買春処罰の危険性を訴えるリーフレットを作成し、セックスワーカーの生活を守りたい!!

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任意団体 SWASH

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SWASH(Sex Work And Sexual Health)

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買春処罰がSWに与えた影響に関するレポート

2024/9/30 18:31

買春処罰がSWに与えた影響に関するレポートのメインビジュアル

掲載日:2024年9月30日 執筆者:げいまきまき

SWASHは2024年7月18日~22日にパリに行きました。フランスでは買春処罰法が2016年に施行されましたが、セックスワーカーへの影響についても調査が行われています。

私たちの目的は、買春処罰法の影響、どのような支援の取組がなされているのかをセックスワーカー団体や法律家にリサーチすることです。

私たちがパリに滞在した期間は異例的に暑く、パリ五輪直前でもあったため、短い日程ながら日に日に交通規制が厳しくなり、頻繁にパトカーのサイレンも聞くようになりました。

パリに限らずですが、五輪に代表される大きな国際的に大きなイベントが催される時、浄化の名のもとにセックスワーカー達の居場所は壊され、街から追い出されていくことは少なくありません。なので、ファストフードのハンバーガーのパンがトリコロールカラーに、なんて浮かれた光景に笑う時も何だか苦い気持ちがぬぐえませんでした。

ここでは、パリで伺った買春処罰法についてと、話を伺った団体「Les Roses 'adcier(鋼の薔薇)」、「Jasmine(ジャスミン)」、「Lotus Bus(ハスのバス)」、法律家のサラ・マリーの取組をレポートします。


「鋼の薔薇(Les Roses 'adcier)」のオフィスも入っている、パリのACT UPに飾ってあったセックスワーカーへの暴力の終結を願うポスター。


【買春処罰法】

買春処罰法がセックスワーカーに与えた影響について、各団体から話を聞きましたが、重複する回答も多いので、まとめて報告します。

買春処罰法がセックスワーカーに及ぼした影響について、とにかく全員が言及したことは「セックスワーカーへの暴力が増えた」「生活状況が悪化した」「収入が減った」ということです。

セックスワークを十把一絡げで「搾取」とし、セックスワーカーを「社会の犠牲者」だと思えば、買春処罰法は「利用者が減るならセックスワークをしなくて済むようになるよい施策」に見えるかもしれません。

しかし、多くのセックスワーカーにとっては、そこで得るお金が、自分の家族の暮らしや健康を支える糧なのです。同じ質量で同じ額のお金が得られる、その人が望む手段があればぜひそれを教えてあげてください。

そうでないのなら、今ある経済、教育の格差、障害の有無etcが不利益に繋がってしまうような社会的構造のひずみの解決無くして、セックスワークさえ無くなれば解決する物事は殆どないはずです。


そうなった理由、構造について述べます。

買春処罰法は利用客を罰する法律です。

なので多くの「逮捕されたら困る客層」の利用客が減りました。仕事、家族等、つまり逮捕によって生活を乱されたくないものを持つ層で、利用客の中で一番多い層です。

一般的には「逮捕されたくない」なんて皆そうなのでは?と思いますよね?

しかし、日本でも「無敵の人」と言われるような、何かしらの困難や苦しみを、他人への攻撃や嫌がらせに転嫁させる人がいます。或いは「売春婦なんてめちゃくちゃに扱ってもいい」と思う人達。そうした層が利用客として残りました。日本で言えば「クソ客(暴力を振るったりやお金の支払いがよくない等)」が残ったのです。

客足が減ったことでセックスワーカー達は稼ぎも減ります。良くない客はそこにつけいります。値段を負けること、ハイリスクなプレイ、コンドームを着けずにプレイすること等を要求します。

重ねて、客を逮捕させないために、今までのように人目のある街のストリートで交渉をするわけにもいかなくなりました。今まで使えたホテルも使えなくなりました。森の中、港等人目につかない場所に車で移動して交渉やセックスワークを行うようになりました。

世界中の多くのセックスワーカーの収入はお客がつかないことには発生しません。

なので減った客数をカバーするためにも、今までなら断っていた交渉ものまざるを得ない状況が作られました。セックスワーカーの為にと作られたはずの法律によって。

次に買春処罰法が、セックスワーカーの為に作られたのか?為になっているのか?について解説します。

アジアからの移民が多いエリアのモニュメント。主に中国からの移住者セックスワーカーへのアウトリーチを行う「Lotus Bus」の活動拠点の一つのエリア。


【「買春処罰法」はセックスワーカーの為に作られたのか?】

結果は「いいえ」です。

では何の為に?まずは人身売買の被害者を減らす為です。この目的は叶ったのでしょうか?

