こども病院を美術館に ~長野県立こども病院~
2023/8/27 13:19
長野県の安曇野市にある、長野県立こども病院。
長野県における小児周産期医療の重要な役割を担っています。
田園風景にたたずむ赤い屋根が、とても印象的です。
長野県立こども病院外観
長野県立こども病院で、ピエゾグラフ展示が始まったのは、2006年9月のことでした。
「音楽や文学や美術は心の栄養…(中略)…体の具合がすぐれないときこそ心の栄養が大切」
「こども病院を美術館にしよう」…
当時の院長先生と、ちひろ美術館の思いが一致し、スタートしました。
外来待合室や、院内図書館の廊下、家族ラウンジ、プレールーム、新生児病棟など、院内の10か所以上に、いわさきちひろのピエゾグラフ作品を、あわせて常時45点ほど展示しています。
作品の掛け替えにうかがうと、「今度はどんな絵が見られますか?」「とてもかわいいですね!」「いつも癒されています」など、患者さんやスタッフの方が、声をかけてくださいます。
しろくま図書館廊下
作品は、あかちゃんや、お母さんとあかちゃんの絵、四季折々の風景のなかでいきいきと遊ぶ子どもたちの絵を中心に、展示をしています。ちひろの描く作品からは、風や波の音、花の香り、あかちゃんのふんわりとした肌やあたたかみなども伝わってくるようだ、とご感想をよくいただきます。ひととき絵を見ながら、想像を膨らませて楽しんでいただけたら、なによりもうれしいと思いながら、取り組んでいます。
家族ラウンジ
病院の方からは、新生児病棟のNICU(新生児集中治療管理室)にはあかちゃんやあかちゃんとお母さんの絵を、GCU(新生児回復室)には遊んでいる成長した子どもの絵を、とリクエストをいただいています。子どもたちの成長に合わせた展示が、ご家族の励みになるという、スタッフの方々の思いからです。ちひろの作品が、少しでもご家族のお役に立てればと願っています。
●病院でちひろのピエゾグラフ展をご覧になった方からのメッセージ
「思いもかけず早産となった息子は、こども病院にお世話になることとなりました。息子を抱っこしながら、うれしさや愛おしさと同時に出てくる不安な気持ちに、自分が追いつかない日々が続きました。そんななか、病院のあちらこちらでいわさきちひろの絵を目にし、描かれたあかちゃんや子どもたちの姿に、しばし夢中になることができました。
“ああ、うちの子もいつかこんな風に抱きついてくれたりするのかな”
不安な気持ちを一時忘れ、しばらくできていなかった深呼吸ができるような気がしました。」
(長野県立こども病院 利用者様より)
いわさきちひろ 母の日 1972年
(病院内いわさきちひろ複製画展担当:田邊)
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