キリン研究者郡司芽久博士から応援メッセージをいただきました!
2023/3/13 14:56
このページを見てくださっている皆様へ
初めまして、東洋大学生命科学部の郡司芽久です。
彼らと同じ「大型哺乳類の研究者」として、このクラウドファンディングを心から応援しています!
(私の研究対象であるキリンは、クジラに比べたらずっとずっと小さいですが)
「クジラの研究をする」というと、きっと多くの方は、船にのって大海原に飛び出して、双眼鏡を覗きながら野生のクジラを探し求める…というようなものをイメージするのではないでしょうか。
確かに、そういった方法でクジラの研究をする方も多くいます。けれどもそれ以上に、世界各地に「クジラの遺体」を用いて研究をしている方々がいます。
なんらかの事情で死亡し、海岸へと流されてきてしまった遺体を活用し、「なぜ死亡してしまったのか?」「何歳くらいだったのか?」「生前は何を食べていたのか?」など、そのクジラがどんなふうに生き、どんなふうに死んでしまったかを考えていくのです。
その場で調査をするだけでなく、骨格や皮膚、筋肉、胃の中に残されていた「食べたものの残骸」などを研究史料として保管し、後世の人々へと引き継いでいくこともあります。こうして残された史料は、いずれ誰かの手に渡り、何かの発見へとつながっていくでしょう。
海で死亡したクジラの巨大な体は、そのまま海に沈めばさまざまな海洋生物の栄養源となりますが、研究者らの手に渡れば人類の知の栄養となるのです。
遺体をもちいた研究をする上で大切なことは、2つあります。
1つめは、なるべく多くの遺体を集めること。死因を調べるにも生前の活動を推察するにも、たくさんのデータの蓄積が必要です。たった1つのデータを手に入れたとしても、照らし合わせるデータベースがなければ、そのデータの意味を考えることはできません。
2つめは、遺体が発見されたら1分でも早く駆けつけることです。当たり前のことですが、遺体は、死亡して時間が経つほどに腐敗が進み、朽ちていってしまいます。内臓に刻まれた病歴や体に刻まれた外傷はわからなくなり、「なぜ死んでしまったのか?」を解明することが難しくなります。胃の中身が取り出せなければ、「何を食べていたのか?」を推測できなくなります。
つまり、「なるべく多くの遺体の元へなるべく早く駆けつける」ことがなにより大切なのです。そのためには、いつでも動かせる車の存在は不可欠です。
振り返ると、「動物の訃報が飛び込んできたら、盆も暮れもなく飛び出していく」という諸先輩型の姿は、学生時代の私の憧れでした。知りたいことや使命感に背中を押され、動き出す姿がとても輝いて見えたからです。
データを残し、蓄積していくことは、地道で長い道のりの活動です。一人の力では成し遂げることはできず、活動自体が長く続いていく必要があります。
このクラウドファンディングは、今クジラの調査を担っている方々へのサポートになるだけでなく、「調査車両に飛び乗ってクジラの元へ駆けつける人々」の姿を通じて次世代の研究者の育成にもつながっていくのではないかと思っています。
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