これまた結果は「いいえ」です。

人身売買の多くの場合、出身国の人身売買の業者に借金をして国を移動します。なので、返済が必要になります。人身売買が認められた場合は、その借金を帳消しにする国もありますが、借金が無くなったとして、家族への送金、自身の生活の為にお金が必要です。人身売買で売られるということは、そもそも、自国でも充分な収入が得られていなかったということです。そして異国では、言語の問題も重なり、収入のいい仕事に就ける可能性は更に低くなります。

貧困の構造は世界中の大きな問題ですが、セックスワークや利用客を規制しても、それらの問題が無くなるわけではありません。お門違いな矛先を向けられているのがセックスワーカーです。

フランスでの買春処罰法は「出口プログラム」という福祉制度があります。これは「二度とセックスワークをしない」という趣旨の宣誓と引き換えに月に€300支給されるというものです。(フランスの月収中央値は2,091€)

これでは一人分の生活だってままなりません。なので家族を養っているワーカーには検討も出来ないシステムです。引き換えにと書きましたが、支給までに宣誓と申請の後数か月を要します。それでは生活が持たないので、このシステムを利用する人はとても少ないです。

どうしてこんな杜撰なプログラムで「セックスワーカーの為に」「人身売買の被害者の為に」と言えたものでしょうか?

実際の理由が別にあるからです。


この法律が最初に出来たスウェーデンでは「政策輸出の為」だと言われています。

なので法案が可決された際にセックスワーカーに及ぶ人権侵害の影響を鑑みて反対した政治家は、賛成した政治家たちから「上手くやれよ」と声をかけられたそうです。フランスでは「モラル」日本語でいうと「公序良俗」の為です。

「売春婦がいる街にしたくない」「お金と対価でセックスするなんて」「仕事として売春を選ぶ人なんていないに決まっている(だから辞めさせることが正しい)」というような道徳的観念からのセックスワークへの嫌悪が大きな後押しとなってこの法律は可決されました。

セックスワークについて、道徳観念が人権を凌駕することは世界中、日本でもよく起こることです。


【当事者の抵抗】

この法案は立案から可決までに3年かかっています。こんなに時間がかかった理由は、当事者からの反発が大きかったからです。

身元がわかることがハイリスクになる移民セックスワーカー達が、顔がわからないよう工夫をこらしてでも抗議デモに参加しました。何故ならこの法律の悪影響を受けるのは自分たちだと理解したからです。

この法律が作られることについてセックスワーカー達に意見が訊かれることも、声を聞かれることもなかったそうです。充分な調査もなかったそうです。

2016年の施行後、セックスワーカーのグループは、セックスワーカーの労働組合やさまざまな人道支援団体とともに、フランスの裁判所でこの法律に異議を唱えましたが、違憲であるという彼らの主張は2019年に却下されました。

しかし、2019年には261人のセックスワーカーが、この事件を欧州人権裁判所に付託し、正にSWASHも参加した国際エイズ会議開催中の2024年7月25日に判決が出て、同会議場内で判決を受けての記者会見が行われました。

今回も違憲であることは認められませんでしたが、買春処罰法がセックスワーカーに悪影響を及ぼしていることは認められました。

この部分は「大きな一歩であり、これからも私たちの闘いは続きます」とフランスのセックスワーカーがはっきりと宣言しました。

この記者会見についても別記事を今後掲載する予定です。

上:フランスの買春処罰法の影響の調査書の表紙。移住者セックスワーカーも多く参加したデモの様子

下:買春処罰法反対のデモの様子。


【参考資料】

フランスでの買春処罰法がセックスワーカーにもたらした影響については、フランスで実態を調査研究している、Hélène Le Bail (エレン・ルバイ)さんへのインタビュー

フランスのセックスワークってどうなってるの?パリ政治学院の研究者、エレン・ルバイさんによる解説 | 赤い傘 (akaikasa.net)

フランスのセックスワークに関する法律「買春処罰法」はどんな法律か? | 赤い傘 (akaikasa.net)

フランス買春処罰法がセックスワーカーの仕事と生活に及ぼした影響 | 赤い傘 (akaikasa.net)

エレンさんがフランスのセックスワーカー団体や研究者と行った調査報告(英語です。91ページ~94ページにわかりやすい質問と回答の表があります)

Web_EN_rapport-prostitution-finale-1.pdf (medecinsdumonde.org)



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代表:要友紀子

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