蔵されたきれいな状態でした。
報告数の少ないハッブス,きれいなハッブス,骨格標本用に骨まで収集するハッブス———
時間もマンパワーも気合も十分,できる限り情報を得るぞ!!と学生のみで結成された調査チームは意気揚々解剖にとりかかりました。
前半は日も差しており,かつひたすら脂皮を剥ぎ,筋肉や骨を外す全身運動です。な~んだ全然寒くないじゃ~んむしろ汗かいてきちゃったよ~と余裕しゃくしゃく,作業は順調に進みました。
しかし内臓にとりかかるころには,曇りとなり体感気温は急降下。手元での細かい作業が増え,かいた汗も冷えてきました。
ここで,足元の冷えが効いてくるのです。
痛み始める足裏,いつしか冷えは全身におよび,指示を出すにも口が回らない,細かく動かそうにも震える手……さらに気づけば,クジラまであと1mのところに上がってきていた潮位。気合はどこへやら,水没の危機にもはや半泣きで内臓をつなげたまま取り出し,高台に引き上げました。
足先の感覚がなくなり,どうやって歩いているのか?地面を感じないよもや浮いているのでは,と思える頃にようやくすべての標本収集が終わり,フンペヤン号へ引き返しました。調査員そろってプール前のシャワーを浴びた小学生並みに口唇が真っ青だったのをよく覚えています(もしかしてこの例えは出身地域によっては伝わらないでしょうか)。
暖房をガンガンにきかせたフンペヤン号の中は天国でした。
調査の帰りは反省会をするのが恒例なのですが,やはり今回の議題は寒さ対策。
あれだけ冷えているのであれば,カイロを足裏に貼ったところで焼け石に水,ぬかに釘,暖簾に腕押し。
やはり根本対策が必要だ,体の中から熱を生まねばならぬ,地面からの冷気が原因だ,接地時間を短くしなくては,ドラ○もんみたく3cmくらい浮いてみるか……そんな中,誰ともなく言ったのです。
「サンバを踊ったらいいんじゃないか…?」
———サンバ ビバ サンバ。
ちなみにこれ以降,厳冬下での野外調査がまだなく,残念ながらサンバを踊る機会は訪れていません。
みなさんも冬の野外調査の際はぜひサンバを検討してください。
(N)
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