岡山県学童保育連絡協議会では、2016年度から学童保育と作業療法士の連携事業を始め、行政との協働事業や民間助成団体による助成により、全国に広げることができました。また、予算がついたり、仕組みができたところもあります。
しかし、日本では子どもに関わる作業療法士の数は少なく、養成学校で学ぶ時間や機会は十分ではありません。そこで、全国に約200校ある作業療法士養成校に、学童保育と作業療法士の連携や学校作業療法に関する本を贈ります。2022年に続き、2回目の取り組みです。2022年は20校に送ることができました。
ストーリー
バースデードネーションとは、誕生日プレゼントの代わりに寄付を集めるキャンペーンのことです。
会長の糸山智栄の7月12日の誕生日に合わせて、第2回めの「作業療法士養成校に『学童保育連携』本を贈る」取り組みをしたいと思います。どうそよろしくお願いします。
本は人を繋ぎ、人生を変えるかもしれない
学生時代に、私たちの「学童保育連携」の本に出会ってくれた作業療法士の尾崎将充さんに当時の様子を紹介していただきます。尾崎さんは、京都在住。現在、保育園や学童保育を運営している社会福祉法人美樹和会で、働いておられます。
僕が「学童×作業療法」の本に出会ったのはちょうど大学3年生の春までさかのぼります。そもそも、精神科の作業療法に関心を持って養成校に進んだ私にとって当時、「発達」や「子ども」の領域には全く関心がありませんでした。それどころか、大学1年、2年と大学で作業療法学科のカリキュラムを学ぶほど、木工や編み物、陶芸などを治療に用いるという無理やり感と「作業が心と体を元気にする」という胡散臭さに一気に興味が萎えていきました。
面白みを感じない作業療法のカリキュラムに嫌気がさして、辞めようかなとまで思っていた私が、いまだに作業療法士を続けることになったきっかけは、2年生の最後(2月)に組まれていた見学実習です。私が実習地に振り分けられたのは当時最も関心の薄かった「発達」領域、重症心身障害児・者入所施設でした。最後になるのかもしれない履修科目、どうせならしっかり勉強してから臨もうと決め、大学の図書室にある発達関連の本を借りられる上限(20冊)まで借りて実習が始まるまでの2週間ガッツリ勉強しました。
結論、学びこんで臨んだ実習は大変学びが多く、実習先施設の指導者の懇切丁寧なご指導もあり、とても学びが多かったのを覚えています。特に大きかったのはお子さんのセラピー場面において、「遊び」という作業を通じて能力を見極め、「遊び」通じてその子の力を引き出す、まさに判然としなかった「作業」療法とは何なのか、初めて納得ができたのです。
そしてもう一つ、僕が「作業療法」をもっと勉強したいと思わせてくれたのは、施設に通院する子どもたちから感じた、純粋なる生きることへのパワーです。生きづらさを感じているかもしれない子どもたちが輝いて生きられる力になりたいという思いが、当時、消えそうになっていた作業療法に対する学びの意欲(炎)を一気に燃え上がらせてくれました。この実習を機に遊びという「作業」と子どもたちの「発達」についてもっと学びたいと思うようになりました。
実習前は季節も気分もまさしく「冬」でしたが、ちょうど春の訪れを感じるとともに、前向きな学びへの動機から、3年生の学費振り込みを決めたのを覚えています。3年生に進級してすぐ、タイミングよく近所の児童館の学童クラブのアルバイトの欠員が生じたとのことで大学に募集が届き迷うことなく飛びつきました。これを機に、僕と「学童」との繋がりが生まれたのです。
しかし、当時は大学3年生になったばかり。定型発達については大まかに勉強を済ませていた頃ですが、支援が必要なお子さんに対する具体的な援助法、対応法についてはあまり知識を持ち合わせていませんでした。日々、子どもたちの遊び、学習の見守りなどをする中で発達特性があるお子さんに対する対応にはどうしたら良いのかと悩む毎日でした。
そのようなとき、インターネットで「学童 作業療法士」といった検索をかけてみました。すると「学童期の作業療法入門〜学童保育と作業療法士のコラボレーション〜」と「学童保育に作業療法士がやってきた」というピンポイントな題名の本が2冊あったのです!
迷わずその場で購入しました。それからというもの、この2冊は当時、僕の学童バイト、発達に関する勉強のバイブル的な存在「きっかけの2冊」となりました。
一度は「作業療法」に対する学びの意欲が消えかけた自分も無事4年間のカリキュラムを完走することができました。蓋を開けてみたら、卒業証書と一緒に「学長賞」の賞状まで頂くことができました。聞けば、なんと作業療法学科の首席での卒業だったそうです。学びへの明確な動機が持てたことで主体的に「作業療法」を学べたあの実習は僕の大きな転機となりました。あの実習が無かったら、今頃、作業療法士をしていなかったかもしれませんし、この本にも、糸山さんにも出逢っていなかったでしょう。
国試にも合格し、作業療法臨床への期待を胸に総合病院に就職しました。病院での臨床も学びは多かったですが、「学童のバイト」という原体験を持つ僕にとっては、やはり子どもたちの生活が見えるところで支援をしたいという思いが強くなっていきました。
タイミングというのは重なるものですね。夜中にベッドに入ってスマホで検索していたら、保育園を運営する社会福祉法人美樹和(みぎわ)会が、新設の学童保育所を開設するという情報を見つけました。求人情報を開けると「学童指導員」のパート募集が出ていたのです。翌日電話で募集中であることを確認し、3日後に法人の理事長と初めて出会うことになります。この理事長のビジョンが自分と一致しているのが決め手となり転職を決めました。
病院という作業療法士の王道のレールを抜け出し、学童・保育園での新しい仕事が始まりました。そして、大学3年生の春に出逢った「きっかけの2冊」をこのとき再び手に取ることになりました。ときを同じくして、私のSNSアカウントに糸山さんからメッセージが届き、OTITなる自主勉強会へのお誘いがありました。とんとん拍子で岡山への訪問に繋がり、リアルでお会いすることになりました。大学3年生の時に出逢ったこの本でこちらは一方的に知っていた糸山さんに、実際にお会いできた時、感慨深い思いを感じました。
この本との出逢いに繋がった「実習」と「糸山さん」にも感謝の思いでいっぱいです。
ところで、作業療法を学んでいる学生の皆さん、勉強は楽しいですか?
僕はある一時点までは、「作業療法」の学びは楽しくありませんでした。
しかし、心から「学びたい」と思えるものに出逢えたことで僕の人生は大きく変わりました。学童でのバイト、大学での学びを支えてくれたのが「きっかけの2冊」でした。
次の誰かのきっかけになるかもしれないと思い、僕は自分の通っていた大学の図書館に「きっかけの2冊」をリクエストし、配架してもらいました。ときと場所を越えて、迷える学生さんが、心から学びたいと思えるものに出逢うことができたらとても嬉しく思います。
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